本記事は、伊庭 正康氏の著書『リーダーの「任せ方」の順番 部下を持ったら知りたい3つのセオリー』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
1分で100個のリンゴを剝くためには
リーダーの「頑張りどころ」とは?
ちょっと、クイズにお付き合いください。
あなたは今、「目の前にある100個のリンゴ」を、いかに速く剝けるかを競うゲームに参戦中。
制限時間は、たったの1分。
優勝賞金は5万円。
観客は100人。空気はピリッと張り詰めています。
ルールは―特にナシ。
さあ、あなたならどう動きますか?
選択肢を用意しました。
A: 1分はムリ。早々にあきらめる。
B: 「ムリかも……」と思いつつ、とにかく自分でやってみる。
C: 観客から20人ほど応援を募って、一緒に剝いてもらう(謝礼は賞金から)。
もう、おわかりですね。
Cこそが、リーダーとしてもっとも賢い選択。
なぜか。
それは「他者の力を借りて、成果を最大化する」
これこそが、リーダーに求められる本質だから。
自分ひとりで頑張るのではなく、周囲のリソースをどう活かすかにこそ、力を使う。
人を集めてでも、大きな成果を出すための“最適解”を導くのが、リーダーの仕事なのです。
「やったほうが早い」は、落とし穴
でも現実は、どうでしょうか。
つい目の前の仕事を、自分で抱え込んでいませんか?
「自分がやったほうが早いし、ミスもない」、その気持ち、よくわかります。
でも、それは“リンゴを1人で剝いている”のと同じ状態。
たとえ1分で5個剝けても、残り95個はどうなるのでしょうか?
あなたの時間も、チームの成長機会も、目減りしていきます。
リーダーの「頑張りどころ」は、“自分が動くこと”ではなく、“人を動かすこと”。
どこに手を入れれば、組織が一歩前に進むのか。
誰に何を任せれば、チームが活性化するのか。
そこを考えることが、あなたの真の価値です。
剝くのではなく、剝いてもらう
あなたが本当に剝くべきなのは、リンゴじゃない。
チームの可能性にまとわりついた“殻”なんです。
「やってもらう」「任せる」「信じてみる」―
そのひと手間が、組織をまるごと変えていく。
さあ、観客席ならず、職場を見渡してみてください。
手伝ってくれそうな人、きっといますよ。
あなたの「頼る力」が、チームの成長を連れてきます。
あなたの頑張りが「罪」になる?
あなたの給与は、部下より高い
これは当たり前のこと。
経験も、責任も、重ねてきた証だから。
でも、そんなあなたが“同じ仕事”をしていたら―
それ、実はコストのムダ遣いかもしれません。
「生産性を上げるもっともシンプルな方法」
それは、あなたより給料の低い人に任せること。
……つまり、部下に任せることです。
ちょっと、算数で考えてみましょう。
たとえば、あなたが営業職で、年間1億円の売上を持つ顧客を担当していたとします。
あなたの人件費+諸経費は800万円。
では、その顧客を、経費400万円の若手に任せたら?
売上は同じ、でもコストは半分。はい、生産性は2倍です。
数字にすれば一目瞭然。
でも、心では、なかなか手放せない。
「自分がやったほうが安心だ」
「ミスされたら困る」
「お客様との関係があるから」
―わかります。私もそうでした。
かつて営業部門の管理職をしていた頃、上司からこんなことを聞かれました。
「1契約あたりのコスト、どのくらい?下げられないかな?」
……「1契約あたりのコスト」、考えたこと、ありませんでした。
振り返れば、私を含めた給与の高いメンバーが、テレアポをしていたわけです。
これは、バイトを雇わず、高給のシェフが新作メニューの開発をせずに、目の前の野菜を洗っているようなもの。そんな店が儲かり続けるはずはありません。
もちろん、タスクの「価値が低い」と言っているのではありません。
「コストと見合わない」ことが問題ということです。
コストを下げれば、生産性は上がる
考えてみると、どうでしょう。
世の中の多くの部長は自部門の人件費を「パッ」と言えます。
そりゃそうです。責任者ですから。
でも、課長の多くは自分の職場の人件費を「パッ」と言える人が少ないもの。
そこまでのコスト意識がないからです。
残業すれば、時間外の給与は1.25倍に跳ね上がります。社員の残業代は結構なコストです。少なくとも、あなたの残業代が一番高いかも……。
だとすれば、残業をなくすため、バイトを雇ったほうが生産性は上がるかもしれません。
成果が何倍にも上がるわけじゃないなら、コストを下げることが、生産性を上げる一手。
部長以上、役員は、普通にそう考えます。
あなたの頑張りが「罪」になるなんて、悲しいこと。
あなたに求められているのは―任せること、育てること、導くこと。
チームの未来をつくることです。
“自分でやる”から、“自分たちでやる”へ。
その一歩を、あなたからはじめてください。
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