水道機工は社名の通り、水処理のエンジニアリング企業として歩んできた。昨年、節目の創業100年を迎えた。また、東レグループの一員となって四半世紀近くとなる。だが、その歴史の中で、同社が取り組んだM&Aは意外にもほんの数例しかない。

サウジ撤退へ、現地合弁を完全子会社化

水道機工は7月末、サウジアラビアで水処理事業を手がける持ち分法適用関連会社のSUIDO KIKO MIDDLE EAST(SKME、ジッダ)を買収すると発表した。10月をめどに合弁相手から株式を買い取り、現在49%の持ち株比率を100%に引き上げ、完全子会社化する。取得金額は11億5800万円。

実は、この買収は合弁関係を解消し、サウジでの事業撤退をスムーズに進めることを狙いとする。

SKMEは2006年に設立。RO(逆浸透膜)を用いた海水淡水化、下水・工業廃水の再利用などの事業に取り組んできたが、近年は赤字が常態化。2024年12月期は売上高1億1700万円、営業赤字18億8700万円で、債務超過額も36億円に膨らんでいた。

これまで合弁相手とともにSKMEへの資金支援を行ってきたが、契約済み工事の完成遅れに伴うペナルティーなどの負担拡大が懸念されることから、株式の追加取得で意思決定を迅速化することにより、リスクの最小化と早期撤退が可能になるとの判断だ。

水道機工100%出資のもとでSKMEは一部工事の最終引き渡しと工事代金の回収を進めたうえで、2027年12月までに会社清算を行う予定としている。

サウジ撤退に伴い、海外拠点は当面、ベトナムだけとなる。2014年、現地子会社SUIDO KIKO VIETNAM(SKVN、ハノイ)を設立し、東南アジアでの市場開拓を進めている。

昨年、創業100年の節目に

水道機工は昨年、「100年企業」に仲間入りした。創業は1924(大正13)年にドイツ製水処理機械の輸入を始めたことにさかのぼる。1936年に創立した日本温泉管を経て、戦後の1946年に現在の水道機工に社名を変更。水道施設を主体とする水処理事業に乗り出した。

主要顧客は全国の自治体。浄水場に対し、水処理プラントの設計、調達、施工、運転管理、メンテナンス(修繕)までのサービスをトータルに提供している。

M&A Online
(画像=水道機工の本社ビル(東京都世田谷区)、「M&A Online」より引用)

東レグループに入り、再出発

長らく自主独立路線を歩んできた水道機工に一大エポックが訪れたのは2002年。東レとの資本業務提携だ。

2004年には東レの持ち株比率が20%から51%に引き上げられ、同社は東レの傘下に入り。その際、水処置システムプラント事業の営業権を引き継いだ。東レとは親子上場の関係でもある。

ただ、水道機工が自ら取り組んだM&Aは限られ、本格的に着手したのはここ5年ほどのこと。手始めとして2020年、水処理関連機器を製作する山田設備機工(青森県八戸市)を子会社化した。

2024年12月にはバイオトイレを主力製品とする正和電工(北海道旭川市)を子会社に迎えた。そして今回、サウジ撤退を前提としたイレギュラーな形の案件が待ち構えていたのだ。

水道機工はグループ子会社として、運転管理・メンテナンスの水機テクノス(東京都世田谷区)、ベトナムSKVNに、山田設備機工、正和電工を合わせて4社を抱えるが、この半数が買収企業であることを踏まえれば、“実”のあるM&Aを実行してきたといえる。

昨年末に子会社化した正和電工が提供するバイオトイレ「バイオラックス」は特別な菌を必要とせず、おが屑だけで分解処理し、水も不要な自己完結型トイレ。工事現場や災害時の仮設トイレなどとして需要が期待されている。