東京・日本橋にある「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」の院長、横井彩です。今年も「皮膚科医・横井彩先生の彩肌通信」を通じて、皮膚科の専門医としてみなさんの日常に彩りを足す情報を発信していきたいと思います。
さて、今回のテーマは「サプリメント」についてです。みなさん、ビタミンや鉄分など体に必要な栄養素はできる限り食事から摂取した方がいいと頑張っていませんか?もしくは特別な栄養素を期待してスーパーフードなどを買い求めたりしていませんか?
もちろんバランスの良い食事を摂ることは大切なことですが、私は食事で無理に摂ろうとせず適宜サプリメントで補うのが現代人の最適解ではないかと考えています。常々思っているのですが、すべての栄養素をバランスよく摂ろうとすると、手間もお金もかかってしまいます。生鮮食品はこまめに買い物が必要だし、野菜や果物は最近価格も上がっています。バランスよく栄養を摂れるだけのさまざまな野菜を家に揃えることは、ちょっとした贅沢になりつつあります。
バランス良い食事を準備することができる時間や手間の余裕、新鮮な野菜やスーパーフードを購入し続ける金銭的余裕、これらの余裕が十分にある人は決して多くはありません。老若男女に関わらず、無理に食事で摂るのではなくサプリメントに頼ることは現代人の生活スタイルにおいて合理的な選択肢と言えるでしょう。
例えば、昼食時にコンビニでサンドウィッチやおにぎりを買う時に、すごく食べたいわけではないサラダをなんとなく一緒に買う。これ、少しもったいない気がしませんか?そのサラダを食べたいなら良いのです。でも栄養素を摂るためだけに本当は食べたいと思っていないサラダを食べる、これは本当に必要でしょうか?
食物繊維ならともかく、切って売られている野菜にそこまでのビタミンが残っているとは思えないのです。もしサラダでなく野菜ジュースならなおさらです。野菜ジュースは糖分多めです。野菜ジュースで余分な糖分まで摂るのなら、自分が好きな美味しい飲み物を飲んで、ビタミンをサプリメントで補った方が栄養価においても精神面においてもより良い気がするのです。
栄養素をきちんと摂ることはもちろん大切です。炭水化物、タンパク質、ミネラル、ビタミン、食物繊維、脂質、これらのバランスが偏っている食生活は長い目で見るとよくありません。しかし毎日のご飯を準備するのは自分自身。仕事や家庭に頑張っている自分をさらに追い込むような食事スタイルはお勧めできません。
私自身、元々料理は嫌いではありませんが、最近は時間のかかる料理はほぼしなくなりました。自身のクリニックを開院してからは、最大限に自分を甘やかしつつ自身の健康は損ねない、そんな食生活を意識しています。どうやって自分にとっての健康的な食事スタイルを確立していけば良いのでしょう。
まず自分の食の好み、普段ランチや食材を入手する場所の品揃えにより、栄養素のうち何が不足しがちかが決まってきます。例えばランチをコンビニのパンやおにぎりで済ませる人は、タンパク質が不足しがちです。鮭や肉系の具のおにぎりや卵サンドを選ぶ、ゆで卵やサラダチキンなどのタンパク質のおかずを足すのも良いです。それらがあまり好きでないなら、プロテインの飲み物で摂るのも一つの手段です。
そしてランチのビタミンはサプリメントに頼ってもいいのではないでしょうか。ビタミン豊富な新鮮な野菜なんてランチでは超贅沢品です。ラーメンが大好きな人なら、ラーメンを食べて帰ったらサプリメントでビタミンや食物繊維を補いましょう。サラダや野菜ジュースを足すより、その分チャーシューを追加した方が多分ハッピーです。
私は、午前中と夕食後の2回、サプリメントを摂ることが多いです。私の朝食はここ10年、バナナと豆乳とコーヒーが定番です。朝はギリギリまで寝ていたい、胃が起きてなくて量が入らない、しかし朝食を抜くと仕事中に血糖値が下がってフラフラする。そこでちゃんと血糖を上げてくれて手軽なバナナです。スポーツ選手も体を動かす前に食べると聞くし、仕事前に適切だと思ったのです。バナナを朝に食べるようにしてから午前中のフラフラが嘘のように無くなってずっと続けています。
豆乳は、食欲がなくても入りやすい液体でタンパク質が摂れるありがたい食品です。私は豆乳派ですが、好きな人はもちろん牛乳でも。コーヒーを飲むのには健康的な理由はなく、100%“好き”だけです。そしてこの朝食だとビタミンが不足しがちなので、サプリメントで補います。ちなみに食に関する私の優先順位は、好き>>>栄養です。
好きかどうかはすごく大切なことだと思っています。バナナも豆乳も、朝は量が食べられない、血糖が下がるとフラフラする、など自身の身体の特徴を踏まえた上での選択ですが、好きだからこそ続けられています。いくら栄養面で優れていても、美味しいと思わないものは続きませんよね。これが私は健康食品よりもサプリメントを推す理由でもあります。健康食品は味が好みでなければ続けるのは辛いですが、サプリメントは飲むだけです。
自分がどの栄養素が足りていないがわからなければ、まずはマルチビタミンやマルチミネラルを。ビタミンやミネラルがバランスよく入っているのと、これらのサプリメントはどこででも、比較的安価に手に入りやすいサプリメントです。美容目線でさらに加えるなら、抗酸化を意識してみましょう。ビタミンCやE、A、そのほか様々な成分の抗酸化サプリメントがあります。私は何十年も前からビタミンCは続けて摂っています。あまり新しい成分のサプリメントを次々と試すようなことはしません。ある程度安全性がわかっていて低価格、そんな続けやすい成分だけで十分と考えています。
最後にもう一つ、女性にとって嬉しい成分「エクオール」をご紹介します。サプリメントの中では少し薬に近いような位置付けの成分で、産婦人科ではほとんど扱っているのではないでしょうか。エクオールは女性ホルモンに似た働きがあり、肌が滑らかになる効果などが証明された研究もあるようです。更年期に差し掛かる、いわゆる“ゆらぎ世代”に摂取を始める人が多いです。
まずは自分が不足しがちな栄養と自分に無理の無い飲み方を模索してみてください。ただし一つ注意点があります。自分にはどの栄養素が必要だろう?とサプリメントや健康食品を調べ始めると、どんどん沼にハマります。サプリメントはあくまでも栄養補助食品。摂れば摂るほど健康になったり美肌になったりするものではありません。アレもコレも…と次々足して、ザラザラと大量のサプリメントを飲み込んでいては本末転倒です。簡単に入手できて安全性の高いビタミンやミネラルのサプリからまずは始めましょう。
サプリメントとも上手に付き合うことで、食事を楽しみつつ、日常生活に無理なく健康を維持していただきたいと思います。
さて、今年で2年目を迎えた連載「皮膚科医・横井彩先生の彩肌通信」は、イベントや商品展開といったさまざまなプロジェクトを始動していきますのでお楽しみに。2025年も「無理せずキレイを楽しむ」ヒントを発信していきたいと思います。
*「セブツー」では、横井彩先生へのお肌の悩みや相談を受け付けています。お気軽にご連絡ください。
■横井彩 プロフィール
「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」院長。皮膚科専門医、医学博士。2003年に秋田大学医学部を卒業した後、同大学皮膚科で研鑽。2017年藤田医科大学アレルギー科にて講師。2021年に「日本橋いろどり皮ふ科クリニック」を開院。日本美容皮膚科学会や日本香粧品学会などに所属。