本記事は、大岩俊之氏の著書『とにかく「伝わる」伝え方図鑑』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

全体像を示してから説明に入る
【具体例】
今から、大切なことを3つ伝えます。
1つ目は、積極性です。
2つ目は、向上心です。
3つ目は、自立心です。
- ホールパート法
- 最初に話す内容の全体像を伝えた上で、各部分を説明する伝え方。
全体を意味する「ホール(whole)」と、部分を意味する「パート(part)」を組み合わせた伝え方をホールパート法と呼んでいます。
テレビなどでコメンテーターが「ここで重要なことは2つあって、1つ目は、○○、2つ目は、○○です」と話しているのを聞いたことがあるのではないでしょうか。
これは、教える人、営業パーソン、コメンテーター、就活生など、さまざまな人が効果的に使うことができるスキルです。
話がまとまっていない人というのは、話の要点が2個なのか、3個なのか、5個なのか、どこまで続くのかのゴールが分からず、「いつ終わるのだろう……」という不安感を相手に与えてしまっています。
このようなことを防ぐために、話の最初に「ポイントは2つあります」「ポイントは3つあります」と伝えることで、相手の頭の中に「2つだな」「2つだな」というイメージを作ることが可能になります。
この伝え方は、ビジネスや討論の場などでは有効ですが、プライベートで使うのはやめておいた方がいいかもしれません。どこかよそよそしい感じを与えてしまいます。プライベートというのは、しゃべりたいことをお互いが自由に話す場なので、かしこまった伝え方はあまり必要ないかもしれませんね。
あいまいな言葉と専門用語は通じない
【具体例】
この書類は、1週間後の6月8日、15時までに提出します。
- ロジカルコミュニケーション
- 自分の考えを論理的にまとめ、分かりやすく話す力のこと。
プレゼンテーションに限らず、人に説明をする際に問題となるのは、「あいまいな言葉」が多いパターンと「専門用語」が多いパターンの2つです。最悪なのは、この2つが組み合わさっている場合です。
あいまいな言葉とは、「だいたい」「くらい」「たぶん」「なるべく」「早めに」というような言葉です。「1週間」「3日間」という言葉も、一見、正しいように思えますが、土日を入れるのか入れないのか、今日が起点なのか明日が起点なのか、何時までなのかという部分がハッキリしていません。説明であれば言い直すことができますが、プレゼンであれば、すっきりしない内容になってしまいます。
次に専門用語です。エンジニアなどの技術職や難関資格を持つ士業などが、よく使いがちです。専門家ではなくても、IT業界、広告マーケティング業界、コンサルタントなども要注意です。業界が違うだけで、専門用語は大きく変わります。
例えば、「ディスコン」「コストダウン」「スペックイン」「アロケーション」というのは、私が働いていた電子部品業界の専門用語です。おそらく、同業者でない限り分からないでしょう。
事例や根拠は2つ以上が腑に落ちる
【具体例】
この○○という本がオススメです。
なぜなら、マーケティングと集客について学べるからです。
セミナーを開催したときの宣伝の仕方と、人を集める方法が書かれています。
- ロジカルシンキング
- 物事を結論と根拠に分け、論理的に物事を理解する思考法のこと。
説明が上手くなりたい人は、事例や根拠は2つ以上、話の中に用意するようにしましょう。そう言われても、多くの人はピンと来ないかもしれません。
例えば、自動車を売る場合、ガソリン車よりハイブリッド車の方がオススメだとします。
すると多くの場合、このような会話になります。
「ガソリン車よりハイブリッド車の方がオススメです」。
「なぜなら、ガソリン車より燃費がいいからです」。
これは、理由を述べただけの会話です。ここに、事例や根拠を入れます。
「ガソリン車よりハイブリッド車の方がオススメです」。
「なぜなら、ガソリン車より燃費がいいからです」。
「通勤で使う場合、ガソリンを入れる回数が、月3回から月1回に減りますよ」。
このように、1つでも事例を入れた方が、イメージがしやすいはずです。
「ガソリン車よりハイブリッド車の方がオススメです」。
「なぜなら、ガソリン車より燃費がいいからです」。
「通勤で使う場合、ガソリンを入れる回数が、月3回から月1回に減りますよ」。
「低速走行ではモーターを使うため、音が静かですよ」。
このように、事例を2つ入れると、会話に反応してもらえる確率が上がります。
人は最初と最後しか覚えていない
【具体例】
(最初) 合宿の件、○○してください。
(途中) 動画を流します。ここに○○する方法が説明されています。
(最後) 合宿の件、○○してください。
- 初頭効果と親近効果
- 最初に提示された情報と、最後に提示された情報に強く影響を受ける効果のこと。
1つのメールに3つも4つも用件を書いて送ったら、最初と最後しか回答がなかった、という苦い経験はないでしょうか。会議の場で一生懸命プレゼンをしたのに、最初に話した内容しか伝わっていなかった、という経験もあるかもしれません。
このようなことが起こるのは、初頭効果と親近効果の影響があるからです。
人の集中力は、そんなに長くは続きません。学校の授業が1時間以内で区切られていることも、理にかなっています。大学の授業は1時間30分ですので、長いと感じる人もいるようです。企業研修でも、講師が1時間から1時間30分で休憩を入れているのは、とても大切なことなのです。
では、どうすればいいのでしょうか?
重要な結論は、最初に話した方が相手に伝わりやすいでしょう。
もし、途中に重要な話をする場合は、リズムを変えたり、インパクトを与えたりする必要があります。例えば、映像を流す、近くの人と話し合う、などです。
最後に重要なことをもう一度繰り返すことも、効果があります。
そして、1つのメールには1メッセージ、1つの会話には1メッセージ、1つのスライドには1メッセージなど、一度に多くのことを伝えようとしないことです。
何事も、最初と最後が重要だということです。

名古屋大学大学院教育発達科学研究科卒。大学で認知科学、認知心理学、大学院では、教育学、学習心理学を学ぶ。現在は、消費者心理学を研究中。
電子部品メーカー、半導体商社、パソコンメーカーなどで、法人営業を経験。売り込んだことがないのに、どの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
未経験でセミナー講師として独立してみたものの、講師としてのレベルが低く、参加者や主催企業からの厳しいフィードバックに耐えきれなくなり、講師の道をあきらめかける。産業カウンセリング、キャリアカウンセリング、NLP、コーチングなどを学び、人の心理を考えた「伝え方」を研究、実践したことで、営業、コミュニケーション、リーダーシップ、プレゼンなどの「呼ばれる講師」として、年間100日以上登壇する講師となることができた。これまで、13,000人以上に指導してきた実績を持つ。伝え方プレゼンスクールを主催し、経営者、エンジニア、セミナー講師などに指導。コンサル会社、新聞社などの講師にも、講師力アップ養成講座を行っている。
著書に、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『1年目からできる! セミナー講師超入門』(実務教育出版)、『売れる言いかえ大全』(フォレスト出版)など合計14冊がある。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
- 上手に断るにはいったん受け止めること
- 真ん中を選んでもらうための挟み込み心理テクニック
- 3回で認知し、7回で効果ありとは?
- あいまいな言葉と専門用語は最悪の組み合わせ
- 相手の名前を呼ぶのは効果絶大!
- 人は忘れてしまう...「忘却曲線」を知ることで対策を
- 「私」を主語にして気づかせる指摘の方法