本記事は、高津佐 和宏氏の著書『儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
あなたが作っているのは「消費財」と「嗜好品」、どっち?
「消費財」と「嗜好品」とは?
農家は大きく分けて「消費財」と「嗜好品」のどちらかを生産しています。「消費財」は、消費者が日常的に消費する野菜や牛乳などの農畜産物、「嗜好品」は果物や高級なお肉など、贈答品や自分へのご褒美などで購入される農畜産物です。
「高級品であり、高値で取引される『嗜好品』のほうがいいのでしょうか?」と聞かれることもありますが、決してそうではありません。「嗜好品」のほうが売値は高いでしょうが、需要(消費量)が多いのは圧倒的に「消費財」です。また、「嗜好品」は高値で売れるからこそ、高くても買ってもらうための努力や工夫が必要です。
大切なのは販売方法を間違えないこと
「消費財」と「嗜好品」のどちらを生産しているかで、販売方法や経営方法が違ってきます。「消費財」を作っている農家が「嗜好品」的な売り方をしたり、「嗜好品」を作っている農家が「消費財」的な売り方をしたりすると、農業経営はうまくいきません。
そして、これから農業を始めたい人にとっても、自分が生産するものが、「消費財」と「嗜好品」のどちらなのかを見極めることは極めて重要です。
「消費財」は「大衆消費財」と「嗜好品的消費財」に分けられる
「大衆消費財」と「嗜好品的消費財」の違い
消費財は、「大衆消費財」と「嗜好品的消費財」に分けられます。「大衆消費財」とは、一般的にスーパーで売られている野菜やお肉、業務加工用の野菜などを言います。比較的、安価で大量に流通し、日常的に食される食品です。
では、「嗜好品的消費財」とはどのようなものでしょうか? たとえば、スーパーで売っている1パック198円のミニトマトの横に、1パック298円のミニトマトが売られているとします。ミニトマトがほしいのなら198円のもので十分ですが、「農園名がわかる」や、「ふつうのものより甘くておいしい」などの理由で、298円のミニトマトが売れたりします。これが嗜好品的消費財です。有機野菜も嗜好品的消費財に分類するといいでしょう。
嗜好品的消費財として売るなら理由が必要
このように書くと、誰もが嗜好品的消費財を生産して売ったほうがいいと思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
まず、需要は圧倒的に大衆消費財のほうが多く、たくさん売れます。
さらに、嗜好品的消費財として売るなら、高く売る理由が必要です。差別化ポイントと言ってもいいでしょう。
その差別化するポイントが見つからなければ、大衆消費財より高く売ることは難しいのです。
「嗜好品」は「大衆嗜好品」と「高級嗜好品」に分けられる
「大衆嗜好品」と「高級嗜好品」の違い
「嗜好品」は、「大衆嗜好品」と「高級嗜好品」に分けられます。「大衆嗜好品」とは、主に卸売市場を経由してスーパーや業務加工向けに回される果物などです。「高級嗜好品」とは、高級百貨店や高級果物専門店、農家の直販などで高値で取引される果物などを指します。
嗜好品を生産している人は「高級嗜好品」を目指そう
嗜好品を生産している人の選択肢は、「高級嗜好品」を目指す一択です。嗜好品は、基本的に味や姿形など、農家によって品質に差が出ます。大衆嗜好品だとその違いが評価されないことがほとんどです。農家の努力をお金に変えるには、「高級嗜好品」として売っていくしかありません。
ただし、「高級嗜好品」として売るには、味や姿形などが優れていることと同時に販売の努力も必要です。作るだけではダメで、どうやって販売していくか、しかも高値で販売していくかを考え抜いて実行する必要があります。
嗜好品を生産している農家は、まずは自ら顧客として体験することから始めてみましょう。インターネットなどで直販している同業の農家の品物を買ってみるのです。そして、自分のものと客観的に比べてみましょう。顧客体験がそのまま市場リサーチにもなるのです。
宮崎大学大学院修士課程を修了後、JA宮崎経済連に就職する。農業機械、マーケティング、業務加工用野菜、県外営業所勤務を経て、冷凍野菜・カット野菜の製造販売を手掛ける子会社の設立に携わり、営業責任者として15億円の売り上げと工場内の業務改善により黒字化に貢献。
2018年4月に農業経営コンサルタントとして独立。独立後は、農家を直接支援するために、YouTubeやSNSで「儲かる農家になるための情報」を発信しながら、講演・セミナー活動、個別コンサルなどを行っている。著書に『金持ち農家、貧乏農家』(かんき出版)、『ゼロからはじめる 稼ぐ農業 必ず知っておきたいこと100』(共著、あさ出版)がある。
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