この記事は2025年10月10日に「第一生命経済研究所」で公開された「日銀手法に倣った合成予想インフレ率の推計(2025Q3)」を一部編集し、転載したものです。


インフレ
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目次

  1. 筆者推定の合成予想インフレ率指標(5年後)は+1.75%に
第一生命経済研究所
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筆者推定の合成予想インフレ率指標(5年後)は+1.75%に

本日公表された日銀の「生活意識に関するアンケート調査」などに基づき、家計・企業・専門家の予想インフレ率を統合した合成予想インフレ率指標の推定を行った。推定した7-9月期の合成予想インフレ率指標は+1.75%と、前期(1.69%)から上昇率を高めた(資料)。日銀は物価の状況を説明する際に「基調的インフレ率」を度々取り上げている。日銀の説明する「基調的インフレ率」の定義ははっきりしたものではないのだが、それをみるうえで重視しているものの1つと考えられるのが予想インフレ率だ。合成予想インフレ率は家計・企業・専門家の予想インフレ率を複合した指標として、日銀の公表資料でも複数回登場している数字である。

推計値は着々と2%に近づいており、予想インフレ率の上昇を示している。日本銀行は従来から「基調的インフレ率が2%に達していない」との発信を行ってきたが、“2%に近い”くらいの評価はできる水準感になってきているとみられる。物価の現状評価に対するトーンにも徐々に変化がみられるかもしれない。


(参考文献)

  • 長田・中澤(2024)「期間構造や予測力からみたインフレ予想指標の有用性」日銀レビュー 2024-J-5

  • 西野・山本・北原・永幡(2016)「『量的・質的金融緩和』の3年間における予想物価上昇率の変化」日銀レビュー 2016-J-17

  • 大柴(2024)「インフレ予想の統計的推定の展開①~合成予想物価上昇率の有用性~」第一生命経済研究所 Economic Trends


第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 星野 卓也