本記事は、菊原 智明氏の著書『マネジャーの心得』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

マネジャーの心得
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

クライアントから話を聞くように部下の話を最後まで聞く

マネジャーとしてチームを動かし、結果を出すにはチームの人間関係が良好な状態である必要があります。しかし実際は、部下の話を最後まで聞かず、自分の経験や結論を先に押し付けてしまうマネジャーが意外と多いものです。本人には悪気がなく「こうすれば間違いない」と良かれと思っての行動です。そこに落とし穴があるのです。

知人のAさんはある会社の企画部のいち社員です。Aさんが、新規プロジェクトの方向性をマネジャーに相談したときのこと、「この企画案なのですが、このリスクが気になります」とAさんが話し始めた途端、マネジャーは「いや、そんなことは問題じゃない。心配ならこうしたほうがいい」とすぐに口を出し始めたそうです。
Aさんは続きを話そうと思いましたが、マネジャーの意見に圧倒され、結局何も言えずに終わったと言っていました。そして、「うちのマネジャーはいつも話を聞いてくれない」と嘆いていました……。

このように話を最後まで聞かないマネジャーは少なくありません。こうなると、話しをした相手(部下)は「自分の意見はどうせ聞いてもらえない。結局上司が決めるから」と思うようになります。やがては誰も相談などしなくなりますし、報告なども表面的なものだけになるのです。
一度こうした状況になると、どれだけマネジャーが有能でも、チームは機能しなくなります。部下の成長がとまり、チームの成績も落ちていくでしょう。ですから、話を最後まで聞くなんて当たり前だ、と思っている人こそ注意すべきです。

私が、営業スタッフ時代のことです。
お客様との商談がうまくいかず悩むこともありました。私はマネジャーに「このお客様なのですが、競合も多く、あまり乗り気じゃない感じでして」と相談します。すると、そのときのマネジャーは「大丈夫、菊原の熱意が伝わればなんとかなるから」といったようなことを言われたものです。
一見、何の問題ない言葉に聞こえます。しかし、私が求めていたのは「どうしていいか分からないから、どう進めるか一緒に考えてほしい」ということでした。それを「まぁ、頑張れよ」と励ましだけで終わりです。こうして、ますますどうしていいのか分からなくなっていたのです。
ただし、だからと言って「そうか、お客様が乗り気じゃないんだな。そのときは、こうして、ああして」とすぐに指示を出すのも危険です。
ここで大切なのは、マネジャーが「答えをすぐに出さない」ことです。部下が自分の中で考えを整理し、解決の糸口を見つけられるように導くのがマネジャーの役目です。
例えば、「なるほど、どんな点が一番心配なのかな?」と問い返すだけで、部下の思考は深まります。
この深堀りが部下を主体的に動かす第一歩になるのです。
部下の話を最後まで聞くことで、思考や価値観、隠れた悩みを知ることで、指導の精度が格段に上がります。

「どうしてこの提案をこう考えたのか?」
「このやり方にこだわる理由は何か?」
話を最後まで聞くことで真意を理解し、部下に合った最適なサポートができるようになります。こうなれば部下の能力が上がり、チーム力も上がっていくのです。

部下はマネジャーに「しっかりと最後まで聞いてもらえた」と感じると前向きになり、モチベーションが上がります。「このマネジャーのために結果を出したい」と思ってくれるのです。
逆に「話を途中で遮られた」と感じるとモチベーションが下がり、やる気を失います。部下の話を最後まで聞くことは、単なるマナーではなく、チーム力の底上げになるのです。
ここで話を最後まで聞くための三つのステップを紹介します。

  1. とにかく遮らずに最後まで聞く
  2. 核心を掘り下げる質問をいくつか入れる
  3. 部下の意見を受け止めたうえで次の行動に導く

このステップを意識するだけで、今までの何倍も話が聞け、その部下にマッチした指示ができるようになります。
また部下の話を聞くときには、姿勢や表情、相槌も大事です。うなずくだけで部下は「聞いてもらえている」と感じます。
お客様、クライアントにヒアリングするように真剣に話を聞きましょう。こうした小さな積み重ねが、チーム力を上げ、大きな成果につながるのです。

マネジャーの心得
菊原 智明(きくはら・ともあき)
営業サポート・コンサルティング株式会社代表取締役、関東学園大学経済学部講師、一般社団法人営業人材教育協会理事、営業コンサルタント。
群馬県高崎市生まれ。群馬大学機械科卒業後、トヨタホームに入社。その後7年間、苦しい営業スタッフ時代を過ごすが、お客様へのアプローチを訪問から営業レターに変えたことをきっかけに4年連続トップ営業となる。約600名のなかの営業トップとなり、社のMVPを獲得。2006年に独立し、営業サポート・コンサルティング株式会社を設立。現在は、経営者や営業向けのセミナー、研修、コンサルティング業務を行い、これまで15,000名以上を指導。2010年より関東学園大学講師も勤めている。

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