株式会社ツナググループ・ホールディングス

株式会社ツナググループ・ホールディングスは、アルバイト・パート・エッセンシャルワーカーに特化したRPO(採用業務代行)・採用コンサルティング事業を核に成長を遂げた企業だ。とりわけ「アンチプロダクト」というビジネスモデルで顧客のニーズを最適化し、また売上高100億円突破まではあえてミッションやビジョンを掲げないことで市場の変化に対応したことが成長の要因であると、社長の米田光宏氏は語る。

さらに、これから起こる「2030年労働需給ギャップ」という日本の社会課題解決に向けた未来戦略について、米田氏に具体的な取り組みを聞いた。

米田光宏(よねだ みつひろ)──代表取締役兼執行役員社長
1969年、大阪府生まれ。リクルートグループでアルバイト・パート求人メディアの営業、商品企画、営業企画、マーケティングなどを経て、アルバイト・パート領域の事業企画責任者を経験。2007年にアルバイトに特化したRPO(採用代行業務)を提供する株式会社ツナグ・ソリューションズ(現株式会社ツナググループ・ホールディングス)を設立。
株式会社ツナググループ・ホールディングス
2007年、設立。「2030年労働需給ギャップ」という日本の社会課題解決を掲げ、RPO(採用業務代行)・採用コンサルを中核に、人材サービスを提供。参入障壁の高いアルバイト・パート市場で、全国支援体制を構築し事業化。118社との協業・提携と17万3000事業所・346万人分の応募効果データに基づく提案を行う。
企業サイト:https://tghd.co.jp/

目次

  1. 独自モデル「アンチプロダクト」とは?
  2. 100億まではあえてミッション・ビジョンを掲げない
  3. M&Aと持株会社化で最も重視した「人」
  4. 今後、人材市場で起こり得る「循環型採用」とは?

独自モデル「アンチプロダクト」とは?

── 2019年に売上高が100億円を超え、直近の2025年9月決算は売上高約183億円でした。成長の要因を教えてください。

米田氏(以下、敬称略) 一般的に人材業界の企業は、ホワイトカラーやIT分野、あるいは、人材紹介や派遣などを手掛けていますが、当社はアルバイト、パート、エッセンシャルワーカーという領域に特化しています。

さらに、当社は「アンチプロダクト」という考え方を採用しています。これは、自社でプロダクトを持たず、企業にとって最適な採用手段を組み合わせることを重視する姿勢です。

金融業界にたとえると、保険の窓口やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)のように、外部の多様な人材サービスと協業・提携することで、お客様に最適な採用ポートフォリオを提供します。

自社でプロダクトを持つと、どうしても提供できる選択肢が限られてしまいますが、当社は中立的な立場で、お客様のニーズに最も適したサービスを組み合わせることを強みとしています。

このビジネスモデルを支えるのが、膨大なデータです。年間約346万人分の応募効果データと、17万3000事業所のデータを18年以上にわたり蓄積してきました。これにより、人の流れや職種、地域といった詳細なデータベースができ、最適なポートフォリオ作成に生かします。

この「他社がやらない領域で、他社とは違うやり方で」という点が、当社の大きな差別化要因です。当社の成長の源泉も、他社と異なることをしてきた点にあると考えています。

── 売上高100億円を達成するには、業績を残し続けることが重要だと思います。事業の再現性という点では、どのように成長へ結びつけているのでしょうか?

米田 成長には必ず背景が必要です。当社の場合は「人手不足」がその背景にあります。採用課題が事業課題にまで昇華されている現状で、採用に困っている企業が多く存在する。これが成長の大きな要因です。

しかし、時代の要請に一つのプロダクトやサービスで長くこたえ続けるのは難しい。たとえば、コロナ前は有料求人広告の組み合わせが中心でしたが、コロナ禍を経てウェブリテラシーが向上し、オンラインでの採用活動が主流になりました。

さらに最近では、インフレや物価高に対応するため、働き方としてスポットワークが注目されています。このように、世の中の潮流をとらえ、ポートフォリオの中身を適切なタイミングで組み替えていくことが、成長を持続させる上で重要でした。

ポートフォリオの組み替えを適切なタイミングで行えるのは、先ほど申し上げた300万人規模のデータを常に分析しているからです。金融商品のインデックスが常に同じ銘柄で構成されないように、市場のニーズに合わせてポートフォリオを組み替えることが、当社の強みとなっています。

そして100億円という規模になると、組織論が非常に重要になります。10億円や30億円までは社長個人の力で達成できる部分もありますが、100億円を超えるには、一定の役割分担と組織体制が不可欠です。そのため、組織に対する考え方をフェーズごとに変えていく必要がありました。

100億まではあえてミッション・ビジョンを掲げない

── 社長自身の、100億円という壁の突破へ向けた取り組み、行動は何でしょうか?

米田 私は、100億円までは「ミッションやビジョンを設定しない」ということを意識していました。

社会を変える仕事と、社会のためになる仕事があるとすれば、当社は後者です。社会のニーズへの対応が重要であり、自分たちがやりたいこと(ミッションやビジョン)を前面に出しすぎると、変化に対応できなくなる恐れがあります。

社会が変化すれば、私たちも変わらなければなりません。変化に対応するために、あえて固定的なミッションやビジョンを設定しないようにしました。

── 100億円を突破してからは、ミッション・ビジョンを策定されたのでしょうか?

米田 はい。100億円を超えると、市場や顧客だけでなく、働く人々全体を見る必要が出てきます。従業員が組織にロイヤルティを持ち、共通の概念を共有することが不可欠です。また、新卒採用などでは「この会社は何を目指しているのか」という言語化されたビジョンが求心力となります。

そこで当社は、100億円を超えたタイミングで、日本の社会における「『労働需給GAP』解消の大いなる一助になる」というビジョンを掲げました。これは「社会課題解決カンパニー」を目指すという意思表示であり、従業員の求心力につながっています。

M&Aと持株会社化で最も重視した「人」

── 100億円達成までのターニングポイントとして、M&Aを挙げられています。M&Aでは、どのような考えがあったのでしょうか。

米田 M&Aは、単にお金で会社を買うのではなく、文化の融合によりシナジーを生み出すものだと考えています。100億円を目指す、あるいは、超えるタイミングでは、M&Aに対する考え方を大きく変える必要がありました。

特に重視しているのは「人」です。つまり、ビジネスモデルや事業内容以上に、M&Aで最も重要なのは人材だと考えています。

100億円を超える規模になると、組織対応が必須であり、その達成者は人間です。自社の人間だけで事業を進めると同質性が生まれますが、M&Aによって多様な文化や考え方を持つ人々が融合することで、既存事業へのアンチテーゼや新たなアイデアが生まれます。

現在、経営会議のメンバーの多くは、M&Aでジョインした企業の出身者です。多様性や異なる歴史の中で培われた気づきが、新しい人材の採用や事業の変革対応に不可欠だと考えています。

── 2017年の上場や、その後の持株会社化といった意思決定についても、教えてください。

米田 上場は目的ではなく、あくまで手段です。当社は自社プロダクトを持たず、他社のサービスを組み合わせることでお客様に最適なポートフォリオを提供します。その上で、他社の人材サービスから求められるのは「透明性」と「公平性」です。

上場は、これらの独立性や健全性を外形的に示す最も分かりやすい手段でした。また、企業規模を拡大させ、多くのパートナーと手を組む上で、東証一部市場に上場(当時。現在は東証スタンダード市場上場)していることは、パートナーにとって安心できる証となります。

持株会社化については、上場と同時に組織体制を強化し、売上を残していくための体制づくりが前提にありました。その中で、従業員一人ひとりが株主として会社にコミットすることが重要だと考えました。

そこで、退職金制度を廃止し、その原資を従業員に渡し、自社株を購入してもらう形を採ったのです。これにより、従業員でありながら株主でもあるという状態となり、会社へのロイヤルティを高めました。

従業員と株主は利益相反する側面もありますが、従業員に株主となってもらうことは、二重の意味でのステークホルダーとして会社を形成し、成長の原資になると考えたのです。

今後、人材市場で起こり得る「循環型採用」とは?

── 日本全体の労働需給と、その中でのツナググループ・ホールディングスの立ち位置をどのように考えていますか?

米田 労働力不足といわれながらも、実は労働力人口は減っていません。これは非正規雇用者の増加によるものです。しかし、今後は労働力人口自体も減少していくため、人手不足や労働需給ギャップの解消は、これからの5年間で一層求められるでしょう。

人材セクターの市場環境は、労働力人口の減少に伴い縮小傾向にありますが、サービス業や医療・介護分野では、AIやロボットによる生産性向上だけでは解消できない人手不足が深刻化しています。今後、労働市場は「集めて選ぶ」から、「継続して長く働いてもらう」「タレントとしてプールする」といった循環型採用へとシフトすると考えられます。

当社は、この循環型採用を支援するため、タレントプールや外国人材の活躍支援といった新たなマーケットに注力したいと考えています。これまで培ってきた300万人規模のデータ活用頻度と効果は、正社員マーケットに比べて流動性の高いアルバイト・パート市場で特に高い価値を発揮します。

このデータを生かし、「集めて選ぶ」ポートフォリオから、「選んでもらって、貯めて、利活用していく」ポートフォリオへと大胆に組み替えていく提案を、今後5年間で積極的に行っていきたいと考えています。

── 次の10年に向けた、社長個人のビジョン、あるいは会社としての経営者としてのビジョンを教えてください。

米田 「社会課題解決カンパニー」として、これまでタッチできていなかった地方自治体や行政との連携を強化し、働くことと生活の場面をつなげることを目指します。

特に外国人材の活躍においては、単に人手不足を補うだけでなく、家族の生活や子どもの教育といった側面まで支援していくことが必要です。たとえば、茨城県境町や神奈川県横浜市と連携し、外国人材の受け入れ支援や、高齢者の社会参画を促す取り組みを進めています。

働くことと生活の境界線が曖昧になっていく中で、働く人だけでなくその家族も含めて、ワークとライフが一体となった持続可能な社会の実現に貢献できるような、そんな10年にしたいです。地方自治体や行政と協働し、社会課題解決の「レバレッジ」となれるような存在を目指します。

氏名
米田光宏(よねだ みつひろ)
社名
株式会社ツナググループ・ホールディングス
役職
代表取締役兼執行役員社長

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