本記事は、瀧澤信氏の著書『マネーの真相 世界を動かした「欧米300年のルール」の終焉』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
富を持つ者だけがすべてを得る「人の幸福度」まで奪っていく欧米ルール
17世紀に生まれた西欧のルール、その後に覇権国家がアメリカに移って変容した欧米のルールは、もはや300年の賞味期限を迎え、新しい時代への局面を迎えています。
そこで、私たちは今、どんな時代を迎えているのか。そして未来はどうなっていくのか。そんなことを念頭に、未来の世界を想像すべく私たち1人ひとりができることを一緒に考えていければと思います。
300年前から作り出された現代的な西欧のルールは、根底においてデカルト思想とニュートン思想が強く影響していることを見てきました。しかし、とくにデカルトの考え方は、自然を下等に位置付け、ニュートンの考え方は数学至上主義ともいうべきものでした。そこに、矛盾や不確かさ、考え方の誤りを感じざるを得ないことを述べてきました。
システムの根底や出発点にある考え方に問題があるということは、システムそのものの方向性やあり方にも問題がある、と考えるべきでしょう。その結果が、必ずしも人々が幸せになっていないというところに、実際に現れてきていると私は思います。
ここに1つのデータがあります。産業革命によって、世界中の人々の所得水準が劇的に上がり、同時に1人当たりの平均寿命も格段に延びたことによって、みなが幸せになった、とするグラフです(上図参照)。
たしかに、数字はまったくウソをついていませんし、この通りなのでしょう。しかし、人々は本当にここに示されたデータだけをもって、幸せになったといえるのでしょうか。
このデータでは、1人当たりのGDPと平均寿命を代表的な数字的証拠として採用しているわけですが、これらを違う切り口で見てみるとどうでしょう。
1つはGDPに関する次のデータです(下図参照)。
これは、世界の国民所得の約7割を、人口上位10%の人々が独占しており、中間層の上位11%から50%で約25%、そして下位50%の人口はたったの8.4%しか得られていないということを指摘しています。
つまり、全体を平均化した数字を見ても実態はとらえることができず、実際には現在のシステムは一部の富裕層を形成することには成功したものの、全体最適を実現できていないことを示しています。
そして、もう1つのデータである平均寿命についても、異なる見方をしてみる必要があると考えています。
たしかに、医療技術の向上もあと押しして平均寿命は昔に比べて格段に延びたことは事実でしょう。しかし、寿命を終える内容について見ていくと、違う構図が見えてくるように思います。
次のデータは、警察庁が発表している自殺者数の推移です(上図参照)。
このデータによれば、足元で自殺者数が増加しているものの、ここ数年の
次のデータは、年齢別の自殺者の原因に関する厚生労働省のデータです(下図参照)。
ここで注目すべきは、10歳から14歳の自殺が3位に入り、15歳~39歳の現役世代の死亡要因は、常に自殺が1位となっているという点です。
全体としての死因は悪性新生物(いわゆるガン)が多いわけですが、それは相対的な人口が多い高齢者のことであって、若い世代においては異なるということです。現役世代の自殺者が減らない実態こそ、人々の幸せを実現できていない社会システムの欠陥ではないか、と私は考えます。
ここで「人間の脳の特性」について、少し触れておきたいと思います。
脳科学者の大橋力氏によれば、人間の脳はある特性を持っています。それは「適応」という能力で、人はさまざまな環境に常に「適応」して生きていく特性を持っています。実際、私たちも実感として新しい学校や新しい職場に入ると、少し時間をかけながらその環境に慣れていき、いずれはそこに適応(同化)していく体験を持っていると思います。
脳科学的に、この「適応」をもう少し詳しくいえば、たとえば本来あまり聞きたくない音が気にならなくなったり、きつすぎる臭いに対して感じにくくなったりと、五感に関して、いい意味で「鈍感」になるような適応を人間の脳は半自動的に行っています。
これは、精神的な部分でも同じようなことが起こっており、嫌なことは時間が経てば忘れていく、というのも人間の脳が持つ独特の「適応」の一種だと考えられています。
ところが、大橋氏によると、この「適応」にもキャパシティがあり、あまりにも適応すべきことが多すぎると、ある時点で「適応限界」に達するといわれています。
仮に、「適応限界」に到達するとどうなるかというと、これもほかの動物に見られない人間特有の機能として「自己解体プログラム」が始動するといいます。適応限界に対応するために、自己の生命を自ら停止するプログラムを人間はあらかじめ持っており、それを最終手段として発動させるというのです。
とくに、人間が本来心地よく生きていられる環境ではないところに長く居続けると、この適応限界を迎えてしまうと考えられています。
このことを前提に考えた場合に、若年現役層の死亡主因が自殺であり続けることの背景には、今私たちが生きている社会のあり方が、とくに現役世代にとって非常に生きにくい、適応しがたい、言い方を換えれば、我慢しなければならない事柄が多すぎる環境下にあり、それが多くの適応限界を誘発しているのではないかと考えられます。
もしそうだとするならば、なぜ、若者たちが適応限界を次々と迎えてしまうのか、ということを考えなければなりません。
この点においても、現在の社会システム自体が、人々に適応を限界までさせて、限界まで我慢させることで成り立っているシステムなのではないか、というのが考えるべきポイントだと思います。
現代社会におけるキーワードは、「適応限界」すなわち「我慢の限界」になるかと思います。今の社会システムは、上位10%の富裕層を除いて、90%の人々の我慢の上に成り立っている、といっても過言ではありません。
では、なぜ、全世界の人々が「我慢」しなければならないような世の中になっているのでしょう。その原因はどこにあるのでしょう。
1996年、明治生命保険相互会社(現・明治安田生命保険相互会社)入社。1997年、バングラデシュのグラミン銀行創設者ムハマド・ユヌス氏の下で研修を受け、ESGの道を志す。2000年、株式会社グッドバンカー(日本初のESGファンド「日興エコファンド」の調査を担当するESG専門投資顧問会社)専務取締役COO就任。2002年、野村證券株式会社入社。2006年、株式会社サステイナブル・インベスター(富裕層向けESGプライベート・バンク)を起業、代表取締役社長就任(現任)。2016年、複眼経済塾株式会社・取締役シニアESGアナリスト兼事務局長就任。琉球大学・金融人材育成講座(2007年)「環境と金融」講師。清泉女子大学講師。映画「うみやまあひだ」プロデューサー。著書に『「会社四季報」で発 見10倍稼ぐ! EGS投資』(ビジネス社)がある。
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