独自のビジネスモデルで注目を集めるコラボハウスは、営業マンと常設の展示場を一切持たず、設計士が直接顧客に対応するという異色の体制で事業展開するハウスメーカー。顧客の要望を設計に漏らさないことで高い満足度につなげるのが、営業マンを置かない理由だ。
さらに、人件費や億単位の初期投資がかかるモデルハウスを持たないため、固定費を大幅に圧縮。よって、顧客の資金を家づくりに集中させられるのが、同社を利用する大きなメリットとなる。
コラボハウスの松坂直樹社長に、独自の思想と地方創生を見据えた成長戦略について聞いた。
企業サイト:https://collabohouse.info/
目次
営業と展示場を持たないビジネスモデルの真意
── 営業担当者を置かず、常設の展示場も持たないというスタイルは非常に珍しいと思います。設計士が直接、顧客に対応されるとのことですが、その狙いを教えてください。
松坂氏(以下、敬称略) このビジネスモデルを採用している理由は、大きく分けてお客様目線の側面と、会社の財務的な側面の二つがあります。
まずお客様の側面から見た場合、従来のハウスメーカーのビジネスモデルは、モデルハウスや住宅展示場に来場を促し、契約につなげるというオペレーションが最適化されてきました。しかし、お客様の根底にある思いを形にするのが、難しいという課題があります。
難しさの根源にあるのは、“縦割り”の構造です。お客様と直接触れ合うのは住宅営業ですが、実際に住宅を設計するのは営業からバトンを受けた建築士です。リレーの過程で、お客様の思いやニュアンスがどうしてもこぼれてしまうのです。
結果として、「営業担当者にはこう伝えたのに、実際、建ってみたら違うものができた」といったことが起きてしまう。これは構造的な問題だと考えます。
そこで、建築士資格を持つ設計士が直接お客様と話し、思いをそのまま形に落とし込んでいけば、情報の漏れなく、要望を正確に反映できると考えました。こうして、お客様の満足度を高められます。
次に、財務的な側面です。
営業の人件費がかからず、大きな初期投資が必要となるモデルハウスも持たないため、固定費を大幅に抑えられます。また、土地も保有しませんので、固定資産税がかかりません。費用をお客様が支払う価格に上乗せする必要もなく、家づくりにかけられるコストを増やせて、結果として顧客満足度が高まります。
さらに、固定費を抑えられれば、損益分岐点を下げられます。通常の会社では採算が取れないような契約件数でも、私たちは十分な利益を生めるのです。
これは、地方で生き残るためには合理的な判断であり、大手が撤退するようなエリアでも新規で参入し、高い収益性を保ちながら黒字経営が実現できる要となっています。
「おしゃれでカッコイイ」外観へのこだわりが顧客獲得の鍵
── そのモデルを可能にしている集客の肝は、何でしょうか?
松坂 私たちの集客の肝となっているのは、「施工事例の外観」です。通常、ハウスメーカーの施工事例を見ると、内観の写真が多くなっています。内観を前面に出す会社は、実は外観に自信がない場合が多いのです。
また、家づくりの設計プロセスにも違いがあり、多くの会社ではまず間取りを決めてから外観が決まるという考え方ですが、私たちは最初から外観を意識しながら設計を進めます。特に、道路に面しているなど外部から見える部分のデザインには徹底的にこだわっています。
そして会社のデザインコードとして、きれいに仕上げることを重視。パッと見たときに、「きれいなお家だな」「整ったお家だな」と感じていただけるポイントだと考えています。
施工事例の写真にエアコン室外機など外観を損ねるものを使わない(見せない)ことも、こだわりの一つです。人から見える部分、つまり家の「顔」となる部分を美しく見せることを常に意識して設計。外観へのこだわりが、お客様の目を引き、私たちのモデルが成立している大きな要因です。
── 設計士には、他社と異なるアプローチが求められるわけですよね。設計士を採用する際に重視している点や、伝えていることはありますか?
松坂 私たちが求めているのは、お客様の懐に入り込めるような大らかさと、緻密(ちみつ)な設計の両方ができる人材です。この相反する能力を両方持つ人材を見つけるのはなかなか難しいので、どちらかの思考を持っている人材が、もう一方の能力を伸ばしていけるポテンシャルを持っているかを見ています。
特に重視している価値観は、縦割り構造に課題意識を持っているか、です。
たとえば、営業が契約して終わりではなく、お客様からいただいた意見や気持ちをさらに反映させていきたい、しかし、それができないというもどかしさを感じている設計士。あるいは、お客様の顔も見ずに、営業からの申し送りだけで図面を書いていて、「本当にお客様のためになっているのだろうか」という疑問を感じている設計士。
そういった人々に、より幅広く仕事ができる環境を提供できると考えています。価値観の一致は、非常に重要視しています。
入社した社員が驚く「考え方」の共有
── 育成や研修で工夫されている点はありますか?
松坂 私たちは「考え方研修」を非常に重視しています。これは、会社の思想を社員間で共有し、思考を揃えるために不可欠な研修です。
その上で、スキルは研修やOJTで習得するものですが、持って生まれたやる気や向上心といった部分は、変えたり育てたりが難しい。この「ベクトル」を合わせることに、私たちは丁寧に時間をかけています。
── その「考え方研修」は、どのように社員に浸透させているのでしょうか。
松坂 新たな入社者には、必ず研修を実施します。中途採用、新卒採用問わず、年に3〜4回、トピックを変えながら継続的に行っています。こうした研修により、自然と会社の考え方が浸透するのです。
最近入社した中途社員からは、「社長の話、他の取締役やエリアマネージャーの話、すべて同じですね。それがすごいと思います」と言われました。この言葉を聞いて、私たちの考え方が浸透していると実感しました。同じ話を何度も繰り返し伝えることが、浸透の鍵だと考えます。
インスタグラムでの「先行者利益」を確保
── 今後の事業拡大における再現性について、特に進出地域を拡大する際の選定基準や重視されている点は何でしょうか?
松坂 拡大で最も大切にしているのは、「大都市圏ではなく、中小規模の地方」であることです。具体的な数字の閾値もありますが、私たちの強みが最も生かせるエリアは大手の裏をかく戦略がはまる中小圏だと考えます。
大手ハウスメーカーが苦手とするエリア、たとえば四国のような地域や、住宅市場が縮小傾向にあるようなエリアは、私たちにとっては勝ち筋がある地域です。大手が撤退して競争が生まれにくくなり、デザイン性が強い会社が少ないという状況が生まれます。
このような競争が落ち着いているエリアに私たちが参入すれば、優位性を築けます。競合が少なく、同じような思想を持つ会社が少ないエリアを狙うのが基本戦略です。
── そのような地域で、施工パートナーはどのように開拓されているのでしょうか。
松坂 現地で開拓しています。これが非常に大変な部分です。
コラボハウスの施工管理は徹底しており、報告関連もデジタル化を進めています。職人さんたちにもデジタルの入力に慣れていただく必要があり、説明会を開きながら丁寧にコミュニケーションを取る必要があります。職人さんの中には、新しいやり方を面倒だと感じる方もいるからです。
しかし、安定的に受注できるというメリットを伝えると、職人さんたちも「面白い」と感じられる方が多くいます。安定した受注と一年間のスケジュールで仕事を続けられる環境の提供が、パートナーシップを築く上での肝です。
── デザイン性や拡大戦略に加え、マーケティング機能も強みの一つです。特にインスタグラムでの発信に力を入れられているようですが、戦略について教えてください。
松坂 インスタグラムは、広告チャネルとして非常に強いです。今ほどインスタグラムでのマーケティングが激戦になる前からアカウントを開設し、活動を続けてきたことで、約8万8000人(2025/12時点)のフォロワーを獲得できました。
今から同じようなフォロワー数を獲得したり、同様の効果を生み出すのは非常に困難であり、先行者利益は大きいと考えています。
マーケティング機能の強化は、私が社長に就任してから、特にこだわったポイントの一つです。集客があれば、すべての歯車がうまく回ると実感しました。前職でマーケティングの経験もあり、東京で培ったマーケティングの作法を丁寧に実践しています。
現在では、マーケティングで20年のキャリアを持つベテランも執行役員として仲間に加わり、さらに強化しています。集客力が、私たちのビジネスを支える基盤です。
「選択を正解にする」姿勢でさらなる事業展開へ
── 社長就任後、経営理念の策定にも力を入れたそうですね。
松坂 はい。会社のミッション、ビジョン、バリューといった経営理念をしっかり定めることに、力を入れました。集客の強化、経営理念の策定、そして人事制度の整備。この三本柱が、私たちの改革の核となっています。
── 社長という役割を担うにあたり、特に重視している点はありますか?
松坂 社長になったきっかけは、過去の失敗体験にあります。当初はコンサルタント業務の延長線上で仕事をしてしまい、業務改善やオペレーション変更に注力していましたが、会社がどこに向かうのかという不安が社員の間で広がり、思ってもいない噂が立ち始めたのです。
そのときに、自分がこの船の進むべき方向性を明確に示さなければ、社員は不安になるばかりだと痛感しました。
そこで、会社のミッション、ビジョン、バリューを明確に定義し、コラボハウスというブランドが大切にすべきことを言葉にして発信する重要性を、認識しました。結果、社員の不安を払拭し、共通の目標に向かって進めるようになったのです。
── 働きがいのある企業認定を受けられたとのことですが、従業員の反応や評価は?
松坂 働きがいのある会社認定の発表時には、ガッツポーズをしている社員の姿を見て、コラボハウスという会社に誇りを持ってくれていると実感しました。
この認定において、従業員が「責任ある仕事を任されている」「経営者は社員を信用している」「自社のプロダクト・サービスに誇りを持っている」という三つの点で、他社より優れているとの評価を受けました。
これは、私たちが大切にしている行動指針「すべての友人のために」が、そのまま表れた結果だと感じています。行動指針のもとにあるのは、目の前のお客様が大切な友人であったときに、同じ行動を取れるかと常に考えながら一人ひとりが判断・意思決定する思想です。
無理のない資金計画の提案や、不要なオプションの提案をしないといった、お客様にとっての最適な提案によって、社員は自信を持って仕事ができ、私たちも社員を信頼して仕事を任せられます。
この信頼関係が、「働きがいのある会社」認定につながったのだと思います。
今後は、従業員がコラボハウスで働いていることに、より一層誇りを持てる会社にしていきたいです。友人や家族に「いい会社で働いているね」といってもらえるよう、働く環境の整備や会社としての魅力向上に注力します。
── 今後、数年間のマイルストーン達成に向けて、ご自身の役割として特に意識されていることは何でしょうか。
松坂 採用と定着です。この一年間、経営体制の変更に伴い退職者もいましたが、同時に中途採用、新卒採用は非常にうまく進んでいます。私たちのビジョンに共感してくれる仲間が増え、新しい仲間たちにコラボハウスのやり方を早く学んでもらい、共に成長していきたいです。
新卒・中途で入ってくれた新しい仲間をいかに立ち上がってもらうかが最も重要です。そのため、研修プログラムや個別の面談、キャリアサポートに力を入れています。
── 今後の成長に向けたM&Aや業務提携も含めた戦略があれば教えてください。
松坂 私たちは基本的に長期借入を行っておらず、自己資本比率が高い会社です。そのため、現時点ではデットで何かを行うという考え方はありません。資金の回転率を生かし、自己資金で進めるのが基本的な考え方です。
しかし、私たちのビジョンである「Next LOCAL, New LIFE」、すなわち地方創生と会社の成長を一体ととらえ、地方に新しい人の流れをつくるためには、自己資本だけだと限界があると考えています。
たとえば、愛媛エリアの瀬戸内のような魅力的な景観を持つ地域で、ヴィラのような施設をつくり、そこでしかできない体験を地域企業やスタートアップと巻き込みながら提供するアイデアがあります。これには莫大な資金が必要です。
将来的には、別会社を設立したり、不動産をトークン化して投資商品として販売するスキームなど、新しい資金調達のあり方を探りたいと考えています。自治体とも連携しながら、数年をかけて実現を目指す計画です。
愛媛大学と連携し、学生のインターンシップや共同研究などを通じて、地域の未来を共に考えていきたいとも思っています。
── 松坂社長個人が持つ、理念は何でしょうか?
松坂 私が大切にしている考え方として、メガネブランド・オンデーズの田中修司さん(取締役会長)がおっしゃっていた「選択そのものに意味はない」という言葉があります。コラボハウスを選ぶことが正解で、それを選ばないことが不正解、ではありません。
自分で決めた選択を正解にするためには、努力の継続が大切なのです。この一年間、苦しいこともありましたが、自分でこの道を選んだ以上、それが実現できるまでやりきりたいと思っています。
- 氏名
- 松坂直樹(まつさか なおき)
- 社名
- 株式会社コラボハウス
- 役職
- 代表取締役

