この記事は2023年11月10日に「第一生命経済研究所」で公開された「2023年・冬のボーナス予測」を一部編集し、転載したものです。
目次
民間企業の2023年冬のボーナス支給額を前年比+2.1%と予想する(毎月勤労統計ベース)。冬のボーナスとしては3年連続の増加となるだろう。コロナ禍で支給水準が低かった20、21年からの反動で+3.2%の高い伸びとなっていた22年冬のボーナスからは増加率が鈍化するものの、23年冬もボーナス増が実現するだろう。
11月7日に公表された毎月勤労統計では、23年夏のボーナスは前年比+2.0%と、企業業績の改善を反映して2年連続の増加となった。ボーナスの交渉では、春闘時にその年の年間賞与を決定する夏冬型が採用されていることが多い。23年の春闘ではベースアップの大幅拡大が注目されたが、ボーナスについても、好調だった 22年度の企業業績を反映して増額で妥結する企業が多かった。夏のボーナス増に続き、冬についてもこの交渉結果が反映される形で増加が予想される。
毎期型の企業、あるいは組合が存在しない企業においては、より直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすいが、23年4-6月期の経常利益は前年比+11.6%と二桁の増加となっている(法人企業統計ベース)。原材料価格の高騰は下押し要因であるものの、価格転嫁が進んだこともあって企業業績は底堅く推移している。利益の水準も高く、従業員への還元余力は存在すると見て良いだろう。こうした業績の改善が、ボーナス増の後押しとなる。また、中小企業を中心に人手不足感が強まっていることも押し上げ材料だ。中小企業は大企業と比較すると相対的に業況は厳しいものの、人材確保の観点からボーナスの引き上げが必要となる面がある。大企業と比較すると伸びは控えめになるとみられるものの、中小企業においてもボーナスは増加する可能性が高い。
今冬のボーナスで増加が予想されることは好材料ではあるが、物価上昇が続いていることが引き続き個人消費の頭を押さえる。23年9月の消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は前年比+3.6%と非常に高い伸びが続いており、年末時点でも+3%台で推移している可能性がある。賃金の増加ペースが物価上昇に追い付かない状況には変わりがない。今冬のボーナス増加が個人消費の活性化に繋がる可能性は低いだろう。