この記事は2024年7月1日に「第一生命経済研究所」で公開された「2024年度税収75兆円台へ」を一部編集し、転載したものです。


税収
(画像= Jorge / stock.adobe.com)

目次

  1. 税収75兆円台へ、定額減税下での増加
  2. 25年度PB黒字化実現は①25年度景気、②参院選後の補正予算が左右

税収75兆円台へ、定額減税下での増加

各社が24年度の税収が75兆円台(一部報道では75兆円台前半)に達する旨を報じている。昨年末の予算案編成時点における財務省見込みで、24年度の税収は73.4兆円と見込まれていた。75兆円台前半(75.0~75.4兆円)になるのであれば、おおむね見込み値からは2兆円程度の上振れとなる。また、前年度との対比でも23年度税収:72.1兆円から3兆円程度の増加となる。

改めて押さえておきたいポイントは、24年度は所得税の定額減税が行われていた点だ。これで国税には▲2.3兆円程度の減収要因になっている(*1)。にもかかわらず前年度対比増となっている点で、ヘッドラインが示す以上に、税収の実勢は力強いといえよう。資料2では月次の税収(公表済みの4月分まで)の季節調整値とそのトレンド(6カ月移動平均値)を示している。年率換算した数字であり、その値は月次の瞬間風速のような意味合いになるが、直近値の水準はすでにその水準は80兆円近くに達している。

*1:このほか、テクニカルな要因として、グループ通算制度や源泉徴収不適用制度による23年度のマイナス影響が剥落した点がいくらかの増加要因になっているとみられる。詳しくは「なぜ税収は去年より減っているのか?~テクニカル要因だが、23 年度税収の増勢は鈍化へ~(2023.10.31)」。

第一生命経済研究所
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25年度PB黒字化実現は①25年度景気、②参院選後の補正予算が左右

週内にも決算税収が財務省から正式に公表され、その後の経済財政諮問会議で政府の財政試算(中長期試算)の改定が行われる見通しだ。ここで今回の税収上振れ(に伴う25年度以降の歳入増)も織り込まれていくことになる。前回1月時点での試算において、国と地方の基礎的財政収支の試算値は25年度に▲4.5兆円の赤字と試算されていた。今回の税収上振れによって赤字縮小方向の改定が見込まれるが、上振れ幅を踏まえると「25年度黒字化」の絵は描かれない程度の改定になると予想される。

もっとも、「財政赤字はなぜ縮小しているのか?~経済環境次第では2025年度PB黒字化も~」(2025年4月2日)で指摘した点として、歳出不用額や基金の積み上げに関する想定の影響などから、政府の試算は短期的には赤字方向にバイアスがかかっている(悲観的)。25年度PB黒字化の実現は①25年度景気や企業収益が崩れないか(関税影響や為替の円高による利益減)、②参院選後に見込まれる補正予算の規模や国債発行がどの程度になるか、が左右することになる。

筆者は現状、関税や円高の影響で税収増のペースが鈍ることで25年度はPB赤字が残るとみているが、状況次第では25年度PBが黒字になってもおかしくはないとも考えている。大幅な税収増を通じてPB赤字は縮小方向にあり、25年度PB黒字化が絵空事の目標でなくなりつつある点は、もう少し広く認識されても良いだろう。経済のインフレ転換で税収が伸びやすくなっている一方で、歳出等のインフレ調整は十分に行われていなかったことで(*2)、財政赤字は縮小しやすい環境になっているとみている。

*2:25年骨太(26年度予算編成の方針)では“制度全般のインフレ調整”が明記(弊著:骨太方針2025のポイント(財政運営編)も参照)。この点で26年度予算以降の歳出額はインフレ勘案度が高まることで従来より膨らむ可能性が高い。

第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 星野 卓也