株式会社文教

株式会社文教の代表取締役社長である出森慎一氏は、親会社の総合メディカルグループ株式会社から出向し、コロナ禍の2022年には営業部長からトップへ就任した。

同社は病院内でのコンビニ・飲食店運営と入院サービスを統合した「トータルパッケージ提案」を強化し、患者と病院双方に過ごしやすく効率的な環境を提供する。出森氏に、コロナ禍での組織改革とDX推進、そして今後の事業戦略について聞いた。

出森慎一(いでもり しんいち)──代表取締役社長
1980年、福岡県出身。2002年、熊本学園大学経済学部卒業後、総合メディカル株式会社に入社。長崎支店・福岡支店での現場経験を経て、2015年、鹿児島支店長に就任。2021年、株式会社文教へ出向し、営業部長を経て2022年に同社代表取締役社長就任。2025年、総合メディカル執行役員に就任。
株式会社文教
1983 年、設立。病院内コンビニ・売店・飲食店運営と入院サービスを事業とし、それを統合した「トータルパッケージ提案」を行う。
企業サイト:https://bunkyo-smg.co.jp/

目次

  1. 経営者交代で改革を断行、組織力を強化
  2. デジタル化推進でホスピタリティを向上
  3. 他社が撤退する中、どうコロナ禍を乗り越えたのか
  4. パッケージ提案で400床以下の病院への出店も視野に
  5. 愛される会社をつくり売り上げ200億円突破を目指す

経営者交代で改革を断行、組織力を強化

── 病院内での売店運営などを事業としていますが、詳細を教えてください。

出森氏(以下、敬称略) 文教は総合メディカルグループの一員として、病院内でのコンビニ・売店・飲食店運営と入院サービスを統合した「トータルパッケージ提案」を強化しています。創業以来、患者様には「安心」を、病院職員様には「本来の業務に専念できる環境」を提供し、地域医療に貢献する会社です。

── 出森社長のこれまでのご経歴について教えてください。

出森 私は2002年に総合メディカル株式会社(現総合メディカルグループ)に入社いたしました。長崎支店、福岡支店での現場経験を経て、2015年に鹿児島支店長に就任し、長年にわたり営業畑で実績を積んでいます。

その後、2021年に株式会社文教へ出向し、営業部長を経て2022年には同社代表取締役社長に就任しました。営業から経営へと、キャリアの幅を広げています。

── 社長就任時は、ちょうどコロナ禍の真っただ中でしたね。

出森 ええ、まさにコロナ禍の最中でした。何をやっても厳しい状況で、病院への来院者数も減少し、非常に大きな打撃を受けました。そのような状況下で、「個から組織へ」という企業カルチャーの改善を行っています。

── その背景やどのように進められたのか、また1800名を超える従業員の管理についてどう行っているのか、教えてください。

出森 総合メディカルから文教へ来た当初の印象は、正直なところ「個人商店」の集まりでした。会社として組織化できておらず、デジタル化も進んでなくペーパーベースで、社長決裁ですべてが決まるような状態でした。

また、かつてはオーナー経営者一人で物事を決めていたので、社員のやる気ややりがいを引き出すことが難しかった側面があります。その後、経営がオーナーから総合メディカルグループに代わったものの、管理部門が弱いという課題がありました。

そこで、管理部門と営業部門を強化しています。事業と管理の両輪で回すという考え方は、現在も変わっておりません。

── デジタル化を進めるにあたり、人的な接点が失われることへの懸念はありましたか?

出森 一人が決めてきた事業体であったため、むしろ懸念するよりも個人のやりがいやモチベーション向上に重点を置きました。一人ひとりの社員のやりがいをどう引き出すかが重要でした。

具体的には、頑張っている人をきちんと褒めることを重視し、みなが認められることで気持ちよく働ける環境づくりに注力しています。

デジタル化推進でホスピタリティを向上

── DXや夜間無人運営といった技術的な側面ときめ細やかなホスピタリティとの両立について、どのようにバランスを取っていますか?

出森 当初は無人化を目指していましたが、商品の陳列などを考えると完全な無人化は難しいと判断しました。そこで、「人に何をやってもらうべきか」を考えるようになりました。現場では、商品の陳列方法の工夫など素晴らしい取り組みが行われていましたが、それが共有されていなかったのです。

そこで、ディズニーの「オープンドアポリシー」にならい、現場の取り組みを可視化し、共有することを重視しました。今では、現場から感謝の声が上がるようになり、文教の強みとなっています。人が本来行うべきホスピタリティを大切にしつつ、デジタル化を進めている点が、文教の強みだと考えています。

── 省人化によって生まれた余裕がホスピタリティにつながり、それが全社に広がるという好循環が生まれているのですね。

出森 はい。また、コミュニケーションツールとして、全店舗にiPadを導入し、Slackのようなコミュニケーションツールを活用できるようにしました。以前は紙でのやり取りが多く、書類が溜まることもありましたが、これらをデジタル化することで業務効率が向上しています。

社員が「会社が変わっていく」という実感を持てたことが、2022年から2024年にかけての大きなポイントです。

他社が撤退する中、どうコロナ禍を乗り越えたのか

── コロナ禍においては、病院との直接交渉や不採算事業の整理など、厳しい決断も必要だったと思います。どのように乗り越えましたか?

出森 各病院と綿密なシミュレーションを行い、現場の納得を得ながら進めました。当初は半分程度の病院でしか合意を得られないのではと考えていましたが、結果として3分の2の病院にご理解いただき、乗り越えられました。

他の企業が病院との関係悪化で撤退する中、われわれは病院を怒らせないコミュニケーションを心がけています。

── 具体的にはどのようなアプローチを取られたのでしょうか。

出森 コロナ前は、レストランの赤字をコンビニで補てんするというスキームでした。しかし、コロナ禍で両事業が悪化しました。

そこで、撤退ありきではなく、賃料の見直しや新たな事業の追加などを含め「こういうことをしてもらえないか」と病院に提案しています。

その結果、なんとか生き延びることができました。新事業の追加については、病院との交渉は進みましたが現場への浸透には時間がかかりました。

しかし一件一件、丁寧に医療機関と現場の営業担当者が交渉を進めたことが、良い方向に向かった要因だと考えています。

── その交渉がうまくいった背景には、日ごろの現場のホスピタリティも影響していたのでしょうか?

出森 そうですね。日ごろからの病院との良好な関係が、状況を助けていると感じます。

── 社長自身も毎年200店舗近くを訪問していますが、その際に店舗の状況をどのように見ていますか?

出森 コロナ禍当初は、商品の陳列状況を見ていました。たとえば、ラベルがすべてこちらを向いているかなどです。そのような細やかな工夫ができる社員は、翌年にはマネジメント層に引き上げました。

このような社員たちが積極的に仕事をしてくれたことが、コロナ禍でも店舗を活性化させる大きな力となりました。

パッケージ提案で400床以下の病院への出店も視野に

── 今後の事業戦略について、売り上げ200億円、EBITDA10億円を目指す上で、どのような戦略を考えていますか?

出森 店舗数の拡大は継続しつつ、入院から退院後までシームレスなシステムを構築し、患者に快適さを提供したいです。たとえば、サービスの申し込みフォームからの手続き、入院中のタブレットでの動画視聴、退院後の日用品購入など、一気通貫で利用できる仕組みを構築します。

これは今年の目標であり、すでに動き出しています。現在のビジネスはBtoBですが、実際にご利用いただくのはBtoCのお客様です。退院後、お客様はドラッグストアや他の安価な店舗へ流れてしまいますが、入院中から使い慣れた商品を退院後も購入できる仕組みをつくりたいです。

病院内に深く入り込んでいるわれわれだからこそ、実現できると考えています。

── ローソンカー(ローソンブランドの移動販売車)の導入についても教えてください。

出森 今後10年で買い物難民が増加すると予測しており、特に地方や病院周辺での買い物環境の整備が課題です。

北九州で始めたローソンカーは、地域の方々が買い物に行けなくなる将来を見据え、こちらから出向く仕組みとして始めました。地域ごとに戦略は異なりますが、地域貢献したいという思いがきっかけです。

総合メディカルグループとして、医療機関だけでなく地域の方々に役立つビジネスを展開したいと考えています。

── 先ほど話のあった「トータルパッケージ提案」をどう実現しているのでしょうか?

出森 レストラン、コンビニ、入院サービスといった複数の事業をパッケージで提案できる企業は、他にほとんどありません。売店運営も物価や人件費の高騰で以前ほど容易ではありませんが、他の業態を組み合わせることで病院の要望に応えることができます。

特に、職員食堂で500円という低価格での食事提供を求める病院に対し、他の事業と組み合わせることでリスクなく提案できることが、われわれの強みです。

── 日本の高齢化は社会課題ですが、病院という場でのビジネスはニーズが増し、追い風になりますか?

出森 病院自体は減少傾向にありますが、400床以上の病院は依然として多く、コンビニを出店できるポテンシャルはあります。さらに、400床以下の病院にもコンビニを出店できるような状態をつくり出せれば、まだまだ市場は拡大できそうです。

パッケージ提案により、コンビニだけでなく他の事業体も同時に提供できる環境が、現在の追い風となっています。

愛される会社をつくり売り上げ200億円突破を目指す

── 経営者として、難しい判断を下す際の基準や大切にしている考え方について教えてください。

出森 私が大切にしている言葉は三つあります。「創意工夫」「自助努力」「感謝」です。

まず「創意工夫」は、みなで知恵を出し合い、そして多くの人から知恵を得て事業を進めることです。

次に「自助努力」は、親会社からの支援が難しい状況下で、自分たちで何とかするという意識。既存ビジネスに満足せず常に新しいものを開発していく姿勢が、成長を続ける原動力となっています。

そして「感謝」は、社員やパートさんへの感謝の気持ちを常に持ち続けることです。私の父も「感謝」を大切にしており、私もその教えを受け継いでいます。

最終的には、社員の家族が「この会社に入ってくれて良かった」「楽しそうだね」と思えるような会社にしたい。この三つが、私の原点であり今後の成長の基盤となると信じています。

── 従業員を大切にする姿勢が、成長につながっているのですね。

出森 はい。店舗訪問も、ビジネス的な観点だけでなく、社員への感謝の気持ちを伝える機会でもあります。良いサイクルが生まれており、現在の成長につながっていると感じます。売り上げ200億円突破も、決して不可能ではないでしょう。

氏名
出森慎一(いでもり しんいち)
社名
株式会社文教
役職
代表取締役社長

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