本記事は、山根 洋士氏の著書『聴く技術 あなたの会話が今日から変わる』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
沈黙をうまく使う
沈黙には2種類ある
自己一致の段階で、非常に大切になるのが、「沈黙の時間」です。
会話の中で、沈黙ほど怖い時間はないですよね。
聴くことを仕事とするカウンセラーの私も、「沈黙が訪れたら、どうしたらいいのでしょうか?」と、よく尋ねられます。
まず、沈黙には、気にならない沈黙と苦しくなる沈黙があります。
あなたにも、沈黙が気にならないときがあると思います。親しい友人や家族などとのふだんの会話なら、お互い話をしていない時間があっても気にならないでしょう。
会話とは、常にどちらかが話していないといけないわけではないのです。
お互いに話すことがなくなれば会話がなくなるし、話したいことが出てくれば、また会話が始まる。そのくり返しだと思います。
ところが、相談ごとや悩みごとだったり、相手が初対面やまだ親しくない人だったりすると、とたんに沈黙の時間が苦しくなります。
どうして苦しくなるかというと、会話が滞ると、「何を話せばいいのだろう」「話がつまらなかったのかな」「嫌われること言ったかな」「まずいこと言ったかな」など、頭がネガティブ思考に支配されるからです。
沈黙の時間が長くなればなるほど、さらに重苦しい気持ちになり、考えれば考えるほど頭が真っ白になっていきます。
沈黙は相手が考えている時間
沈黙が苦しくなるのは、何か話そうとするからです。しかし、聴き手であることを意識すると、とたんにその苦しみから解放されます。
なぜなら、沈黙は会話が途切れている時間ではなく、相手が考えている時間だからです。沈黙は、「ちょっと長めの間」。ふだんの会話でも、間が空くことはよくあります。お互いの話がかぶせ気味に続くことなんてありませんからね。
ふだんの会話でも何を話そうかと考えたり、相手は何を考えているのだろうと思ったり、感情を落ち着かせようとしたりすると、会話の途中で間が空きます。
つまり、沈黙が訪れたときは、相手は、話したくても話せない状態なのです。
「そのまま伝えていいのだろうか」「どう整理すればいいのだろうか」「どこまで話していいのだろうか」などと自問自答しているのです。心の中に入っていって自分のことをもっと理解しようとしているのです。
本音・本心を引き出したいなら、この時間を利用しない手はありません。
ひたすら待ちましょう。そこで聴き手が口を挟めば、相手は邪魔されたという思いになるでしょう。そうなると、「受容」と「共感」で築いた信頼関係があっさり崩れることもあります。
いつまでも沈黙に耐える
最初は5秒の沈黙に耐えてみる
カウンセラーは、沈黙が訪れても、相手が話し始めるまで待ちます。それは、沈黙は自己一致のための大切な時間だからです。相手の本音・本心を聴きたいなら、ひたすら待つしかないのです。
私の経験では、90分のうち80分くらい沈黙が続いたことがありました。話したのは最初の10分だけ。以降、相手は何もしゃべらなくなりました。その間、私は窓の外を眺めていました。それでも相手にとっては思考を深める有意義な時間なのです。
沈黙に耐えられるようになるには、トレーニングしかありません。まずは、ふだんの会話の中で5秒、10秒と時間を決めて、間が訪れたら、相手から質問されない限り言葉を発しないようにする。くり返していると、沈黙に耐えられる時間が少しずつ長くなります。それだけ、本音に近づけるようになるということです。
実践中心のカウンセリングで一線を画し、これまでに8,000人以上の悩みを解決。心理学だけでなく、数多くの経営者やスポーツ選手などへの取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れたメンタルノイズメソッドを開発。カウンセラー養成講座のほか、お金の心理学、自己肯定感、願望実現などの講座を主宰し、延べ受講生は2,000名を超える。
著書『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)がメンタル本大賞2021優秀賞を受賞。そのほか著書多数。
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