株式会社PKSHA Technology

株式会社PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)は、「未来のソフトウエアを形にする」をミッションに掲げ、自社開発のアルゴリズムを用いたAIソリューションやSaaSを提供する。

代表取締役の上野山勝也氏は、ボストンコンサルティンググループ(BCG)などを経て同社を創業。以来、4600社以上の導入実績を誇り、現在はソリューション、プロダクト、そしてAIで人を進化させる「AI Powered Worker」の三事業を柱とする。

上野山氏に、AIによる社会構造の変化と組織としての進化を聞いた。

1982年、大阪府生まれ。 ボストンコンサルティンググループ、グリー・インターナショナルを経て、東京大学松尾研究室にて博士号(機械学習)取得。2012年、PKSHA Technologyを創業。 内閣官房デジタル行財政改革会議構成員などの公務にも従事。2020年、世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズYGL2020」の一人に選出。
PKSHA Technology
2012年、創業。「未来のソフトウエアを形にする」をミッションに、自社開発の機械学習・深層学習アルゴリズムを用いたAIソリューションやSaaSを提供。自然言語処理、画像認識、予測モデルなどの技術で顧客課題を解決するほか、AI SaaSによりソフトウエアの社会実装を多面的に支援。
企業サイト:https://www.pkshatech.com/

目次

  1. AIを探求するだけでなく社会実装実現のために創業
  2. どのように企業がAIテクノロジーを導入しているのか
  3. 組織としてのPKSHA Technology
  4.  AIが起こすインターネット登場時以上のインパクト

AIを探求するだけでなく社会実装実現のために創業

── PKSHA Technologyは東京大学松尾研究室発の企業の中でも、最初期に創業しました。

上野山 はい、2012年にPKSHA Technologyは創業しました。「未来のソフトウエアを形にする」ことをミッションとしています。自社開発の機械学習・深層学習アルゴリズムを用いたAIソリューションやSaaSを提供しており、自然言語処理、画像認識、予測モデルなどの技術で顧客の課題を解決しています。

目指していることは、AI SaaSを通じてソフトウエアの社会実装を多面的に支援し、企業と人の新たな関係性をつくり、人とソフトウエアがともに進化する豊かな社会の実現です。

── 創業以来、累計4600社以上にAIを導入しているとのことですが、どのような戦略があったのでしょうか?

上野山 創業当初は、先端技術の研究開発と個別の企業に対してカスタマイズで実装するソリューション事業が中心でした。そこから汎用化したプロダクト事業へと展開し、現在ではAIが人の能力を拡張する「AI Powered Worker」という新規事業も展開しています。

この三つの事業の柱で、売上規模も拡大してきました。特に、リサーチソリューション事業とプロダクト事業が売り上げの大部分を占めています。

── 創業者である上野山代表は、どのような経緯でAI分野での起業をしようと考えたのでしょうか?

上野山 起業を志したきっかけは修士時代のシリコンバレーへの渡航体験にあります。当時、知人がシリコンバレーのツアーを勧めてくれて、面白そうだと思い参加しました。

そこでデジタルの第一線で活躍する人たちの仕事を間近で見て、猛烈な衝撃を受けました。「インターネットってこんなにすごいんだ」と肌で実感したんです。

この経験から、これからの時代はソフトウェアが重要になると確信し、帰国後に研究室に入り、機械学習の研究に没頭しました。

そこで得た知見と、新しいビジネスとしての可能性を感じ、PKSHA Technologyを創業したという流れです。単にAIを研究するだけでなく、それを社会実装することに強いこだわりを持っています。

どのように企業がAIテクノロジーを導入しているのか

── 上場企業を中心に4400社以上の導入実績があるとのことですが、具体的な事例について、いくつか教えてください。

上野山 たとえば小売業界では、スーパーマーケットの作業割当最適化(従業員をレジや精肉、鮮魚など、どこに割り当てるかを決定)を行っています。また、製造業では製造ラインの自動化や見える化を進め、熟年層の退職に伴う知識継承の課題に対して、AIを活用して若手でもすぐに使える知識へと変換する取り組みもしています。

金融業界では不正検知はもちろんのこと、特に保険業界では東京海上日動様とジョイントベンチャーを組み、基幹システムと生成AIを連携させて、顧客や代理店からの問い合わせに対してAIがメール返信文を作成するシステムも開発しました。

── プロダクト事業では、チャットボットや社内問い合わせ対応のAIソリューションなどを展開しているそうですね。

上野山 チャットボットは技術の進化によりAIエージェント化しており、当社では「チャットエージェント」「ボイスエージェント」として、問い合わせ回答にとどまらず、ユーザーの課題解決支援やナレッジデータベースの拡充を行なっています。

また、企業内の問い合わせ対応、たとえば従業員から総務や人事部門への問い合わせに対して、AIが自動で対応するソリューションも提供しています。これはMicrosoft Teamsなどで利用できるものです。

主なターゲット領域はコンタクトセンターの支援と企業コミュニケーションで、顧客の困りごと解決からオペレーター業務の高度化までを行っています。

── グループ会社も増え事業領域を拡大する中で、M&Aも積極的に行われているとうかがいました。どのような基準でM&Aを進められるのでしょうか。

上野山 さまざまな業態にAIを浸透させたいという思いがあり、M&Aは重要な戦略の一つです。

たとえば、駐車場機器の会社であるアイテク社を買収したのは、ナンバープレートを読み取ることで自動車管理を行う技術を持っており、私たちのソフトウェア・AI技術を組み合わせれば、未来のモビリティネットワークを構築できると考えたからです。

また、人事・採用コンサルティングのトライアンフ社とは、HR系のAIを組み合わせることで新しい事業体を創出しています。UX/UIデザインの会社や、AI議事録を展開する会社などもグループに迎え入れ、事業領域の拡大と深化を図っています。

組織としてのPKSHA Technology

── AI技術は日々進化していますが、どのように対応していますか?

上野山 全てのソフトウェアがAI化する時代になりました。常に最新技術をキャッチアップし、社会実装を進めることに注力しています。

たとえば、chatGPTも3年前に、AIをビジネスに応用する取り組みを開始しました。現在では、Anthropic社が提供するエージェントAIなど、さらに大きなインパクトを持つ技術も登場しており、これらをいかに追い風として活用するかが私たちのチャレンジです。

── 創業当初からAIの可能性を予見されていたとのことですが、それは具体的にいつごろでしょうか?

上野山 学生時代にシリコンバレーを訪れた際、まだ日本には来ていなかったインターネット産業のダイナミズムを目の当たりにし、技術の進化にはタイムラグがあることを実感しました。

情報技術の進化は止まらないと感じ、インターネットのインテリジェント化、すなわちAI化が進む感覚を、2010年から2015年ごろには強く持っていました。そのため、10年前から「ソフトウェアはすべてAI化する」と一貫して言い続けています。

── 多くの企業がAI導入に苦戦する中、PKSHA TechnologyがAIソリューション事業で成功を収めている要因は何だとお考えですか?

上野山 AIソリューション事業を通じてさまざまな企業とAIの実践を行う中で、未来の姿が見えてくると考えています。その未来像を先回りして、先手を打つような戦略をとってきました。

また、各業界がAI化するとどのような構造になるかという洞察を、日々の事業活動から得ています。この洞察力と、それを社会実装する力こそが、私たちの強みだと考えています。

── グローバルな企業を目指す中で、日本の企業文化やエンジニアリング組織ならではの強みを感じることはあるのでしょうか?

上野山 日本のエンジニアリング組織の強みは、トップダウンで一つのプロダクトをつくるのではなく、ボトムアップも含めて新規事業を複数、複線で開発する点にあると考えます。これは、アジアならではの強みかもしれません。

私たちの会社では、新規事業の7割を私が直接つくっているわけではなく、現場のリーダーが主体的に生み出しています。組織を「根っこ(研究開発)」「幹(ソリューション事業)」「枝分かれした果実(事業化)」というレイヤーに分け、木が育つように自然な形で事業が生まれる仕組みを構築しています。

── 組織が拡大する中で、困難や摩擦もあったかと推察しますが、どのように乗り越えましたか?

上野山 事業の進化のタイミングで摩擦は必ず起こります。

たとえば、事業のソリューション型からプロダクト型への転換では、双方の組織文化の違いで苦労しました。しかし、SaaS経験のある強力なメンバーの参画や、両方の特性をブリッジできる人材の育成、そして顧客からの要望という「外圧」によって、組織はプロダクトカルチャーへとシフトしました。

私自身も、創業フェーズから会社を経営するフェーズへと進化し、両方の事業を横断する立ち位置へと変化しています。

 AIが起こすインターネット登場時以上のインパクト

── 「AIが仕事を奪う」という懸念の声もありますが、労働者にどのような新しいチャンスを提供できるのでしょうか。

上野山 私たちの第三のビジネスである「AI Powered Worker」は、まさにこの課題に応えるものです。ワーカーがAIを装備して働くことで、個人の能力が拡張され、働く喜びが増えるような新しい働き方を提案します。

AIに代替される職業も出てきますが、同時に新しい職業も生まれます。働き方を進化させ、労働者がAIという武器を得ることで、新たなチャンスを創出できるでしょう。たとえば、当社の知財部はAIを活用して知財調査の生産性を3倍に向上させました。

── 企業の収益構造はどのように変化すべきだと考えますか?

上野山 AIは、インターネットのインパクトよりも大きな変化を起こすと考えています。いかに、それに適応できるかが重要です。

インターネットで起きたインパクトの領域は、広告やユーザー接点が主なところでしたが、それだけでなくタスク遂行でもAIは活用されるため、リアルオペレーションと融合した形での事業展開が求められます。

M&Aも単なる買収ではなく、AIで構造を変えるという目的を共有し、ともに事業を推進するパートナーシップを重視しています。

── 今後10年に向けたビジョンについてはいかがですか?

上野山 AIに対して漠然とした不安を持つ人もいますが、私たちはAIを使うことでより面白く、新しい、進化した社会が実現できると、事業を通じて示したいと考えています。

たとえば、コンタクトセンターでAI活用により滑らかな顧客関係を構築したり、ポジティブなAI実装を通じて新しい事業を創造したりすることで、明るい未来を証明したいのです。その結果として、私たちのビジョンに共感し、ともに挑戦する仲間が増えることを期待しています。

たとえば、コンタクトセンターではAIが顧客の文脈を理解し、一方的な応答ではなく本当の「対話」を実現することで、滑らかな顧客関係を構築しています。私たちはこれを「Communication AI(命令ではなく対話を促す)」と呼んでいます。また、従業員と管理部門、企業と顧客といった組織の分断をAIがつなぎ直す「Connective AI(分断ではなく繋がりを生み出す)」の実践や、AIが人の仕事を奪うのではなく、一人ひとりの知見や実行力を拡張する「Human Empowerment AI(代替ではなく拡張を支援する)」といった考え方でポジティブなAI実装を進めています。

その結果として、私たちのビジョンに共感し、ともに挑戦する仲間が増えることを期待しています。

── 仲間として求める人材像を教えてください。

上野山 「道を面白がり、実際に何かをつくり、誰かを喜ばせたい」という思いを持つ方と一緒に働きたいです。新しいことに興味を持ち、前に進んでいこうとする意欲のある方、特に20代、30代の方々が多く活躍しています。もちろん、40代、50代の方々も歓迎します。

また、エンジニアだけでなく、セールスやビジネスサイド、プロデュースといったさまざまな職種の方々が、AIの進化とともに境界なく活躍できる環境を目指しています。ストレス耐性が高く、仕事で楽しみながら挑戦できるマインドを持つ方には、非常にフィットする会社です。

氏名
上野山勝也(うえのやま かつや)
社名
PKSHA Technology
役職
代表取締役

関連記事