副業や本業以外の収入がない一般的なサラリーマンとして生活をしていると、節税を意識する機会はあまりありません。源泉徴収と年末調整でサラリーマンの税務はほとんど完結してしまうからです。
しかし、サラリーマンでも本業以外の収入がある場合は確定申告が必要となります。例えば、マンションを区分所有したり、アパートのオーナーになったりすると、不動産所得が発生するため、給与所得と合算して確定申告をしなくてはいけません。
できるだけ節税をしたいと考えている方は多いと思いますが、不動産投資をすることでサラリーマンでも節税が可能となります。この記事では不動産投資とマンション投資の関係について、具体例を交えて紹介します。
目次
1.普通のサラリーマンでも節税が可能
通常、サラリーマンができる節税というと、年末調整での下記5つの項目が挙げられます。現在、「103万円の壁」「130万円の壁」などで注目を浴びており、今後の法改正も期待されていますが、2024年12月時点での内容を解説します。
1-1.配偶者控除と扶養控除
配偶者控除とは、納税者が専業主婦(主夫)などの配偶者を扶養している場合に適用される控除です。
控除額は、配偶者の年齢や収入状況によって以下のように異なります。
一方、扶養控除は、16歳以上の親族を扶養している場合に適用されます。
扶養控除でも、控除額は扶養親族の年齢、同居の有無等によって以下のように異なります。
1-2.障害者等の控除
障害者控除は、納税者自身、配偶者、または扶養親族が障害者に該当する場合に適用される控除です。障害の程度によって控除額は以下のように異なります。
なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用され、障害者手帳や診断書などの証明書類を提出することで控除を受けられます。
1-3.配偶者特別控除
配偶者特別控除は、配偶者の年間所得が48万円以上133万円以下の場合に適用される控除です。控除額は、配偶者の所得額に応じて以下のように段階的に変動します。
これにより、夫婦での所得税負担が軽減され、働き方の選択肢を広げることができます。
1-4.各種の保険料控除
各種の保険料を支払うことで、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除などを受けることができます。生命保険料控除は、平成24年1月1日を境に制度が変わっているので注意が必要です。
新規制度では以下の計算式に当てはめて計算した金額が控除となります。
地震保険料控除では、以下の計算式に当てはめて計算した金額が控除となります。
社会保険料控除は、給与から天引きされた健康保険や厚生年金の保険料が全額控除されるため、最も利用されている控除と言えます。社会保険料控除を申告することで、所得税・住民税の負担を軽減できます。
1-5.住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
住宅借入金等特別控除は、住宅ローン控除とも呼ばれ、住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合に適用される控除制度です。
控除額は、ローン残高の0.7%に相当し、最大で年間35万円が所得税から控除されます。
この控除は13年間適用されるため、長期的な節税効果となります。
また、所得税から控除しきれなかった場合は住民税からも一部控除されますが、条件として、住宅の床面積や入居期間、ローンの利用目的が適合している必要があり、詳細な条件確認が必要です。
2.区分マンション投資で節税できる税金の種類
これまで一般的な控除制度について解説してきましたが、区分マンション投資を行うことでどの程度の節税効果が期待できるのでしょうか?
区分マンション投資を行うと、次のような各種税金を節税することができます。
2-1.所得税と住民税
区分マンション投資で所得税を算出するには、不動産収入から経費を差し引いて不動産所得を計算します。収入よりも支出が多い場合は赤字となり、個人事業収入のみであれば所得税と住民税は非課税になります。
したがって、経費にできるものはとことん計上することで節税することができます。ただし、住民税の均等割りの部分は赤字でも支払いが生じる場合があります。
均等割りとは市民税3,000円、県民税1,500円の合計4,500円を基本とする、自治体費用の一部を均等に負担するために設けられた税金です。
また、サラリーマンが区分マンション投資を行い、不動産所得が赤字になった場合、給与所得と損益通算ができます。
損益通算とは、個人の所得税を計算する際に、1年間で生じた利益から他の所得の損失を差し引く制度です。この制度により、課税対象となる所得を減らすことができ、節税できます。
損益通算の有無で数十万円の所得税額の差が生じる場合もありますので、サラリーマンが副業で区分マンション投資を行う優位性がわかります。
一方の住民税は所得税と連動しています。税率は市区町村税が6%、都道府県税が4%で合計一律10%です。したがって、課税所得が減れば住民税も安くなります。
2-2.固定資産税と都市計画税
区分所有マンションは条件によっては、固定資産税と都市計画税が安くなります。それは、以下の2つの軽減措置を利用できるからです。
・小規模の住宅用地の特例
1つは「小規模の住宅用地の特例」です。賃貸住宅の場合、一戸あたり200㎡までの面積に対し、固定資産税が課税標準の6分の1に、都市計画税が3分の1にそれぞれ減額されます。
・新築の特例
もう1つは、「新築の特例」です。新築で購入した区分マンションが120㎡までの面積に対し、固定資産税額が5年間にわたって半分になります。ただし、都市計画税の軽減措置はありません。
2-3.相続税と贈与税
区分マンションに投資することで相続税を節税できます。それは、現金と不動産では相続税の評価額が大きく変わるからです。例えば、6,000万円を現金で相続すると評価額はあくまで6,000万円です。
しかし、不動産は売買価格が変動すること、現金と比較し流動性が低いことが考慮され、現金よりも評価額が低くなります。節税額は物件によって異なりますが、以下のように評価額が低くなります。
・路線価
路線価とは、主要道路に面した土地の1平方メートルあたりの価格を国税庁が毎年公表するもので、相続税や贈与税の計算に用いられます。路線価は、一般市場価格の目安の約8割程度に設定されるため、現金をそのまま相続するよりも、評価額が低く抑えられる傾向があり節税が可能になります。
・固定資産税評価額
固定資産税評価額は、市町村が課税の基準として設定するもので、建物の市場価格の約5割程度とされています。
・小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例では、居住用宅地の場合、200㎡までの面積部分の評価額を50%減額できます。しかし、相続人がその土地を一定期間保有することが条件になっているので注意が必要です。
・賃貸に出した場合の評価額減少
土地や建物が賃貸物件として貸し出されている場合、評価額がさらに低くなります。これは、賃貸物件は用途が制限されており、自由に使えないという理由からです。建物の場合、貸家の評価額は固定資産税評価額の7割程度に抑えられます。
3.区分マンション投資で節税できる5つの仕組み
ここでは、所得税にスポットを当て、節税できる仕組みを5つご紹介します。
3-1.給与所得との「損益通算」で所得を減らす
所得税は「総合課税制度」により、対象となる所得区分の各所得を合算して算定されます。給与所得と不動産所得は合算の対象で、所得税は合算後の金額に対して所定の税率を乗じることで算定されます。
つまり不動産所得の赤字分だけ合計の所得金額が減じるため、所得税を減らすことができます。
【モデルケース①】
給与所得1,000万円、所得控除400万円
(1)1,000万円-400万円=600万円が課税所得となる。
(2)課税所得600万円に対する所得税率は20%、控除額は42万7,500円なので、
600万円×20%-42万7,500円=77万2,500円が所得税額となる。
【モデルケース②】
給与所得1,000万円、所得控除400万円、不動産所得▲500万円の場合
(1)1,000万円-500万円=500万円が損益通算後の所得となる。
(2)500万円-400万円=100万円が課税所得となる。
(3)課税所得100万円に対する所得税率は5%、控除額はゼロなので、
100万円×5%=5万円が所得税額となる。
77万2,500円-5万円=72万2,500円が損益通算によって節税できます。
3-2.不動産所得から引ける「必要経費」を知る
前述の不動産所得(賃貸物件からの所得)は、以下のように計算します。
ざっくり説明すると、家賃や敷金として受け取った金額から必要経費を差し引いた金額が不動産所得です。「必要経費」とは、不動産収入を得るために直接的に必要となる費用です。
以下の表で必要経費とその他をまとめています。
3-3.経費に「減価償却費」を計上して赤字にする
もちろん賃貸業が黒字であれば、給与所得と合算された所得は大きくなり納税額も増えます。しかし、収入がそれ以上に伸びると、必要経費への計上分も増えるのでメリットは十分にあります。
また、節税という観点で不動産投資を考えてみることもポイントです。節税には、不動産所得が赤字であるほうが有利なのです。不動産所得の計算では収入から必要経費が控除されます。この必要経費としてあげられる、「減価償却費」と「借入金利子」が節税の大きなポイントになります。
例えば、ある新築マンションを5,000万円で購入したとします。この購入費用を、初年度のみの経費として全額計上することは現実的でしょうか。このマンションは、今後数十年にわたり資産として使用されます。その購入費用は、単年ではなく、長期間で経費化するのが適切な会計処理です。
この考え方のもと、一定期間にわたり経費化することを減価償却といい、各年の費用を減価償却費といいます。もちろん実際には初年度に費用を負担しています。
したがって、2年目以降は、「支出がないのに経費計上できる」ということになります。つまり、実際のキャッシュフローよりも多く経費が計上できるため、節税につながります。
<減価償却の計算例>
減価償却には、「定額法」と「定率法」の2つの方法があります(対象により適応できる方法は異なります)。
定額法は購入費用を耐用年数で割った費用を毎年一定の金額ずつ経費計上する方法です。一般的なマンションの造りは「鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造」ですが、該当する物件であれば、耐用年数は47年と規定されています。
例えば、建物部分が4,700万円の新築マンションを47年で償却する場合、毎年の経費計上金額は、4,700万円÷47=100万円となります。
一方の定率法は、毎年の未償却残高に耐用年数ごとに定められた償却率をかけて経費計上する金額を算出します。したがって、はじめの年が一番多く、以降年とともに減少していきます。定率法の特徴は、7年目から改定償却率に変わることです。7年目以降は定額になります。定額法・定率法ともに、最後は残存簿価1円となります。
1円にするのは、ゼロだと資産が存在しないことになるためです。これを「備忘価額」といい、完全に除去した資産と区別するために利用します。
3-4.建物にかかる「借入金利子」を経費に計上する
マンション購入のための借入金では、その利子が経費化できます。なお、注意して欲しいのは、建物に対する借り入れか、土地に対する借り入れかで、変わることです。
建物にかかる借入金利子は、不動産所得がマイナスでも、全額が経費計上できますが、土地にかかる借入金の利子は、不動産所得が赤字である場合、不動産所得が発生しない金額までが繰入限度になります。
区分所有のマンションでは、不動産売買契約書に土地と建物の価格を分離して記載できます。そこで自己資金で土地代をまかない、建物を借入金で購入したことにすれば、借入金の利子を100%経費化することが可能です。
3-5.「青色申告」を活用する
青色申告を活用することも節税につながります。個人事業主の確定申告には白色申告と青色申告がありますが、青色申告には以下のようなメリットがあります。
・3年間の赤字繰越しを活用できる
・「青色事業専従者給与」を必要経費にできる
・所得額から65万円を控除できる
青色申告には最大65万円の特別控除があります。ただし、65万円の控除を受けるには、「10室以上ある賃貸アパート・マンションか、5棟以上の賃貸戸建て住宅」という事業規模を満たしていなければなりません。もし、満たしていない場合は控除額が10万円になります。
・3年間の赤字繰越しを活用できる
青色申告では最長3年間赤字を繰り越すことができます。例えば、今年60万円の損失が出て、翌年100万円の利益が出た場合、今年度分で青色申告を利用していれば、100万円-60万円=40万円を翌年の所得から差し引くことができます。
逆に、今年が黒字で翌年が赤字の場合は、前年に納めた税金から翌年の赤字部分にかかる税金額が還付されます。青色申告の大きなメリットの1つです。
・「青色事業専従者給与」を必要経費にできる
青色申告では、親族に支払う「青色事業専従者給与」を必要経費として計上することができます。事業主と生計を1つにしている15歳以上の親族が対象になります。
控除できる金額は、配偶者が最高86万円、15歳以上の親族が50万円です。ただし、給与の額は仕事の内容や従事する程度に合わせ、妥当な金額を設定しなければなりません。
4.区分マンション経営の節税効果シミュレーション
では、これまで紹介した節税対策をふまえ、区分マンションを経営した場合の節税効果をシミュレーションしてみましょう。
・物件価格:3,500万円
・耐用年数:47年(建物割合90%)
・家賃:10万円 ・ローン利子分:月5,8万円
シミュレーションのモデルケースでは損益通算を利用すると5万8,000円の節税効果が生じます。
5.サラリーマンこそ区分マンション投資で節税を
ここまで、サラリーマンでも節税ができる区分マンション投資についてみてきました。
会社から給与所得だけを得て生活するサラリーマンは節税の方法に限りがありますが、マンションの区分所有など副業を行うことで節税の選択肢が広がります。サラリーマンと個人事業主の兼業で、種々の所得控除を活用し、節税につなげることができるのです。
いろいろな資産運用方法がありますが、損失が出ても節税につながるのはサラリーマンによる区分マンション投資ならではの大きなメリットです。不確実性の時代にリスクの少ない資産運用として、区分マンション投資を検討してみてはいかがでしょうか。
(提供:Dear Reicious Online)
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