レクサス・ブランドの新たなフラッグシップとして、2023年10月に日本でデビューしたのが「LM」です。そのインテリアは、どのようなものなのかをプロが徹底解説します。文・鈴木 ケンイチ/写真・PBKK
レクサス「LM」の内装
レクサス「LM」は、初代モデルが2020年に中国やアジア市場に向けて誕生しました。その狙いは、現地でのVIP向けショーファードリブンMPVの需要への対応でした。ショーファードリブンとは運転手付きの車両です。従来はフォーマルなイメージの強いセダンが主に使われていましたが、レクサスではあえてミニバンをベースに車両を仕立てたところが特徴となります。「LM」とは、「ラグジュアリームーバー」から命名されています。
そして、2023年に現行モデルが誕生し、日本にも導入されることになりました。新しいモデルは、後席乗員だけでなく、車に乗る、すべての乗員が自然体でくつろげる乗り味と居住空間を作り上げることが目的とされています。コンセプトは「素に戻れる移動空間」です。
つまり、「LM」にとって最も重視されているのが、室内空間そのものとなります。
ドライバーは、より気を使うことなく運転の楽しさを実感でき、乗員はノイズや不快な振動を気にすることなく、車内でゆったりとした時間を過ごせる、快適性と機能性が備えられています。
こだわりのディティール
インテリアのあちこちに使われる加飾には、日本古来より縁起が良いと使われてきた「矢羽根」をテーマにしたヘリンボーン柄杢を採用。また、古来より陶磁器や家屋の彩色に使われてきた「べんがら」素材を、ステアリングの加飾にも採用。木目の感触を残した漆黒の杢目に、木の導管を浮かびあがらせています。
後席のスライドドアのトリムには、精緻にグラデーション配置されたパンチング柄の表皮に、レイヤー構成の金属調加飾をプラス。モダンな世界観を生み出しています。
シートのパイピングには、金属調糸を透明樹脂でコーティング。シートのヘッドレストにはレクサスのロゴがエンボス加工されています。
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室内の足元やドアトリム、リヤのオーバーヘッドコンソールのサイド部分にはイルミネーションが配置されています。14色のテーマカラーと、好みに合わせて選べる50色、計64色ものイルミネーションカラーを用意。リラックスできる室内空間醸成に一役買います。
エアコンと静粛性へのこだわり
エアコン/シートポジション/サンシェード/照明などを統合制御するレクサス初の「リヤクライメイトコンシェルジュ」も「LM」ならではの機能です。4種類のプリセットモードをはじめ、好みに合わせた、快適な空間を生み出します。
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室内の静粛性にも強いこだわりを持って開発されています。完全に外部の音をシャットアウトするのではなく、適度な音の反射を残すことで、空間の広がりを感じさせるようになっています。
広がり感とパーソナル感を生み出すガラスルーフ
後席の天井部分には、左右独立したガラスルーフが設置されています。左右のシートとシンクロするように配置されているため、パーソナル感を生み出します。天井にも、上質かつソフトな質感のウルトラスウェードを採用することで、プレミアム感も演出します。
レクサス「LM」の運転席
「LM」のフロントシートは、インストルメントパネルとドアトリムがシームレスにつながるシンプルでおおらかなデザインが採用されています。また、コンソールの杢目調パネルは前後方向に伸びているのにたいして、水平基調のインパネが交差する構成となっており、前後左右に立体感を感じるレイアウトとなっています。インパネやドアパネルに使われているパッドは上質で、シンプルながら細部にもきめ細やかな仕立てとなります。これらのインテリアデザインから、非常でモダンで広がりある空間という印象が得られます。
運転席に関していえば、ドライビングポジションにもこだわっており、オルガン式アクセルペダルや、手首や腕などが自然で力の入れやすい角度になるシート/ステアリング/ペダルの位置関係などが採用されています。
フロントシートは、座面の面圧分布が最適化されており、旋回時のホールド性が高められています。また、身体を腰で支えるようなシート構造を採用し、骨盤を少し立てぎみになるようになっているのも特徴です。
レクサス「LM」の後部座席
後席シート乗員の快適性と機能性の高さこそ、「LM」の最大の魅力となります。
4人乗りには前席と後席を仕切るパーティションが存在します。ここには48インチの大型ワイドディスプレイが備えられており、横長1画面、左右2画面、センター1画面と表示を変えることが可能です。テレビなどのエンターテインメントだけでなく、WEB会議などにも活用することができます。オーディオには23スピーカーシステムのマークロビンソン・リファレンス・3D・サラウンド・サウンド・システムが採用されています。
パーティション上部は、前席と後席空間をつなぐ窓があり、そこには昇降/調光ガラスが備えられています。ガラスは遮音性に優れたアコースティックガラスを採用。ガラスを上げれば、前席と後席の音の伝達をカットします。また、ガラスはボタン一つで瞬時にスモークにすることも可能。後席空間のプライバシー性を高めることも可能となります。
パーティションの下部には冷蔵庫があり、750mlのボトルであれば3本、500mlのペットボトルであれば6本を収納して冷やすことができます。
また、パーティション上部中央には、乗員とその周辺の温度を検知する後席専用の温熱感IRマトリクスセンサーが設置され、エアコンとシートヒーターなどの温度を一括管理。車内を常に快適な温度に保ちます。
レクサス「LM」の荷室
4人乗りの荷室は9.5インチのゴルフバッグを4個横向きで重ね積みできる空間となっています。6人乗りでも3列目シートを使用したまま、9.5インチのゴルフバッグ4個を横向きで重ね積むことができます。
また、9.5インチのゴルフバッグを2個横向きで積み重ね、その上に9インチのゴルフバッグ4個を縦に積めば、計6個のゴルフバッグを搭載することも可能となります。
「LM」のシートアレンジ
6人乗車の場合、2列目シートと3列目シートを動かすことで、様々なシートアレンジが可能となります。3列目のシートはリクライニングが可能なだけでなく、跳ね上げ式で収納することもできます。また、収納したときにニュートラルポジションと、より後方になる最後方ポジションの2つの動かすことができます。最後方ポジションにすることで、3列目シートを跳ね上げた状態でも、2列目シートを深くリクライニングすることが可能となります。
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シートアレンジとしては、2列目と3列目を完全に倒した「リヤシートフルリクライニングモード」、前席と2列目を倒す「フロント・セカンドフルフラットモード」、2列目シートの足元を広げた「スーパーリラックスモード」、2列目の左右を前後にずらす「トライアングルモード」が選べます。
快適かつ機能性の高いシート
シートは大型ヘッドレストを備えたオットマン付きパワーシートを装備。レクサス最高級本革であるL-ANILINEを使い、上品な質感が楽しめます。シートヒーターとシートベンチレーション機能を備えるだけでなく、レクサスとして初となるアームレストとオットマンのシートヒーターも装備します。
シートバックとシートクッションにはエアブラダーを内蔵しており、マッサージ機能を楽しむことができます。アームレストには、マグネシウム製の天板を採用する格納式テーブルを装備。ノートパソコンの操作も可能とします。
シートに脱着可能なリヤマルチオペレーションパネルを採用。スマートフォンを操作するような感覚で、後席のエアコンやシート、オーディオ、照明などを操作できます。
レクサス「LM」のグレードごとの内装の違い
「LM」には2つのグレードが用意されています。ひとつが4人乗りの「LM500h EXECUTIVE」で、もうひとつが6人乗りの「LM500h version L」です。4人乗りは、運転席と後部座席の間にパーティションが設置されており、後席のプライバシー性が高められています。6人乗車では、通常のミニバンと同様に3列シートになっているのが特徴です。
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インテリアやシート素材などの、個々のつくりは2つのグレードの差はありませんが、個室としても使えるのが4人乗車であり、乗員それぞれのコミュニケーションを取りやすくなっているのが6人乗りとなります。
「LM」の3列目シート
6人乗りには3列目シートが用意されています。2列目シートと同じように、乗員を包み込むように支えるため、シートバックとクッションに厚みが持たせてあります。リクライニングも可能であり、大人がしっかりと座れる空間が用意されています。シート表皮は、2列目と同じくセミアニリン本革が採用されています。
すべての乗員がくつろげる空間を目指したというのが「LM」の特徴です。豪華なだけでなく、機能性が高いことで、ラグジュアリーでありながらもリラックスできる空間となっています。