本記事は、土井英司氏の著書『人生で読んでおいた方がいいビジネス書75冊』(エムディエヌコーポレーション)の中から一部を抜粋・編集しています。
起業家のための学び直し会計
『稲盛和夫の実学』
(稲盛和夫/日本経済新聞出版)
京セラを創業した稲盛和夫氏の最高傑作は、間違いなくこの『稲盛和夫の実学』です。
この本では、稲盛和夫氏が考案した、会社がどんなに大きくなっても、細部まで把握できる会計システムについて書かれています。会社が大きくなっていくと、決まって管理が雑になり、経営者は現場の実態を把握できなくなるものですが、著者はその事態を防ぐため、当時の経理部長と対話して、いつでも経営の細部を把握する管理会計システムをつくり上げました。この本には、その稲盛流の会計方法がまとめられています。
著者は、経営者の目指すところとして、こう書いています。
- 経理が準備する決算書を見て、たとえば伸び悩む収益のうめき声や、やせた自己資本が泣いている声を聞きとれる経営者にならなければならないのである
具体的に、著者が気をつけていたことを挙げてみましょう。
- 法定耐用年数によらず、設備の物理的、経済的寿命から判断して「自主耐用年数」を定めて償却を行う
- 儲かったお金がどういう形でどこに存在するのか、ということをよく把握して経営する
- 「本当に財産としての価値を持つものなのか、そうでないのか」というのは、経営者が判断すべきもの
- いかにして経営そのものを「キャッシュベース」としていくのか
- 内部留保を厚くする
- モノまたはお金と伝票が、必ず一対一の対応を保たなければならない
- 中古品で我慢する
- 「固定費」の増加を警戒する
- ダブルチェックによって会社と人を守る
会社印鑑の取り扱い方法から金庫の管理、購入手続きなどについても事細かに書かれており、これならどれだけ大きくなっても、管理が行き届く。
会社を大きくしたい人は、早いうちに読んでおくといいでしょう。
不況に負けない、『カネ回りのよい経営』
『カネ回りのよい経営』
(井上和弘/日本経営合理化協会出版局)
経営はいつも順風満帆なわけではありません。
不況に陥ったとき、大事になるのは、キャッシュフロー経営。いわゆる「カネ回りのよい経営」です。
普段からキャッシュフロー経営を実践し、キャッシュリッチな企業にしておけば、不況はむしろチャンスに変わります。優秀な人材は余っているし、モノは安い。おまけに広告宣伝費まで下げられるからです。
では、どうすれば、健全なキャッシュフロー経営が実現できるのか。『カネ回りのよい経営』は、まさにその実践法を教えてくれる1冊です。
著者は、早稲田大学、イタリアフローレンス大学留学を経て、大手経営コンサルティング会社に入社、その後ICOコンサルティングを設立した井上和弘氏。
社長のための貸借対照表の読み方、むだな在庫をつくらないためのマーチャンダイジング、そして粗利を増やすための具体的方法まで、じつに詳しい内容が述べられており、あらゆるキャッシュフロー経営の本のなかで、トップクラスにわかりやすく、実践的な本です。
社長向けということで少々お値段は張りますが、理解できたときのリターンを考えれば安い投資だと思います。
この本のなかから、「カネ回りのよい経営」実践のための知恵を見ていきましょう。
- すべての元手は、利益を稼ぎ出すものにしか使わない。利益を稼いでいないと判断したら、売却損がでようと即座に始末して現金に換える
- 「乗用車なんか雨ざらしでいい。しかしカネを稼ぐ機械は専用の車庫を作って大事に扱え」(J土木のJ社長)
- 今の資産を有効に使って、もっと売上を獲得する
- 有効でない資産を削って換金し、借入金を返し総資産を小さくする
- 顧客から「いらない」と言われた死に筋商品を、いつまでも在庫しない
また、この本では、増やすことによって「使えるおカネを増やす」策も紹介されています。本当に追い込まれる前にやっておくと、資金繰りがラクになるはずです。
増やすことによって「使えるおカネを増やす」策
- 現金取引を増やす・前受金をもらう
- 利益を増やす
- 資本金を増資する
- 未払金、買掛金、支払手形を増やす
- 借入金を増やす
メールマガジン『ビジネスブックマラソン』編集長。
慶應義塾大学総合政策学部卒業。ゲーム会社、編集者・取材記者・ライターを経て、Amazon.co.jp立ち上げに参画。27歳で同社の社長賞にあたる「Company Award」を受賞。数々のベストセラーを仕掛け、「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。2004年、30歳で独立。国内160万部、世界1400万部を突破した『人生がときめく片づけの魔法』の近藤麻理恵氏をはじめ、多くの著者の出版プロデュースに携わる。
2004年7月に発行開始した日刊のメルマガ「ビジネスブックマラソン」は読者数5万3000人。著書に『「伝説の社員」になれ! 』(草思社文庫)など多数。これまでに読破したビジネス書は30,000冊を超え、日本随一のビジネス書の目利きとして知られる。(数字は2023年12月現在)※画像をクリックするとAmazonに飛びます。