本記事は、山根 洋士氏の著書『聴く技術 あなたの会話が今日から変わる』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
「話さない準備」をしよう
頑張って話すことが逆効果に
聴き手のプロである私ですが、「カウンセラーになりたての頃からうまく聴けていましたか?」と問われると、言葉に詰まります。もちろん、相談者の話に真剣に耳を傾けていたし、お役に立ちたいという強い思いはありました。
どうして私がうまく聴けていなかったかというと、お役に立つ方法を少し間違えていたのです。
聴き手なのに、頑張って話そうとばかりしていたのです。
日本語の「聴く」には2つの意味があります。
1つは、文字通り聴く。英語で表現すると「LISTEN」です。
もう1つは、質問する。英語なら「ASK」です。
どちらも聴くという行為になりますが、大きな違いは、話し手と聴き手、どちらが主役か。LISTENは話し手が主役で、ASKは聴き手が主役になります。
なぜなら、質問には聴き手の意図が反映するからです。質問内容によっては、話し手の話を誘導することさえできてしまいます。
話したいことが話せなくなるのですから、相手が満たされることはありません。
つまり、上手な聴き手はLISTENしているのです。
ところが私は、LISTENできていませんでした。
カウンセラーになったばかりの頃の私は、相談者の悩みや相談を「私が解決してあげる」のが仕事だと思っていたのです。
相談者の時間とお金をいただいているわけですから、悩みや相談を聴くだけでは申し訳ない。相談者が苦しみから解放されるための解決策や道筋を教えてあげることが、私の使命だと考えていたのです。
そういうスタンスになると、相手が主役のはずなのに、私の頭の中は自分のことでいっぱいになります。
「どうしたらこの問題は解決できるのか」
「どういうアドバイスをしたらわかってもらえるのか」
「何かいいアイデアはないか」……。
相手に「何を話そう」ということばかりが頭に浮かんできます。
私は、相談者の話を聴いているつもりで、聴けていなかったのです。
しかも、相談者の話を聴いている時間よりも、私が話している時間が長くなることもありました。これでは、「いいアドバイスができた」と私は満足しても、相談者が満たされることはないですよね。
頑張ろうとしていたのが間違いでした。
相談者は、限られた時間の中で、自分の話をたくさん聴いてほしかったのです。
今振り返ると、他人が抱える問題を自分ならすべて解決できると思っていたことが恥ずかしいですね。会話の主役は、あくまでも話し手。そのお手伝いをするのが聴き手の役割なのです。
「何を話すか」より「何を話さないか」
この経験を踏まえて言えるのは、会話の準備で必要なのは「何を話すか」ではなく「何を話さないか」だということです。
相手の話を聴いていると、こちらも話したいことがどんどんわき出てきて、いつの間にか「次に何を話すか」で頭がいっぱいになってしまいます。そうなると、聴くことがどんどんおろそかになってしまいます。
これを防ぐためのシンプルな解決策は、「何を話さないか」を準備すること。
慣れるまでは、例えば、
- アドバイスをしない
- 自分のエピソードを話さない
- 意見しない
- 「でも」と言わない
など、簡単な“べからず集”を用意しておくといいでしょう。
もちろん、「アドバイスがほしい」と言われたら答えればいいのです。
これは受容と共感のための初歩の初歩ですが、かなり強く意識しないと、つい自分から口を挟んでしまいます。そしてどんどん会話の心理的安全性を下げていきます。
実践中心のカウンセリングで一線を画し、これまでに8,000人以上の悩みを解決。心理学だけでなく、数多くの経営者やスポーツ選手などへの取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れたメンタルノイズメソッドを開発。カウンセラー養成講座のほか、お金の心理学、自己肯定感、願望実現などの講座を主宰し、延べ受講生は2,000名を超える。
著書『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)がメンタル本大賞2021優秀賞を受賞。そのほか著書多数。
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