本記事は、高津佐 和宏氏の著書『儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略
(画像=Olivier_Le_Moal/stock.adobe.com)

お金の流れを理解する①

大切なのは経営判断ができること

農業経営の第1ステップはお金の流れを理解すること。お金の流れを細かく把握するというよりは、経営判断ができるレベルでお金の流れを把握することが大切です。
儲かっている農家は数字を大事にし、数字で会話をします。自分自身の農業経営を数字で説明できることが儲かる農家への第一歩です。

お金のブロックパズルを理解しよう

まず、経営の規模の大きさを決めるのは、売上です。売上以上に経営の四角形図参照)は大きくなりません。売上からさまざまな経費が引かれて、利益(所得)になります。

儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略
(画像=儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略)

変動費は、売上に比例して増えたり、減ったりする経費になります。たとえば、JAや卸売市場の手数料などがそうです。販売方法などによっても変動費は変わります。
そして、売上から変動費を引いたものが粗利です。次に、粗利から固定費を引きます。
固定費は人件費とその他。その他としては、肥料や農薬、減価償却費などがあります。最後に、残ったものが利益(所得)になります。

理解しないといけないお金の流れは、まだあります。最後に残った利益(所得)の後にもお金の流れは続くからです

お金の流れを理解する②
〜利益の先にあるもの

利益(所得)は「残るお金」ではない

さて、お金のブロックパズルを使って、大きなお金の流れを説明しました。最後に、利益(所得)が残りましたが、実はその後にもお金の流れは続きます。
まず、利益(所得)には税金と社会保険料がかかります。残ったものが税引き後の利益です。税引き後の利益に減価償却費の繰り戻しがあります。減価償却費は、現金の支出を伴わない経費なので、減価償却費分は現金が残っているはずです。税引後利益と減価償却費を合わせた分が手元に残る現金です。
さらに、人によっては最後に返済があります。融資を受けたお金の返済は、経費になりません。税金などを支払った後のお金で返済します。返済をして残ったお金が使えるお金になります。生活費や来年の農業経営への投資に使えるお金です。

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経営は「逆算」が大切

お金の流れが理解できたら、簡単でいいので逆算してみましょう。まず使えるお金はいくらほしいですか? 家族構成などによっても違いますよね。次に、返済は年間いくらでしょうか?
返済と使えるお金の合計から毎年の減価償却費を引いたものが税引後利益です。税引後利益に税金と社会保険料を足したものが目標利益になります。税金がいくらになるかわからない方は30%程度で計算してみてください。
最後に、目標利益を達成するために、売上がどのくらい必要かを計算します。

所得の最大化を考える

農業経営は売上以上には大きくならない

お金の流れを把握したら、次は「どうすれば所得を最大化できるか」です。所得の最大化を考える最初のポイントは、売上の最大化です。売上を最大化するコツは、先述した「反収=面積あたりの収穫量の最大化」「秀品率=高値で売れるA品(秀品)の割合の最大化」です。そのうえで、経営者であるあなたの時間に余裕があるなら、面積の拡大を検討します。農業経営は、仕入れ販売を行なわない限り、自分で作った分しか売れません。
もちろん、単価を上げることで売上の拡大は図れますが、単価を上げるには品質を向上させる必要があり、単価が高くても反収が低ければ売上も上がりません。多くの野菜や果実で、反収が高ければ、秀品率も高い傾向にあります。

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(画像=儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略)

農業生産と向き合うことが所得最大化のポイント

何より農業生産ととことん向き合うことが、所得最大化のポイントになります。たとえば、同じ地域であなたより反収が多く、秀品率が高い農業生産をしている農家がいれば、自分との違いをぜひ突き詰めてみてください。
同じ地域で同じ品目を生産している場合、農業生産にかかる経費はそれほど変わらないはずです。反収と秀品率の違いが所得の違いにそのまま現れます。
新規就農の方は、農業生産が上手な人から学びましょう。逆に言えば、最初の師匠選びに失敗すると、取り返すのが大変になります。

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高津佐 和宏(こうつさ・かずひろ)
合同会社アグリビジネスパートナーズ代表社員。農業経営コンサルタント。農業経営を学び続ける有料オンラインスクール「儲かる農家のオンラインスクール」主宰。宮崎県の専業農家(菊栽培)の長男として生まれる。
宮崎大学大学院修士課程を修了後、JA宮崎経済連に就職する。農業機械、マーケティング、業務加工用野菜、県外営業所勤務を経て、冷凍野菜・カット野菜の製造販売を手掛ける子会社の設立に携わり、営業責任者として15億円の売り上げと工場内の業務改善により黒字化に貢献。
2018年4月に農業経営コンサルタントとして独立。独立後は、農家を直接支援するために、YouTubeやSNSで「儲かる農家になるための情報」を発信しながら、講演・セミナー活動、個別コンサルなどを行っている。著書に『金持ち農家、貧乏農家』(かんき出版)、『ゼロからはじめる 稼ぐ農業 必ず知っておきたいこと100』(共著、あさ出版)がある。

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