スリーアールソリューション株式会社

2001年にPC周辺機器のEコマースからスタートし、現在はデジタル顕微鏡・内視鏡のB2B卸売、再生可能エネルギー事業、ソフトウェア開発、さらにはメイド・イン・ジャパン製品の海外販売まで、6つの主要事業を手がける「総合商社」として成長を続けているスリーアールグループ。

しかし、その歩みは順風満帆ではなかった。「潰した事業の方が圧倒的に多い」と語るのは、2005年に入社し、現在グループを率いる代表取締役社長の今村陽一氏。3年に1度のピンチ、度重なる失敗と血まみれの経験を経て、いかにして同社は独自の強みを築き上げたのだろうか。

今村陽一(いまむら よういち)── 代表取締役社長
1977年、福岡県生まれ。2000年、岡山大学卒業後、2005年にスリーアール株式会社入社。営業を経て統括本部長として組織マネジメントを担当し、2015年に代表取締役社長に就任。以降、スリーアールエナジー、スリーアールソリューション、スリーアールソフトウェアの3社を設立し、グループ経営を推進。現在は従業員120人、博多駅近郊に本社を構えるスリーアールグループをけん引する。4児の父であり、年間100冊を読む読書家。趣味はランニングと落語鑑賞。
スリーアールグループ
福岡を拠点とする総合商社グループ。「あしたの欲しいを実現し、社会を元気にする」を理念に、スリーアール株式会社を中心とした6社で構成。工業・美容・医療用測定機器の製造販売、小型家電などの企画・開発・販売、伝統と品質を誇るメイド・イン・ジャパン製品の海外輸出販売、太陽光発電・系統用蓄電池をはじめとした再生可能エネルギーのトータルプロデュース。福岡本社をはじめ東京・岐阜、海外では中国に拠点を持ち、トレンドを捉えた独創的な商品企画力と販売力で成長を続けている。
企業サイト:https://3rrr-hd.jp/

目次

  1. 3年おきに事業を生み出す挑戦の系譜
  2. KPIは追わない。「業界の伸び」と「社内リソース」で測る“勢い”
  3. 大手とは戦わない。ハードとソフト「両利き」で攻めるニッチ市場
  4. 「決済は1日、でも白黒つけない」ミッションが支える高速修正力
  5. 3年に1度のピンチと“気合”。「優秀な人」と200億の未来へ

3年おきに事業を生み出す挑戦の系譜

── PC周辺機器から始まり、現在は非常に多角的な事業展開をされていますが、どのような歩みだったのですか。

今村氏(以下、敬称略) 私は2005年から参画しました。最初はPCの周辺機器から始め、およそ3年おきに新しい事業をどんどん立ち上げて、今に至ります。主な事業は6つほどありますが、正直に言うと、つぶした事業のほうが圧倒的に多いですね。常に新しい柱を建てていきながら、伸びたところを事業会社にしていく、というケースを繰り返してきました。

もともとは中国からの商品調達が中心でした。そこから派生させて、まずはデジタル顕微鏡、内視鏡といったB2B向けの卸売りを開始しました。並行してEC事業も展開し、一時期は九州でトップ10に入るくらいまで成長しました。

その後、ソフトウェアの事業を買収し、FIT(固定価格買取制度)が始まったタイミングで太陽光事業もスタートさせました。これは中国とのつながりでオファーを受けたのがきっかけです。ただ、パネル自体は全然売れず、すぐに「これは不動産ビジネスだ」と気づき、不動産事業に参入しました。ほかにもeスポーツ関連事業なども手がけています。

── 最近では海外販売にも力を入れているそうですね。

今村 はい。メイド・イン・ジャパンの製品を海外に展開する事業です。お線香や盆栽グッズ、抹茶、ラーメン、出汁といった、“コテコテの日本製品”を扱っています。

事業の話をすると、正直「何屋かわからない」と言われることが多いのですが、今のところは「総合商社」という形をとっています。社内にはさまざまな国籍のメンバーが所属し、海外販売を担当しています。グループ全体で見ると強いのは、B2B卸売りの顕微鏡・内視鏡、再エネ事業、そして海外販売です。

KPIは追わない。「業界の伸び」と「社内リソース」で測る“勢い”

── 数多くの事業で「選択と集中」の判断はどのように行ってきたのですか?

今村 よく聞かれるのですが、経営指標、たとえばKPIを細かく設定して判断する、ということは新規事業の立ち上げに関してはほぼやりません。

なぜかというと、KPIはあくまで過去の指標であり、過去のデータベースを分析するためのツールでしかないからです。未来のことなので、あえて数値化はしないようにしています。

何で決めるかというと、言ってしまえば「勢い」なんです。

── 勢い、ですか?

今村 はい。ただ、勘や思いつきだけではありません。まず、その業界が伸びそうか、そして我々のグループがそれに対するヒューマンリソースを持っているか。この二つがそろっているかどうかです。

我々はPC周辺機器のメーカーから始まっていますから、そこに付随したような領域、たとえばデジタル機器や、輸出入の貿易業務といったリソースはすでに持っていました。そこに外国人スタッフが入ってきたことで、海外貿易という流れができた。

もちろん、すべてがうまくいったわけではなく、半分ぐらいは失敗していますよ。ですが、我々の社内にあるリソースを利用して伸びそうな事業があれば、そこに挑戦する。そういう判断基準ですね。

大手とは戦わない。ハードとソフト「両利き」で攻めるニッチ市場

── スリーアールグループとしての「強み」、競合優位性はどこにあると考えていますか。

今村 ハードウェアの設計とソフトウェアの設計、両方のチームが社内にそろっています。九州で100人ぐらいの規模で、ハード設計とソフト設計の両方をできる会社は、私が知るかぎりほかにないはずです。

たとえば、ソフト側から「このカメラをソフトに組み込む製品が欲しい」という要求があっても、ハード側から「この製品と顧客データの管理システムを連携させたい」という要求があってもワンストップで実現できる。これはかなりの強みだと自負しています。

── 御社が強みとする顕微鏡や内視鏡の業界は、オリンパスやキーエンスといった、強力な大手企業がいるイメージです。

今村 まさしくそのとおりで、彼らは我々の業界の巨大な競合です。ですから、我々は「彼らがやらないこと」をやっています。

たとえば、オリンパスさんの医療用内視鏡や、キーエンスさんの光学システムは、1台で数百万、数千万、ものによっては億単位の価格になります。大手企業は、その予算管理上、その価格帯でしか勝負ができません。

我々が狙うのは、顕微鏡・内視鏡・工業用スコープの分野において、5万円から300万円のレンジです。

「決済は1日、でも白黒つけない」ミッションが支える高速修正力

── 強みとして「スピードが速い」という話もありました。

今村 一番よく言われるのは、「意思決定スピードが異様に速い」ことです。走りながら修正する。思ったとおりになったことなんて一度もありませんから。とにかく高速で修正を繰り返すんです。

── 何か特別な仕組みがあるのですか?

今村 決済スピードは確かに速いです。業界によっては、我々と同じ100人規模の会社でも、社長決済に1週間かかるところもあります。「そんな馬鹿な」と思いますね。弊社の決済は1日です。

── その場で白黒をはっきりつけるということですか

今村 いえ、実はそこが少し違っていて、白黒つけません。グレーが一番いい。ある程度、部門のリーダーや課長職の意思決定に任せる方針です。彼らの方が、私よりも現場が見えているはずですから。

ダメなのは、アウトプットがAかBかという些細なことで悩むこと。そこに至るまでの「思考のパターン」が私と共有できていれば、大コケする可能性は低いはずです。

我々のミッションは「変化に対応し、挑戦を続ける」。このミッションを強烈に大事にしているので、時代と合わないと思ったら、柔軟に切り替えるスタンスが根付いています。

3年に1度のピンチと“気合”。「優秀な人」と200億の未来へ

── これまででぶつかった大きな壁についても教えてください。

今村 中小企業をやっていると、3年に1回ぐらいは必ずピンチが来ます。2023年もそうでしたね。会社が成長する過程でつまずくポイント、たとえば「営業力不足」「資金繰りや在庫管理の失敗」「労務・法務の問題」といった定説がありますが、そのへん全部コケてます。血まみれになって進んできた感じです。

コロナのときも、実は2008年のSARSの流行時にマスクでコケた経験(在庫を抱え3000万円の損失)があったからこそ、今回は「同じムーブが来る」とわかりました。だから、売り切り、現金決済でやって、波が引くタイミングでさっと引く、という判断ができたんです。

── そうした数々のピンチを、最終的に乗り越えるために必要なことは何でしょうか?

今村 最終的には気合と根性ですよ。「絶対逃げない」こと、「全部自分のせい」だとマインドセットすること。社員や経済のせいにしたら終わりです。

── 今後はどのような展開を考えていますか?

今村 当然、事業拡大はどんどんやっていきます。基本は拡大です。ベンチマークしているのは、早急に売上200億。IPO(新規株式公開)もM&Aも、拡大の手段として当然考えています。

そのためにも、私のスタンスは明確です。「優秀な人間で、かつ思想が合う人間は大切にする」。あくまで我々は株式会社なので、事業拡大と、お客さまへのサービスと、皆さんの報酬アップのために集まっている。その前提条件の中でなら、人を大切にする努力は一生懸命やります。

私の座右の銘は「LOVE AND PEACE」です。これを私なりに訳すと「敬天愛人」。「天を敬い、人を愛す」ということです。周りの人間を大切にして、人生を楽しみましょう。

氏名
今村陽一(いまむら よういち)
社名
スリーアールグループ
役職
代表取締役社長

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