本記事は、岩澤 脩氏の著書『だからベンチャーキャピタルはやめられない 投資家だけが知っている 起業とお金のリアル』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。

だからベンチャーキャピタルはやめられない 投資家だけが知っている 起業とお金のリアル
(画像=naka/stock.adobe.com)

キャピタリストに必要な5つの価値観

キャピタリストの採用も、VCにとっての生命線です。
キャピタリストはVCの競争の源泉になる存在であり、起業家の方に「このキャピタリストに投資してもらいたい!」と思わせることができる人材を採用できるかが、VCの未来を決めるといっても過言ではありません。

VCのキャピタリストというと切れ者のようなイメージを思い浮かべる人もいるようですが、切れ者なら良いわけではありません。キャピタリストは起業家との関係づくりが重要なので、コミュニケーションがしにくい人や高圧的になりやすい人は不向きです。

弊社では試行錯誤を重ねた末、キャピタリストの採用を行うとき、以下の5つの価値観を重視するようになりました。(図を参照)

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(画像=だからベンチャーキャピタルはやめられない 投資家だけが知っている 起業とお金のリアル)
  • グロースオリエンテッド:自己破壊を恐れずに成長する意識があるか
  • レジリエント:逆境を楽しめるか
  • プロアクティブ:常に自分という船のオールを握っている感覚があるか
  • セルフアウェア:客観的に自分を捉えられるか
  • コラボレーティブ:積極的に自己開示し、仲間に頼れるか

この5つの価値観を満たす人を採用したうえで、ファーストライトが起業家に約束する価値観やバリューをインストールしてもらうことが大切だと考えています。
5つの価値観を満たしているかどうかを図るために、私たちは、採用面接のときに「一番の挫折経験」をたずねています。どのような経験をして、それを乗り越えるためにどうしたのかを聞くと、その人の人となりが見えてきます。
注意しているのは「きれいな話に終始していないか」です。きれい事しか話さないということは自己認識ができていないか、人に失敗経験を開示できないディフェンシブな性質があるか、どちらかだと捉えています。

良いVCはうまく世代交代し続ける

トップVCの条件とは何か。
その問いに対して、とあるVCの大先輩が挙げていた答えが、「うまく世代交代をし続けられること」です。一人のスターキャピタリストがいれば短期的には成功できるかもしれませんが、長くは続きません。
ファーストライト・キャピタルも、「事業家による起業家のための100年VC」というミッションを実現するためには、私が結果を出すことはもちろん、5〜10年後に次世代のキャピタリストがGPになり、若いキャピタリストが一人前になることが不可欠です。
そのために必要なのは、「投資判断や成長支援に再現性を持たせること」と「ファーストライトらしさを継承すること」だと考えています。

そこで行っているのが、キャピタリストを大量に採用するのではなく、少数のキャピタリストに「どのような価値観で投資するか」「起業家の方たちに付加価値を出していくのか」を丁寧に伝えていくことです。

価値観に関しては、先述した5つの価値観のほか、以下のような「起業家や社会に対して約束する価値観:Our Ethos(エトス)」を言語化し、掲げています。(図を参照)
これらは、ただ掲げているだけではありません。若手のキャピタリストとパートナーが一緒に行動する徒弟制度をとり、起業家の方やLPの方とのコミュニケーションを見せながら、「なぜこういう判断をしたのか」をセットで伝えるようにしています。
規模を大きくしたい気持ちもありますが、人材育成のことを考えると、一歩ずつ拡張していくのが最適解だと考えています。
今のところ、その方針で運営してきたことは間違いではなかったと感じています。

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(画像=だからベンチャーキャピタルはやめられない 投資家だけが知っている 起業とお金のリアル)

最近は投資先やLPの方たちから「ファーストライトのメンバーは岩澤がいないところでもみんな同じことを言っている」「ファーストライトのGPやキャピタリストは、会ったときに、ファーストライトっぽさを感じる。同じ空気感がある」と言われることが増えました。
大事にしているカルチャーを言語化したことで、大事にしたい価値観がメンバーに浸透していること、創業者である私中心ではないミッション・バリューを中心とするVCに近づけているということを実感しています。
今後も、若いキャピタリストを丁寧に育てていくことで、世代交代の良いサイクルをつくっていきたいと考えています。

だからベンチャーキャピタルはやめられない 投資家だけが知っている 起業とお金のリアル
岩澤 脩(いわさわ・おさむ)
ベンチャーキャピタリスト
ファーストライト・キャピタル株式会社 代表取締役
1982年、埼玉県川越市生まれ。慶應義塾大学理工学研究科修了(工学修士)。学生時代、偶然が重なりベンチャーキャピタルのインターンとして2年間勤務。卒業後、リーマン・ブラザーズ証券に入社し、株式調査部で株式アナリストとして勤務。在籍中にリーマンショックを迎え、勤務先の経営破綻を内側から経験する。その後、野村総合研究所に転じ、金融危機の余波で経営が傾いた地方企業の事業再生を担当。2011年、創業初期のユーザベースに参画。経済情報プラットフォーム「Speeda」やソーシャル経済メディア「NewsPicks」を展開する同社の執行役員としてSpeedaの事業開発を指揮。2013年、単身で香港に渡り、アジア事業をゼロから立ち上げる。アジア事業統括執行役員として香港・シンガポール・上海・スリランカの4拠点・約100名の組織を率い、アジア11カ国のユーザーに支えられる事業へと育てる。2016年の東証マザーズ上場では、執行役員として上場の鐘を鳴らした。
2018年、ファーストライト・キャピタル創業。「人口減少社会の新産業創出」をテーマに、日本の基幹産業の生産性向上と新産業創出に取り組むスタートアップに投資する。重点領域はAI・SaaS・フィジカルAI・地域インフラ・危機管理。主な投資先にワンキャリア(東証グロース上場)、コミューン、モノグサ、PeopleX、フライルなど。全国の地域金融機関とともに「地域課題解決DXコンソーシアム」を設立し、スタートアップと地域経済をつなぐ取り組みも進める。
ポッドキャスト「VIVA VC〜だからベンチャーキャピタルはやめられない〜」のMCを務める。
Xアカウントは、@osamuiwa

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