この記事は2025年6月25日に配信されたメールマガジン「アンダースロー:日本経済見通しのメインポイント(政策)」を一部編集し、転載したものです。

アンダースロー
(画像=years/stock.adobe.com)

① 2025年は、グローバルな景気減速とトランプ政権の不確実性の下押しの中、積極財政で成長率の底割れを防ぐ。2026年以降のグローバルな循環的景気回復の局面で、設備投資サイクルの上昇が牽引役となり企業貯蓄率は低下。物価上昇率は景気停滞による減速の後、2%の物価目標に向かって再拡大。2027年には、実質賃金の上昇による内需の拡大。2028年には企業貯蓄率は正常なマイナスに戻り、構造的なデフレ圧力を払拭し、デフレ構造不況を完全に脱却。

図1:日銀とCACIBのGDP、CPI見通し

図1:日銀とCACIBのGDP、CPI見通し
(画像=出所:日銀、クレディ・アグリコル証券)
日銀とCACIBのGDP、CPI見通し
(画像=出所:日銀、クレディ・アグリコル証券)

② 日銀の2025年の利上げはない。内需低迷、トランプ関税によるグローバルな景気減速、物価上昇率の縮小、政局の混迷で利上げは一時的に止まる。中立金利に向けた利上げの本格的サイクルに入れるのは2026年前半。2%の物価目標に向けた物価上昇率の再拡大で、ゼロ%程度の実質金利に合わせた利上げを継続。実質金利ゼロの維持が、経済活動を促進。2028年には政策金利は2%強となり、実質政策金利はマイナスを脱する。

図2:日銀の政策金利

図2:日銀の政策金利
(画像=出所:総務省、日銀、クレディ・アグリコル証券)

③ 経済規模の拡大へのコミットで、デフレ脱却・成長率押し上げ最優先の経済財政運営を継続。財政健全化と規制緩和が優先され、緊縮財政に転じれば、総需要の減退による再デフレ化のリスクに。政権基盤は弱く、国民の支持をつなぎとめるため、追加経済対策を実施。少数与党の不安定な国会運営と、トランプ政権の動きにうまく対処できないことで、石破内閣の支持率は低下。夏の参院選での自公政権の敗北によって、石破政権は退陣に向かう。積極財政を推進する新たな政権が誕生。

図3:政府の経済政策の方針

図3:政府の経済政策の方針
(画像=出所:クレディ・アグリコル証券)

④ トランプ関税によるグローバルな景気減速の下、金融・財政政策の後押しが不十分で、信用サイクルが腰折れれば、内需の鈍化で企業貯蓄率は上昇し、デフレ構造不況に戻るリスクに。日銀の拙速な利上げによって、雇用・賃金・消費を含む内需の回復が遅れ、コアコア消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)の前年同月比は1%程度まで減速する。政府の減税策と、物価上昇率の減速が実質賃金を上昇させることで、2026年以降の内需の回復が促進される。

図4:信用サイクルと失業率

図4:信用サイクルと失業率
(画像=出所:日銀、内閣府、クレディ・アグリコル証券)

図5:日本経済見通し

図:日本経済見通し
(出所:日銀、内閣府、総務省、Bloomberg、クレディ・アグリコル証券)
実質GDP

会田 卓司
クレディ・アグリコル証券 東京支店 チーフエコノミスト
松本 賢
クレディ・アグリコル証券 マクロストラテジスト

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