この記事は2024年2月7日に「The Finance」で公開された「税制改正大綱とは?令和6年度の注目ポイントや項目について解説」を一部編集し、転載したものです。


本稿では、2023年12月22日閣議決定された「令和6年度税制改正大綱」の注目すべき項目と改定ポイントについて簡潔にわかりやすく解説します。

目次

  1. 税制改正大綱とは?
    1. (1)各省庁から上がる要望例
  2. 税制改正大綱に記載されている項目
    1. (1)自社に関連性のある分野を確認して、影響を調べる
  3. 令和6年度税制改正大綱における企業向けのポイント
    1. (1)賃上げ促進税制の強化
    2. (2)特定税額控除不適用規定の見直し
    3. (3)事業再編投資損失準備金制度の拡充
    4. (4)国内投資促進税制
    5. (5)交際費の損金不算入制度の除外措置拡大
    6. (6)外形標準課税制度の対象拡大
    7. (7)国際最低課税(グローバル・ミニマム課税)
    8. (8)事業承継税制の特例承継計画提出期限を2年延長
    9. (9)将来的な法人税率引き上げの示唆
  4. まとめ

税制改正大綱とは?

税制改正大綱とは?令和6年度の注目ポイントや項目について解説
(画像=Funtap/stock.adobe.com)

税制改正大綱とは、翌年度以降の税制改正についての具体的な内容をまとめた文書のことです。常に変化し続ける経済社会に対応するため、政権与党の税制調査委員会が中心となり、各省庁や業界団体からの要望を吸い上げ、12月中旬に取りまとめる流れになっています。2024年(令和6年度)の税制改正大綱は、2023年12月13日に決定し、政権与党である自民党公式サイトにて公表されています。
「令和6年度税制改正大綱」

政府は取りまとめられた税制改正大綱を基にして、12月下旬に「税制改正法案」として閣議決定を行うのが通例です。令和6年度税制改正大綱は、2023年12月22日閣議決定されました。

その後、閣議決定された税制改正大綱を基にして法案が作成され、翌年1月以降の通常国会に提出および審議に入ります。国会にて税制改正法案が可決されれば、翌年度の4月から新しい税制が施行される流れです。

(1)各省庁から上がる要望例

令和6年度に関しては、以下の省庁からさまざまな要望事項が上がっています。中でも経済産業省は66ページにわたる要望の概要を公表しています。
各省庁の要望を抜粋したものは、以下の表の通りです。

<令和6年度税制改正大綱における各省庁の要望例(抜粋)>

省庁名 項目 税目
内閣府 地方における企業拠点の強化を促進する税制措置の拡充及び延長 所得税、法人税
小さな拠点の形成に資する事業を行う株式会社に対する特例措置の延長 所得税
国家戦略特区における特別償却又は税額控除の特例措置の延長 法人税
警察庁 犯罪被害給付制度に係る税制上の所要の措置 所得税、国税徴収法
金融庁 NISA の利便性向上等 所得税
上場株式等の相続税に係る物納要件等の見直し 相続税
クロスボーダー投資の活性化に向けた租税条約等の手続きの見直し 所得税、法人税
こども家庭庁 こども・子育て支援加速化プランに基づく制度改正等に伴う税制上の所要の措置 所得税、法人税、消費税、登録免許税、国税徴収法、徴収規定等
児童福祉制度の見直しに伴う税制上の所要の措置 所得税、相続税、贈与税、消費税、登録免許税、関税
ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業の住宅支援資金貸付け等に係る非課税措置の延長 所得税
既存住宅の耐震・バリアフリー・省エネ・三世代同居・長期優良住宅化リフォームに係る特例措置の拡充及び延長 所得税
デジタル庁 国外転出者のマイナンバーカードの継続利用に伴う本人確認書類に係る所要の措置 所得税等
復興庁 特定復興産業集積区域において被災雇用者等を雇用した場合の税額控除の特例措置の延長 所得税、法人税
特定復興産業集積区域における開発研究用資産の特別償却等の特例措置の延長 所得税、法人税
特定復興産業集積区域における機械及び装置、建物及びその附属設備並びに構築物の特別償却等の特例措置の延長 所得税、法人税
総務省 国立研究開発法人情報通信研究機構が政府のみを出資者とする法人となることに伴う税制上の所要の措置 登録免許税、所得税、印紙税、消費税、法人税
過疎地域における事業用設備等に係る割増償却の延長 所得税、法人税
法務省 公益信託制度改革に伴う所要の措置 法人税、所得税、相続税、贈与税、登録免許税、印紙税、消費税
技能実習制度の見直しに伴う税制上の所要の措置 所得税、法人税、登録免許税、消費税、印紙税
外務省 外交団免税購入手続きのデジタル化 消費税
次期戦闘機の共同開発を効率的に推進するために日英伊で設立する予定の国際機関による物品の輸入に伴う税制上の所要の措置の新設 消費税
財務省 新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置の延長 印紙税
国家公務員共済組合制度の見直しに伴う税制上の所要の措置 所得税・消費税・酒税・国外送金等調書法・租税条約等実施特例法、国税徴収法
銀行等保有株式取得機構に係る課税の特例措置 法人税
文部科学省 国立大学法人等への個人寄附に係る税額控除の対象事業の拡大 所得税
学校法人への個人寄附に係る税額控除の要件の見直し 所得税
近現代建築等の継承に係る物納の特例の拡充 相続税
厚生労働省 社会医療法人が行う救急医療等確保事業の拡充に伴う税制上の所要の措置 所得税、法人税、消費税
改正感染症法の流行初期医療確保措置による収入の非課税措置の創設等 所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税、印紙税
国民の健康の観点からたばこの消費を抑制することを目的とした、たばこ税の税率引上げ たばこ税
農林水産省 スマート農業技術等を活用した生産性の高い食料供給体制の確立に向けた税制上の所要の措置 所得税・法人税、登録免許税
農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置 登録免許税
経済産業省 印紙税のあり方の検討 印紙税
特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の課税の特例の延長 法人税
大企業向け賃上げ促進税制の拡充及び延長 所得税、法人税
国土交通省 物流総合効率化法の認定計画に基づき取得した倉庫用建物等の事業用資産に係る所要の措置 所得税、法人税
独立行政法人奄美群島振興開発基金に係る非課税措置の延長及び奄美群島の振興開発に係る所要の措置 所得税、法人税、登録免許税、印紙税
小笠原諸島への帰島に伴う課税の特例措置の延長 所得税
環境省 税制全体のグリーン化の推進 環境関連税制等
車体課税のグリーン化 自動車重量税
防衛省 防衛力強化にかかる財源確保のための税制措置
次期戦闘機の共同開発を効率的に推進するために日英伊で設立する予定の国際機関による物品の輸入に伴う税制上の所要の措置の新設 消費税

税制改正大綱に記載されている項目

税制改正大綱では、税目ごとの情報が記載されています。税目は以下のようなものです。

<税目>

  • 個人所得税
  • 資産課税
  • 法人課税
  • 消費課税
  • 国際課税
  • 納税環境整備
  • 関税 

個人の生活に関連する情報を確認したいのであれば「個人所得税」を確認し、企業活動に関わる情報を確認したいのであれば「法人課税」を確認すると良いでしょう。
税制改正大綱で関連する項目を確認し、変更点などを把握しておくことで、税金の支払いなどの準備が行えます。

(1)自社に関連性のある分野を確認して、影響を調べる

税制改正大綱は100ページ以上あるため、ダイジェスト版の税制改正大綱の概要を確認して大枠などを掴むことが大切です。

たとえば「令和6年度税制改正大綱」は、企業の賃上げの流れを後押しするための「賃上げ税制」を、3年間延長した上で内容を見直しています。中小企業が従業員全体に対する給与等の支払いを、前年度よりも1.5%以上増加させた場合、増額分の15%を法人税の納税額から控除できる仕組みになっています。

なお、あくまでも大綱になるため、詳細な改正内容については、実際に改正され、施行されなければ見えない部分があるのも事実です。たとえば具体的な税率の計算方法や必要な書類などです。関連性のあるトピックをピックアップしておき、改正後に詳細を確認する流れが良いでしょう。

令和6年度税制改正大綱における企業向けのポイント

(1)賃上げ促進税制の強化

賃上げ促進税制の強化は、企業が従業員に対する給与を増やすことで、法人税を一定額差し引く仕組みのことです。大企業、中堅企業、中小企業の改正後の税制は以下の表の通りです。

<賃上げ促進税制の拡充及び延長>

企業規模 継続雇用者※4
給与等支給額
(前年度比)
税率
控除額
※6
教育
訓練費
※7
税額
控除率
両立支援
女性活躍
税額
控除率
最大
控除率
大企業
※1
+3% 10% +10% 5%
上乗せ
プラチナくるみん
or
プラチナえるぼし
5%
上乗せ
35%
+4% 15%
+5% 20%
+7% 25%
中堅企業
※2
継続雇用者
給与等支給額
(前年度比)
税率
控除額
教育
訓練費
税額
控除率
両立支援
女性活躍
税額
控除率
最大
控除率
+3% 10% +10% 5%
上乗せ
プラチナくるみん
or
えるぼし三段階目以上
5%
上乗せ
35%
+4% 25%
中小企業
※3
全雇用者※5
給与等支給額
(前年度比)
税率
控除額
教育
訓練費
税額
控除率
両立支援
女性活躍
税額
控除率
最大
控除率
+1.5% 15% +5% 10%
上乗せ
プラチナくるみん
or
えるぼし二段階目以上
5%
上乗せ
45%
+2.5% 30%
中小企業は、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間繰越しが可能※8

※脚注
※1)「資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上」又は「従業員数2,000人超」のいずれかに当てはまる企業は、マルチステークホルダー方針の公表及びその旨の届出を行うこと が適用の条件。それ以外の企業は不要。
※2)従業員数2,000人以下の企業(その法人及びその法人との間にその法人による支配関係がある法人の従業員数の合計が1万人を超えるものを除く。)が適用可能。ただし、資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の企業は、マルチステークホルダー方針の公表及びその旨の届出が必要。
※3)中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合等)又は従業員数1,000人以下の個人事業主が適用可能。
※4)継続雇用者とは、適用事業年度及び前事業年度の全月分の給与等の支給を受けた国内雇用者(雇用保険の一般被保険者に限る)。
※5)全雇用者とは、雇用保険の一般被保険者に限られない全ての国内雇用者。
※6)税額控除額の計算は、全雇用者の前事業年度から適用事業年度の給与等支給増加額に税額控除率を乗じて計算。ただし、控除上限額は法人税額等の20%。
※7)教育訓練費の上乗せ要件は、適用事業年度の教育訓練費の額が適用事業年度の全雇用者に対する給与等支給額の0.05%以上である場合に限り、適用可能。
※8)繰越税額控除をする事業年度において、全雇用者の給与等支給額が前年度より増加している場合に限り、適用可能。

引用:令和6年度(2024年度)経済産業関係 税制改正について P8 (経済産業省)

改正によって従来の賃上げ要件を維持しながら、控除率の見直しによって、賃上げを促進できる環境を整えることが狙いです。また、赤字決算の多い中小企業は、これまで賃上げ促進税制の恩恵を受けられなかった背景から、繰越控除制度を新設し、賃上げ実施年度に控除しきれなかった金額を5年間繰り越すことを可能としました。

(2)特定税額控除不適用規定の見直し

大企業に向けて特定税額控除不適用規定の見直しを実施します。以下の表が改正内容です。

<特定税額控除不適用規定改正内容>

要件 現行 改正
所得金額 対前年比で減少 変更なし
継続雇用者の給与等支給額 対前年増加率1%以上 変更なし
国内設備投資額 減価償却費の30%超 減価償却費の40%超
※ 要件が強化される法人について、「資本金が10億円以上かつ従業員数が1,000人以上の企業」のみでなく、「従業員数2,000人を超える企業」を追加。なお、前年度が赤字の場合には、従前より要件強化の対象外。
※ 要件が強化される法人についての要件(いずれかの要件に該当しないと特定税額控除規定の適用を受けることができない)

制限の対象となる特定税額控除の税制は以下の通りです。

  • 研究開発税制(総額型、オープンイノベーション型)
  • 地域未来促進税制
  • 5G投資促進税制
  • カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
  • デジタルトランスフォーメーション投資促進税制

(3)事業再編投資損失準備金制度の拡充

現行の事業再編投資損失準備金制度とは、一定の要件を満たした事業者がM&Aを行い、株式を取得した際に、取得対価の70%以下の金額を準備金として積立できる制度です。
新制度の概要は以下の通りです。

【事業再編投資損失準備金新制度概要】

  1. 「特別事業再編計画(仮)」の認定を受けた事業者が対象である
  2. 購入する株式の金額が1億円以上100億円以下であることが要件である
  3. 準備金として積立できる金額は、初回が株式取得価額の90%、二回目以降は100%とする
  4. 措置期間を最大10年間と大幅に長期化する

上記の改訂によって、今後の成長に向けて動いていきたい中堅・中小企業が、複数のM&Aによってグループ化を目指し、グループ一体となった成長を実現できる環境を整えたい狙いです。

(4)国内投資促進税制

戦略分野国内生産促進税制

日本経済の底上げを目指し、戦略物資を国内生産の促す税制である「戦略分野国内生産促進税制」では、以下の5つの分野への投資を促進するための減税制度です。

<対象分野>

  • 半導体
  • 電気自動車
  • グリーンスチール
  • グリーンケミカル
  • SAF

アメリカでのIRA法やCHIPS法、ヨーロッパにおけるグリーン・ディール産業計画などに対応し、戦略分野における投資を国内に向けさせることを目指します。
対象の法人が事業適応計画の認定を受け、産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備の購入が税制の対象です。
税額控除の期間は、事業適応計画の認定から10年間となっており、控除ができない場合でも3~4年間の繰越控除が可能です。

イノベーションボックス税制

イノベーションボックス税制は、無形資産である特許や著作権などに対して国内投資を促す制度のことです。国内の法人企業に対して特定特許検討の譲渡・貸付を行った際、対象となった事業で得られた課税所得の30%を控除する仕組みになっています。
国外への投資は制度の対象外となっており、国内投資のみが対象となっているのが特徴です。
制度の実施は2025年4月から7年間適用予定です。

スタートアップ関連税制等

スタートアップ関連税制とは、新規でビジネスを始める起業家に対して、政府が税制面から支援を行うものです。本章ではスタートアップ関連税制の中でも、ポイントとなる「ストックオプション税制」と「エンジェル税制」について解説していきます。

<ストックオプション税制>
ストックオプション税制では、新株予約権の行使など株式の取得に係っていた経済的利益に対する非課税枠が以下のように緩和されます。

<ストックオプション税制>
項目 現行 改正
設立から5年未満の株式会社 1,200万円 2,400万円
設立以後5年以上20年未満の会社で、
以下のいずれかに該当する会社・未上場の会社
・上場後5年未満の会社
1,200万円 3,600万円

適用対象となる新株予約権に係る契約の要件については、「新株予約権を与えられた者と当該新株予約権の行使に係る株式会社との間で締結される一定の要件を満たす当該行使により交付される株式(譲渡制限株式に限る)の管理等に関する契約に従って、当該株式会社により当該株式の管理等がされること」の要件を満たす場合、「新株予約権の行使により取得をする株式につき金融商品取引業者等の営業所等に保管の委託等がされること」の要件を満たすことが不要になります。

<エンジェル税制>
エンジェル税制とは、スタートアップ企業に対して投資を行った個人投資家に対して、税制上の優遇措置を講ずる制度のことです。
特定の中小企業が発行した株式を取得した際に、取得に要した金額の控除と発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等について、以下の措置が講じられます。

  1. 適用対象となる特定新規中小企業者に該当する株式会社等により発行される特定株式の取得に要した金額の範囲に、当該特定株式が当該株式会社等により発行された一定の新株予約権の行使により取得をしたものである場合における当該新株予約権の取得に要した金額が加えられます。
  2. 中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、適用対象に、特定新規中小企業者に該当する株式会社等により発行される特定株式を一定の信託を通じて取得した場合が加えられます。
  3. 本特例の適用を受けた控除対象特定株式に係る同一銘柄株式の取得価額の計算方法について、特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例の適用を受けた控除対象特定新規株式に係る同一銘柄株式の取得価額の計算方法と同様とする見直しが行われます。

(5)交際費の損金不算入制度の除外措置拡大

元来、損金不算入となっていた5,000円以下の飲食費の範囲を、1人あたり10,000円以下に引き上げるものです。なお、中小企業の定額控除限度額は年間800万円までとなっており、この全額を損金算入可能とする特例措置を3年間延長することとしています。

(6)外形標準課税制度の対象拡大

資本金1億円超の法人を対象とした外形標準課税制度は、資本金の額をもとにして課税を行うものです。同制度は2004年度から実施されましたが、コロナ禍をきっかけに大企業が税制対策として資本金1億円以下に減資を行い、課税から逃れる事態が多発しました。

そのため、資本金1億円超の現行基準を維持しながら。対象範囲を拡大するよう改訂されています。具体的には、以下の通りです。

<対象範囲>

  • 前事業年度に外形標準課税の対象であること
  • 当該事業年度に資本金が1億円以下であること
  • 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額が 10 億円を超えること

さらに100%子法人に対しても、以下のすべてに該当する法人が対象となります。

<対象範囲>

  • 資本金と資本剰余金の合計額が 50 億円を超える外形対象法人の100%子法人等
  • 当該事業年度に資本金が1億円以下であること
  • 当該事業年度に資本金と資本剰余金の合計額が 2億円を超えること

(7)国際最低課税(グローバル・ミニマム課税)

国際最低課税(グローバル・ミニマム課税)とは、年間総収入金額が7.5億ユーロ以上の多国籍企業が対象となる、一定の適用除外を除く所得について各国ごとに最低税率15%以上の課税を確保する仕組みのことです。
日本においては、「所得合算ルール」「軽課税所得ルール」「国内ミニマム課税」の3つのルールの導入が検討されており、令和5年度税制改正では「所得合算ルール」に係る法制化が行われています。

(8)事業承継税制の特例承継計画提出期限を2年延長

法人版事業承継税制は、2018年1月から10年間の特例措置として設けられたものです。非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度とも呼ばれ、特例承認計画を提出すると、事業承継時の贈与税および相続税の猶予割合が100%に引き上げられ、現金負担が実質ゼロになります。
現行で2024年3月までだった特例承継計画の提出期限を、2026年3月末までと2年間延長する変更がされています。

(9)将来的な法人税率引き上げの示唆

「令和6年度税制改正大綱」では、「今後、法人税率の引上げも視野に入れた検討が必要である。」と明記されており、将来的な法人税増税が明記されています。こうした中長期的な税率について明記しているのは、非常にめずらしく注目を集めています。
背景には2015年以降、法人実効税率を引き下げたものの、投資や賃上げには至らず、内部留保に回されてしまっている点が触れられています。さらに「税制改正大綱」の中では、「近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない。」と記載しており、法人税の減税には至らない考えを明確にしています。

まとめ

税制改正大綱は例年12月中旬に政権与党の税制調査委員会が、各省庁等の要望を取りまとめます。取りまとめられた税制改正大綱を基にして、政府が12月下旬に「税制改正法案」として閣議決定、翌年1月以降の通常国会に提出、可決されれば、4月以降に施行されます。
大綱で自社に関連するポイントを押さえておき、改正後に素早く対応ができるように準備しておくことが大切です。


[寄稿]TheFinance編集部
株式会社セミナーインフォ