本記事は、大岩俊之氏の著書『とにかく「伝わる」伝え方図鑑』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

真ん中を選んでもらうために上と下で挟み込む
【具体例】
ここに3つの案がありますが、どれが一番希望に近いですか?
- 松竹梅の法則
- 人は3つの選択肢から真ん中のものを選ぶ傾向が高いという心理法則のこと。
松竹梅の法則で一番イメージがつきやすいのが、飲食店のメニューでしょう。
例えば、イタリアンレストランやフレンチレストランで、安い、中間、高い、という3つのメニューがあったとします。すると、真ん中のメニューを選ぶことが多いのではないでしょうか。
また、スターバックスやドトールなどのカフェのドリンクは、3〜4種類のサイズが用意されています。2種類の商品もありますが、多くは3種類です。
私は、「時間がないから小さくていい」「ゆっくり飲みたいから大きい方がいい」といった希望がないときは、つい、真ん中のサイズを選んでしまいます。真ん中のサイズが、なぜか安心感があるのです。少なくもないし多くもないから失敗しにくい、という感じでしょうか。
2つしかメニューがないと、安い方が選ばれてしまい、高い方が売れなくなります。ところが、そこにさらに高い商品やサービスを加えると、なぜか、今まで選ばれなかった高いものが選ばれるようになります。
これは、個人向けの商品やサービスだけではなく、法人向けにも使えます。見積書や企画書は必ず3つ作るのです。そうすると、断られることが極端に少なくなります。
メニューが2つしかない場合、ぜひ、3つ目の商品やサービスを作ってください。
単位を変えれば違った印象に
【具体例】
グレードAとBとでは、装備が違い、快適度がかなり変わります。
30万円の差ですが、5年で買い替える場合、1か月あたりたった5,000円の差ですよ。
- シャルパンティエ効果
- イメージによって重さの判断が変わってしまう心理効果のこと。
1kgの鉄アレイと、1kgの綿あめは、どちらが重く感じるでしょうか?
どちらも1kgと重さは同じなのですが、綿あめより鉄アレイの方が重く感じるのではないでしょうか。これが、シャルパンティエ効果です。
例えば、「レモン100個分のビタミンCを配合」と書いてあると、いかにもビタミンCがたくさん入っているような気がしませんか。レモン1個分に含まれるビタミンCは約20㎎程度だそうです。これが100個分なので、「2,000mgのビタミンCを配合」と書くこともできます。これならまだ多く感じるかもしれません。しかし、2,000mgは単位を変えると2gですので、「2gのビタミンCを配合」と書くとどうでしょう。すごく少なく感じませんか。買う人も減ってしまいそうです。実際は、レモン100個分、2,000mgが多いのか少ないのかは分かりません。
同様に、年単位の価格を月単位、日単位と分割することで、安く見せる方法があります。仮に、年会費が6万円のトレーニングジムがあったとします。年会費だけを聞くと高く感じますよね。でも、実際の月会費は5,000円です。これなら、普通か安いくらいです。これを週単位にすると、1,250円。あまりピンと来ない数字ですが、日単位にすると、165円程度(6万円を365日で割る)です。毎日通うと仮定すると、「1回あたりたった165円です!」と表現できるのです。
焦点の当て方を変えれば違った印象に
【具体例】
48時間以内ならキャンセル可能です(安心材料を与える)。
- フレーミング効果
- 同じ意味を持つ情報であっても、焦点の当て方によって、人々の判断や意思決定が変化する心理効果のこと。
サプリメントの購入を考えているとします。どちらのキャッチコピーの方が買いたくなりますか?
【A】購入者の90%が効果を実感しています!
【B】購入者の10%は効果を実感できません!
おそらく、多くの人が【A】を選ぶはずです。
実際には、購入者の90%の人が効果を実感していて、購入者の10%の人が効果を実感できていないという事実は変わりません。しかし、このようなケースでは、わざわざ悪い方を強調することはないでしょう。
法人向けより、個人向けの商品やサービスで大きく効果を発揮するスキルです。
次に、こちらのケースではどうでしょうか?
【C】90日間お試し無料!
【D】3か月間お試し無料!
おそらく、多くの人がCを選ぶはずです。
買う側の心理として、少しでも数字が大きい方が、期間が長く感じられます。
シャルパンティエ効果と似ている部分がありますが、プラスの面、マイナスの面などの焦点を変えることで、相手への伝わりやすさを変えることができるのです。
図があるとイメージがわきやすい
【具体例】
詳細は、こちらの資料をご覧ください。
- 資料活用法
- 文字だけではなく、資料や図を活用して分かりやすくすること。
文字や文章だけで相手に伝えようとするのは、非常に難しいことです。
近年は、新聞を読まない、本を読まない、といった活字離れが進んでいます。普段から文章を読む習慣のない人たちは、読解力がありません。同時に、文章を書く力がない人が増えたため、伝わる文章が書けなくなってきています。
ビジネス書に関しても、以前は黒1色が当たり前でしたが、最近では2色刷りやフルカラーの本が増えています。文字だけがぎっしり書かれていると読みにくいので、文字は少なめで、図やイラストが多用されています。アカデミック系の論文や専門書は文字がぎっしり詰まっていますが、これらを読む人は限られています。
このように、文字や文章だけで勝負する時代は終わりました。営業パーソンや接客スタッフが口頭だけで説明する時代も終わりました。カタログや資料を見せながら説明するのが当たり前です。タブレットが進化したおかげで、タブレットを活用して、資料や動画を見せることも可能になりました。
上司を説得したい場合は、文章で書いた稟議書に図やイラストを付け加えると、相手も理解しやすいでしょう。プレゼンを行う場合は、図やグラフを多用したパワーポイントを作成しましょう。
文字や文章だけで伝えようとしないことです。

名古屋大学大学院教育発達科学研究科卒。大学で認知科学、認知心理学、大学院では、教育学、学習心理学を学ぶ。現在は、消費者心理学を研究中。
電子部品メーカー、半導体商社、パソコンメーカーなどで、法人営業を経験。売り込んだことがないのに、どの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
未経験でセミナー講師として独立してみたものの、講師としてのレベルが低く、参加者や主催企業からの厳しいフィードバックに耐えきれなくなり、講師の道をあきらめかける。産業カウンセリング、キャリアカウンセリング、NLP、コーチングなどを学び、人の心理を考えた「伝え方」を研究、実践したことで、営業、コミュニケーション、リーダーシップ、プレゼンなどの「呼ばれる講師」として、年間100日以上登壇する講師となることができた。これまで、13,000人以上に指導してきた実績を持つ。伝え方プレゼンスクールを主催し、経営者、エンジニア、セミナー講師などに指導。コンサル会社、新聞社などの講師にも、講師力アップ養成講座を行っている。
著書に、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『1年目からできる! セミナー講師超入門』(実務教育出版)、『売れる言いかえ大全』(フォレスト出版)など合計14冊がある。
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