本記事は、高津佐 和宏氏の著書『儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略
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現状維持では利益が減っていくのが経営の本質

経費は年々じわじわと増えていくのが当たり前

農業経営において、肥料・農薬などの生産資材、機械・設備、燃料、さらには人件費や物流費まで、あらゆるコストは年々上昇していく傾向にあります。これは一時的な現象ではなく、長期的な構造の変化として捉えるべきです。
つまり、「去年と同じように作って、去年と同じように売れば、同じだけの利益が出る」という考え方は、これからの農業には通用しなくなってきているのです。

利益を守るには、現状維持では足りない

経費が上がるということは、売上が去年と同じであれば、当然ながら利益は減っていきます。利益を維持・向上させるには、単価を上げる、生産性を上げるなどして、売上や利益率の向上につながる取り組みが不可欠です。
一方で、経費の削減には限界があります。とくに外部要因で価格が上昇する資材や燃料、人件費などは、自分の努力だけで抑えることが難しいため、「削減ありき」の発想ではなく、「どう稼ぐか」に焦点を当てる必要があります。
さらに、農畜産物の価格は多くの場合、需要と供給のバランスで決まっていきます。つまり、自分ではコントロールできない要素の影響を強く受けるということです。だからこそ、自分の農業経営における「儲けの源泉」がどこにあるのかを、あなた自身が明確にしておくことが重要です。

儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略
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生産性を測る指標①
1人あたり売上高

「生産性」という曖昧な言葉からの脱却

前年と同じもしくは前年より利益を増やすには、生産性を向上させなければなりません。
しかし、この「生産性」という言葉には、具体性がありません。何をどのようにすれば生産性が上がるのかを理解する必要があります。そこで、生産性を測る指標を2つ紹介します。この2つの指標を向上させることで生産性は上がっていきます。
まず、1つ目は、「1人あたり売上高」です。農園の売上高を働く人の数で割ることで計算することができます。自分や配偶者や両親も人数に入れてください。パートやアルバイトで、週に数日しか出勤しないとか、短時間勤務とかの場合は、0.3人とか0.5人などと実情に合わせて、適当に決めてください。あくまで指標なので難しく考えずに計算してみましょう。

儲かる農家の強化書 年収1000万円以上稼ぐ経営戦略
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「1人あたり売上高」から見えるもの

「1人あたり売上高」からは何が見えるのでしょうか? それは、「給料をいくら払えるか」です。1人あたり売上高が300万円の場合、給料を年間で300万円は払えませんよね。仮に1,000万円だったら、年間300万円は払えるかもしれません。
1人あたり売上高には、給料と生産資材費などの経費、そして農園の利益が含まれます。
1人あたり売上高が低ければ、給料も利益も少なくなることがわかります。従業員と1人あたり売上高を共有し、この値が上がると給料も増やすことができることを理解してもらい、農園全体の生産性を上げていくのです。

生産性を測る指標②
人時生産性

どのくらいの仕事をしているの?

生産性を測る指標の2つ目は「人時にんじ生産性」という指標です。この指標は、従業員1人の1時間あたりの仕事量を表します。
たとえば、2人で5時間で100キロの収穫をしたら、人時生産性は10キロになります。
できるだけたくさんの仕事をしてもらったほうが生産性が高いということになるので、「どうすれば、時間あたりでたくさんの仕事ができるようになるのか」を常に考えて、その仕組みを整えなければなりません。

間違っても指標を使って従業員を指導しないこと

ただし、「うちの1人あたり売上高は少ない」「人時生産性をもっと上げよう」など、指標を使って従業員を指導してはいけません。
生産性が低いのは、従業員の責任ではなく、経営者の責任です。この2つの指標が低い原因を分析し、どのような仕組みにすれば生産性が高くなるのかを考え実践することが、経営者のやるべきことです。
一方、現状の数字を伝えて、農園としての目標を朝礼などで伝えることは意味があります。自分たちの現状を数字で知ること、そして目標値を掲示することで意識が変わりますので、自ずと結果も変わってきます。
くり返しますが、やってはいけなのは、生産性が低いことを従業員のせいにするような言い方をしないこと。これだけは絶対にやってはいけません。

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高津佐 和宏(こうつさ・かずひろ)
合同会社アグリビジネスパートナーズ代表社員。農業経営コンサルタント。農業経営を学び続ける有料オンラインスクール「儲かる農家のオンラインスクール」主宰。宮崎県の専業農家(菊栽培)の長男として生まれる。
宮崎大学大学院修士課程を修了後、JA宮崎経済連に就職する。農業機械、マーケティング、業務加工用野菜、県外営業所勤務を経て、冷凍野菜・カット野菜の製造販売を手掛ける子会社の設立に携わり、営業責任者として15億円の売り上げと工場内の業務改善により黒字化に貢献。
2018年4月に農業経営コンサルタントとして独立。独立後は、農家を直接支援するために、YouTubeやSNSで「儲かる農家になるための情報」を発信しながら、講演・セミナー活動、個別コンサルなどを行っている。著書に『金持ち農家、貧乏農家』(かんき出版)、『ゼロからはじめる 稼ぐ農業 必ず知っておきたいこと100』(共著、あさ出版)がある。

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