上場企業の看板を返上する日本調剤

調剤業界をもう一つ揺るがせたのが2位の日本調剤。7月末、国内投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(AP、東京都港区)のTOBで株式を非公開化すると発表した。

TOBは9月16日に終了。APは今後、TOBに応じなかった株式の取得を進め、日本調剤を完全子会社化する。買収総額は1178億円。

日本調剤の創業家は株式の約6割を保有するが、すべてを売却し、経営から手を引くことにしており、事実上の身売りととらえられている。

創業者の三津原博現会長が2019年に長男の庸介氏に社長を譲ったが、庸介氏が昨年5月、「健康上の理由」で社長を辞任。業績も伸び悩みが続いており、中長期的に企業価値を高めるには外部資本との連携が不可欠と判断した。

M&A Online

(画像=日本調剤の会社ロゴ(東京・銀座で)、「M&A Online」より引用)

非公開化、再編の新たな火種に

少々気が早いかもしれないが、日本調剤の非公開化は将来的に業界再編の新たな火種となる可能性が高い。同社を買収するのは投資ファンド。4~5年にはファンドが出口戦略(投資回収)として保有株式を放出する時期が訪れるが、その際、買い手がどこになるのか。

仮に、アインが名乗り出れば、調剤トップの座を盤石にすることになる。ドラッグストア陣営が買収すれば、アインの調剤トップの座が再び危うくなる。どちらに転んでも、戦国時代が待ち受けることになりそうだ。

調剤薬局大手では過去にも上場の看板を返上した例がある。2020年に総合メディカル、2016年にアイセイ薬品がいずれも国内投資ファンドと組んで非公開化した。

◎アインホールディングスと日本調剤の直近業績(※売上高は調剤事業以外も含む)

売上高 営業利益 調剤店舗 (決算期)
アインHD 4568億円 168億円 1290店 2025年4月期
日本調剤 3605億円 62億円 753店 2025年3月期

アイン大株主の香港ファンドの出方は?

今後の占ううえで注目点の一つが物言う株主の動向だ。アインホールディングスでは香港投資ファンドのオアシス・マネジメントが約15%の株式を持つ大株主。その保有株式の行方が気になる。

オアシスで思い出されるのは、ウエルシア・ツルハ経営統合の仕掛け役を果たしたこと。保有していたツルハ株(約13%)をイオンに1000億円強で売却したのを引き金に、イオン子会社のウエルシアがツルハと経営統合する道が開けた。

ツルハの場合と同じように、イオンをアイン株の売却先とするようなことになれば、ドラッグストア・調剤薬局をまたぐ大型再編に発展する可能性が出てくる。

文:M&A Online