ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「日本の貿易赤字は続く。日銀関連のイベント多い」

ドル円=154-159、ユーロ円=168-173、ユーロドル=1.06-1.11

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨最下位(最下位)、株価3位(3位)、1-4月は2.2兆円の貿易赤字、今週は日銀基調的インフレ指数に注目」
(介入効果がなくなるのが速かった5月)
 円は年間最弱は変わらず。4月29日からの推定8兆円の円買い介入でGWは円が最強であったが、現在は介入後(4月26日以降)で8位、5月月間では、ここまで9位とじり貧状態。日経平均は一時トルコと首位を争っていたが、利上げ観測と介入警戒で台湾にも抜かれ3位、年初来15.49%高、先週は0.36%安。

(イタリアG7で円は)
 今回のG7では主要議題はロシアの資産凍結と中国の過剰生産。為替はいつも通りの2017年5月の為替合意を確認。ただいつになく「明確なコミュニケーションを通して、負の波及効果を限定することに努めつつ、健全かつよくコミュニケーションの取られたマクロ経済・構造政策に対する我々のコミットメントを再確認する」との文言が拡大され浮き彫りにされた。今回の日本の介入が十分なコミュニケーションがなく実施されたと推測できる。それゆえにイエレン財務長官の異例の介入へのコメント=介入は稀であり十分なコミュニケーションをとった上で行われるべきとなったのだろう。

(G7の介入姿勢)
 プラザ合意は別として、日本を除くG7(通貨数は5)は目立った介入を行っていない。日本が頻繁に行っていた介入も2004年3月を機に稀なものとなった。円売り介入が途絶えてドル円は125円から75円へ下落。
その時のG7の為替の文言は「為替レートの柔軟性を欠く主要な国・経済地域にとって、その更なる柔軟性が、国際金融システムにおいて市場メカニズムに基づき円滑かつ広範な調整を進めるために望ましいことを強調」となっている。これは主に中国を名指ししたものだが、日本の介入姿勢にも影響を与えた。その後、介入は稀となった。また今回の日本の介入は1998年のアジア通貨危機、2011年の東日本大震災の時と違って日本に危機感がないところで行われているのが異例だ。

(日銀植田総裁)
 日銀の植田総裁は「長期金利は市場で形成されるのが基本となる」と述べた。金利上昇を容認か。本日は国際コンファランスで植田総裁の挨拶、明日は内田副総裁の講演がある。

(貿易赤字は続く)
 4月貿易統計では4620億円の赤字となった。1-4月では22年、23年の赤字の半分以下だが、まだ2.2兆円の赤字と小さいわけではない。これに新NISAなどの証券投資や大型買収案件もあり円売りを支えている。

(今週の注目指標)
 今週は東京消費者物価と日銀の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」に注目したい

*米ドル「通貨3位(2位)、株価(NYダウ)12位(13位)、5月は介入で弱いが、年間では2位」
(インフレ抑制が微妙な時期にドルを売られた米国の気持ちは)
 年間ではポンドと並んで同率2位。5月は日銀のドル売り介入という実弾を浴びているので、ここまで11位と弱い。米国もインフレ抑制が微妙な段階で、日銀介入で500億ドルもドルを売り込まれると、
優しいイエレン財務長官も一言言いたくなったのだろう。「介入は稀で、日常であってはいけない。コミュ―ケーションを十分とってもらいたい」と。
 ドル安でインフレが高まるとイエレン財務長官も米議会で責任追及される。ドル安の好きだったトランプ氏なら別だが、まさかコミュニケーションは「もしトラ」のトランプ氏ととっていたのでがあるまいか。 それはさておき常在有事、資源価格の高止まりではドルの需要が高まる。

(イエレン財務長官、金利予想を引き上げ)
 イエレン財務長官は、「われわれは金利予想を引き上げた」と述べた。 金利が長期的に高水準に留まる見通しにより、財政赤字の制御がより困難になると述べた。
またFRBからも利下げ時期後退を示唆する発言が多い。ボスティック・アトランタ連銀総裁は「景気過熱回避へより辛抱強くなくてはならない」 、ウォラーFRB理事は「利下げには良好なインフレがあと数カ月必要だ」、バーFRB副議長は「以前に考えられていたよりも長期間、引き締めを維持する必要がある。インフレ対策において、FRBはまだ仕事を終えていない。全体として米国経済は非常に強い」と述べている。

(最近の経済指標、先週は持ち直し)
弱い経済指標は1QのGDP(前期比年率で1.6%、前期は3.4%、予想は2.5%)に始まり、シカゴPMI、ISM製造業・非製造業、雇用統計、小売売上と続いたが、先週は新規失業保険申請件数、4月耐久財受注、5月総合購買担当者景気指数など改善が続いた。総崩れはしていない。今週はベージュブック、1Q・GDP改定値に注目したい。先週の米長期金利は小動きとなった。

*ユーロ「通貨5位(6位)、株価6位(7位)DAX)、今週も2%台の消費者物価となるか。ユーロドルは6週ぶり週足陰線」
(為替、金利は安定推移、インフレ低下、成長力は弱い)
 年間5位、月間6位と強くもなく弱くもない。当局から、為替についてのコメントも出ない。株価は独DAXが年初来11.59%高、長期金利(10年国債)は独が2.58%、フランスが3.07%、イタリアが3.89%と4%以下。インフレは2%台。低いのは成長率だが、成熟国なので仕方がないところ、米国のような爆発力はない。

(タカ派のナーゲル独連銀総裁も6月利下げ示唆)
 ナーゲル独連銀総裁は、物価が安定していれば、ECBが6月に利下げを開始する可能性が高まると述べた。「現状が維持されれば、6月に最初の金利調整に踏み切る可能性が高まる」と述べた。
賃金動向は横ばいとなり、インフレが緩和される可能性があると予想。ただ、6月の利下げはその後のECBの決定について何も確約するものではないと改めて述べた。

 一方、ラガルド総裁は、エネルギー危機とサプライチェーンのボトルネックによる影響が弱まり、ユーロ圏のインフレが制御されていることに「本当に自信を持っている」と述べた。
「来年および再来年の見通しでは、目標に達していないとしても、目標に非常に近づくと見込んでおり、制御段階に入ったと確信している」とした。ただ欧州はトランプ氏が米大統領に再選される可能性に備えなければならないとし、「関税であれ、他の方法や手段であれ、欧州に影響を及ぼす」とした。
 
(最近の指標はまずまず)
5月のユーロ圏総合PMIは52.2と(前月は50.6)1年ぶりの高水準となった。サービス部門が引き続き好調だったほか、製造業も回復の兆しを見せた。 また、ユーロ圏の1Qの妥結賃金の伸び率は4.69%と、昨年4Qの4.45%からやや上昇した。5月のユーロ圏消費者信頼感指数はマイナス14.3と、前月のマイナス14.7から0.4ポイント改善した。

(今週も2%台の消費者物価となるか)
 今週は5月消費者物価の発表がある。独は前年比で2.4%の予想、ユーロ圏は2.5%の予想で、それぞれ4月の2.2%を上回る。

*ポンド「通貨2位(4位)、株価9位(9位)、ポンドが2位へ上昇、米ドルと並ぶ、6月利下げ観測が後退」
(ポンドが2位へ上昇、米ドルと並ぶ)
 4月消費者物価が予想を上回り6月利下げ観測が後退したことでポンドドルが2風連続で上昇した。対円では一時200円台に乗せた。10年国債利回りは4.26%と前週終値の4.12%から上昇。ただ株価(FT)は金利上昇を受け先週は1.22%安。年初来では7.56%高。

(消費者物価が予想を上回り6月利下げ観測後退CPI)
 4月の消費者物価上昇率は前年比2.3%と、3月の3.2%から鈍化したが、予想の2.1%を上回った。コアは前年比3.9%と、3月の4.2%からは低下したが、予想の3.6%は上回った。英中銀の来月の利下げ観測が大きく後退した。市場が織り込む英中銀の6月の利下げ確率は14%と、前日の50%から大幅に低下。最初の0.25%利下げを完全に織り込んでいるのは11月で、もはや年内2回の利下げは予想されていない。
コアインフレとサービスインフレが予想よりかなり強かったことで、英中銀は、基調的なインフレ圧力が十分に冷え込んでいると自信を持つことが難しくなる。 強い賃金統計も踏まえ、サービスインフレの高止まりが今年後半もインフレ上振れリスクになる。

(4月の小売売上高は冴えず、5月のスポーツイベントに期待)
4月の小売売上高は前月比2.3%減と、予想を大幅に下回った。雨天で客足が減少した。
 予想は0.4%減。売上高は大半のセクターで減少。衣料品販売店、スポーツ用品店、ゲーム・玩具店、家具販売店は悪天候で来客数が減り、販売が低迷した。
 ただアナリストは今後数カ月の見通しについて楽観できる理由があると指摘。5月の天候回復やサッカーの欧州選手権、ウィンブルドン、五輪などスポーツの夏が消費を喚起するとの期待が小売業者の間に広がるからだ。

(7月4日に総選挙)
 英国のスナク首相は、7月4日に総選挙を実施すると発表した。首相が率いる与党・保守党は14年間政権を握ってきたが、次の選挙では野党・労働党に敗北するとの予想が大勢を占めている。
 しかし、インフレ率の低下や経済成長の回復など、一定の政策成果がみられることから、総選挙に踏み切る決断を下したとみられる。

*豪ドル「通貨7位(7位)、株価16位(15位)、豪ドル円は4か月連続上昇、対ドルでは弱いが円がなお弱い」
(5月はここまで4位と健闘)
 5月はここまで4位と健闘、年間では7位、日本のドル売り円買い介入でドルが沈み、資源価格の上昇で豪ドルが買われ、豪ドルはドルより強い5月。円買い介入でも
豪ドルは円より強く104円台に乗せた。豪株指数(全普通株指数)は年初来2.17%高、10年国債は4.25%から4.31%へ先週利回り上昇。

(RBA議事要旨)
金利据え置きを決めた5月理事会の議事要旨ではインフレリスクの上昇で利上げも検討していたことが分かった。 しかし、消費の伸びが弱く、インフレ率も目標に向けて引き続き緩やかになるとした中銀エコノミスト予測を考慮し、据え置きの方が適切と判断した。
 金利据え置きは政策の「過度な微調整」を避けるためとする一方、インフレ予測が楽観的過ぎると判明した場合に利上げが必要になる可能性があるとした。

(政府がインフレ抑制の目標達成時期繰り上げ)
 豪政府は最新の経済見通しで、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が今年末までにRBAが目標とする2-3%の範囲内まで鈍化するとの見通しを示した。
 昨年12月の見通しでは、中銀の目標に収まる時期を2025年半ばと見込んでいたが、達成時期の予想を繰り上げた。
 一方、RBAはCPIの上昇率が年内いっぱい目標を上回ると見込んでいる。

(成長見通し下方修正)
 政府の2024年度の国内総生産(GDP)成長率の予想は2.0%で、12月の見通しの2.25%から下方修正された。世界的に経済の見通しが不透明となっていることや、やや軟化しながらも高止まりするインフレ、高い金利水準などが景気の足を引っ張っていると説明した。

(今週の指標)
 今週は4月小売売上高、消費者物価、住宅建設許可、1Q民間設備投資の発表がある。4月消費者物価は前月の3.5%上昇から3.4%上昇に伸び幅縮小の予想

*NZドル「通貨9位(9位)、株価18位(19位)、今月最強。中銀は「利上げを真剣に検討」」
(5月は月間首位)
 5月はここまで最強通貨だ。年間では9位と強くはない。対ドルでは1月から4か月連続陰線であっただけに今月は覚醒した。NZ50株価指数は年初来0.11%高と冴えない。10年国債利回りは4.81%と先進国では高い。

(タカ派的な政策金利の据え置き)
 NZ中銀は、政策金利を5.5%に据え置いた。これまでの利上げが景気減速とインフレ抑制に寄与したが、インフレの鈍化ペースが想定より遅いとの懸念もあると改めて指摘した。
据え置きは7会合連続。声明は「インフレ率が合理的な期間内に目標に戻ることを確実にするため、制約的な金融政策を維持することが必要との認識で一致した」としている。

 オア中銀総裁は、今回の会合で利上げを「真剣に検討」したが、より長期間引き締め政策を維持すればインフレ率を目標に戻すのに十分と判断したと説明した。1Qの消費者物価は前年同期比4.0%上昇。先物市場では、8月までに利下げが行われる可能性が中銀の発表前の44%から26%に低下し、10月の利下げの可能性は76%から52%に低下した。
 中銀は生産能力に関する圧力の弱まりと労働市場の需給緩和で、国内インフレ率は低下しているものの、金利の影響をさほど受けない分野がインフレ鈍化の歯止めになっていると分析。「国内インフレの緩やかな低下はインフレ期待にリスクをもたらす」と指摘した。

(さらに副総裁がタカ派的コメントを)
 ホークスビー中銀副総裁は、インフレ圧力がなお続いているとして、2025年まで利下げを実施しない可能性が高いとの見方を示した。副総裁は、利下げは短期的な政策議論には含まれていないと指摘。その理由として、中銀が「金利を据え置くべきか引き下げるべきかという議論に移す」前に解決しなければならない要因があるからだと説明した。

(下振れリスクもある)
 中銀総裁補佐のシルク氏は、経済に下振れリスクもあると述べた。NZ経済は2023年下半期に景気後退に陥り、今年の年平均成長率はわずか0.4%にとどまると予測している。これは企業収益と失業に影響を及ぼし、インフレを冷やす可能性がある。シルク氏は、企業の収益性が圧迫され、企業が労働力の買いだめをやめれば、雇用市場はより急速に緩和する可能性があると述べた。

(最近の指標はマチマチ)
1Qの小売売上は前年比で2.4%減少、前期も4.1%減少であった。5月消費者信頼感指数は84.9で前月の82.1から上昇。今週は5月企業信頼感指数や4月建設許がある。

テクニカル分析

*ドル円「ボリバン2σ下限から上限近くへ」
日足、小刻みに上昇。4月29日の高値の160.219と5月3日の安値151.852半値の156.036を越える。5月16日-24日の上昇ラインがサポート、4月29日-5月24日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き、20日線下向き。

週足、4月29日週に年初来高値の160.219をつけて急落(151.852)も半値(156.04)越えて157.196へ上昇。5月13日週-20日週の上昇ラインがサポート。4月29日週-5月20日週の下降ラインが上値抵抗ボリバン上位。5週線、20週線上向き。
月足、4か月連続陽線。5月はここまで陰線だが下ヒゲが伸びてきた。1月-3月の上昇ラインがサポート。5か月線、20か月線上向き。
年足、3年連続陽線、今年もここまで陽線。ダブルトップ、また今年も止められていた151円後半を上抜いて一時が160.219まで上昇。22年-23年の上昇ラインがサポート。1985年-2023年の下降ラインを上抜く。

*ユーロドル「6週ぶり陰線。日足はボリバン2σ上限から反落」
日足、ボリバン2σ上限から反落。ボリバン中位、雲上限に近づく。5月9日-24日の上昇ラインがサポート。5月23日-24日の下降ラインが上値抵抗。5日線下向く、20日線上向き。
週足、6週ぶり陰線。雲の中に沈む。5月13日週-20日週の上昇ラインがサポート。5月13日週-20日週の下降ラインが上値抵抗。5週線上向く、20日線下向き。
月足、4月は2月-3月の上昇ラインを下抜ける。5月は上昇スタート。3月-4月の下降ラインを上抜く、10月-4月の上昇ラインがサポート。1月-3月の下降ラインが上値抵抗。5か月線下向く、20か月線上向き。
年足、2023年は陽線。ドルより強かった。22年はボリバン2σ下限到達し長い下ヒゲでサポ―ト。今年は陰線スタート。22年-23年の上昇ラインを下抜く。14年‐21年の下降ラインが上値抵抗。

*ユーロ円「再び170円のせ」
日足、4月29日の171.602から164.012へ下落も、ボリバン2σ下限に届かずボリバン上限へ。5月23日-24日の上昇ラインがサポート。4月29日-5月24日の下降ラインが上値抵抗。5日線、20日線上向き。
週足、ボリバン3σ上限から反落も中位を割らず再びボリバン2σ上限へ。5月13日週-20日週の上昇ラインがサポート。4月29日週-5月20日週の下降ラインが上値抵抗。5週線、20週線上向き。
月足、4か月連続陽線。今月は陰線スタートも下ヒゲ長く陽転。3月-4月の上昇ラインがサポート。2008年8月-2024年4月の下降ラインが上値抵抗。5か月線、20か月線上向き。
年足、4年連続陽線。24年もここまで陽線。22年-23年の上昇ラインがサポート。08年-23年の下降ラインを上抜く。

情報提供元:FX湘南投資グループ
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