対日買収は堅調、ファンドが牽引

一方で、米国側による対日買収は堅調を保っている。主役は投資ファンド。1~8月における16件の対日買収のうち9件に関与している。8月に発表があった2件もファンド絡みだ。

技術者派遣大手のテクノプロ・ホールディングスは、ブラックストーンによるTOB(株式公開買い付け)を受け入れて株式を非公開化すると発表した。買付代金は最大5074億円に上る。

また、マンション向け電力販売のレジルをTOBで完全子会社化するのはベインキャピタル。レジルは2024年1月に東証グロース市場に上場したばかりだが、株式の非公開化を通じて中長期の視点で事業改革や成長加速を進める。

1月から8月まで全150件の海外M&Aを国・地域別にみると、米国42件をトップに、中国21件、ベトナム10件、英国、ドイツ各9件、オーストラリア7件、台湾5件などが続く。

ただ、2位の中国については日本企業が買い手の案件は5件だけ。残る16件は中国側が買い手だが、その大部分は日本企業が現地子会社・事業を売却する案件で、対中ビジネスの戦線を縮小する動きが続いている。

◎2025年1~8月:日米M&Aの金額上位 ※HDはホールディングスの略

社名内容金額発表
1 ソフトバンクグループ 半導体設計の米アンペア・コンピューティングを子会社化 9730億円 3月
2 セブン&アイ・HD スーパー事業などを米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡 8147億円 3月
3 SOMPOホールディングス 米損保会社のアスペン・インシュアランス・ホールディングスを子会社化 5217億円 8月
4 三菱ケミカルグループ 子会社の田辺三菱製薬(大阪市)を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡 5100億円 2月
5 テクノプロ・HD 米投資ファンドのブラックストーンによるTOBで株式を非公開化 5074億円 8月
6 トライアルHD 米投資ファンドKKR傘下の総合スーパーの西友を子会社化 3826億円 3月
7 トプコン 米投資ファンドのKKRと組んでMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化 3481億円 3月
8 豊田通商 金属リサイクル大手の米国ラディウス・リサイクリングを子会社化 1344億円 3月
9 日新 米投資ファンドのベインキャピタルと組んでMBOで株式を非公開化 1121億円 5月
10 オリックス グローバル金融サービスの米国Hilco Tradingを子会社化 1120億円 5月

文:M&A Online