前田建設工業を傘下に置くインフロニア・ホールディングスが三井住友建設を買収することになった。インフロニアは2022年に東洋建設の買収に着手したものの、対抗買収者が出現したことで、TOB(株式公開買い付け)が不成立に終わった苦い経験を持っており、今回、捲土重来を期す形だ。

売上高1.3兆円、準大手筆頭に

インフロニアは5月13日、三井住友建設にTOBを行い、完全子会社化すると発表した。1株600円で7月から買い付けを始める。取得金額は約940億円。三井住友建設はTOBに賛同を表明した。同社の3割近い株式を保有する旧村上ファンド系企業などもTOB応募で合意している。

インフロニアと三井住友建設の売上高は単純合計で約1兆3000億円(2025年3月期)。スーパーゼネコンと呼ばれる建設大手5社(鹿島、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店)に次ぐ準大手の筆頭に躍り出る。

共同持ち株会社のインフロニアは2021年、前田建設工業をはじめ、前田道路、前田製作所のグループ上場3社が経営統合して発足した。これに伴い、近年、際立つのがM&Aへの取り組みだ。

M&A Online
(画像=前田建設工業のシンボルマーク、「M&A Online」より引用)

旗印は「総合インフラサービス企業」

2024年1月、風力発電大手の日本風力開発(東京都千代田区)を米投資ファンドのベインキャピタルから約2031億円で買収した。インフロニアとして過去最大のM&Aで、今回の三井住友建設の買収はこれに次ぐ。

インフロニアは「総合インフラサービス企業」を掲げる。施設の建設にとどまらず、資金面を含めたプロジェクトの上流から下流までインフラ全般の運営推進を成長戦略の柱に位置付け、そのターゲットの一つが再生可能エネルギー分野だった。

これより先、インフロニアが発足して最初に手がけたのが2022年、海上土木大手の東洋建設の買収。インフロニアは東洋建設に20%超を出資し、持ち分法適用関連会社としていたが、完全子会社化を目的にTOBに乗り出した。

想定外、東洋建設買収の失敗

ところが、TOB開始後、任天堂創業家の資産運用会社がインフロニアを上回る条件での買収を東洋建設に提案。これにより、東洋建設株価が買付価格を大きく上回ったことから、TOBは想定外の不成立となった。しかも、任天堂創業家によるTOBも東洋建設の同意が得られず、結局行われなかった。

インフロニアによる東洋建設買収は港湾、海上分野の技術・ノウハウを取り込み、港湾インフラのコンセッション(民間事業者による公共施設運営)事業や、洋上風力発電などの再生可能エネルギー事業の展開に弾みをつける狙いがあった。「総合インフラサービス企業」戦略に沿ったM&Aを試みたが、失敗に終わったのだった。

三井住友建設は大型マンションや橋梁、アジアでのODA(政府開発援助)工事などに強みを持つ。インフロニアは同社を傘下に収め、人手不足、資材高騰といった建設業界の厳しい環境に対応するとともに、防災・減災の強化に向けたインフラの老朽化対策や維持管理需要への取り組みを加速する。