この記事は2026年7月17日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「家計の資産選択の変化を受け、現預金比率は過去最低に」を一部編集し、転載したものです。


家計の資産選択の変化を受け、現預金比率は過去最低に
(画像=Lumi Stock Studio/stock.adobe.com)

(日本銀行「資金循環統計」)

日々のさまざまな経済活動に伴う金融取引と、その結果として各経済主体の金融資産・負債残高を包括的に記録したものが、日本銀行が四半期ごとに公表する「資金循環統計」だ。本稿では、この統計をもとに日本における家計の資産選択の変化を見ていきたい。

2026年3月末の家計の金融資産残高は、前年同期比7.1%増の2386兆円となった。過去最高となった25年12月末からは若干減少したものの高水準を維持している。

今年3月末時点での金融資産の残高内訳と全体に占める構成比を見ると、まずは「現金・預金」(現預金)が47.2%(1126兆円)となっている(図表)。次に「株式等+投資信託+債務証券」(投資性資産)が25.2%(600兆円)、「保険・年金・定型保証」(保険等)が24.5%(584兆円)と続く。投資性資産の残高については、25年12月末に保険等を上回った。

これらは直近の一時点の結果に過ぎない。しかし、家計の金融資産の構成比を時系列で比較すると、足元では従来と異なる変化を確認できる。現預金の構成比は、10年代は一貫して50%超で推移していた。しかし、23年以降は低下基調となり、25年に50%を割り込んだ。直近の47.2%は、現行および旧ベースで統計をさかのぼれる1997年以降で最も低い水準だ。

このことは、物価上昇が続くなか、人々が現金の実質的価値の目減りを意識するようになったことが影響している。その結果、現預金から他の資産へシフトする動きが強まっているとみられる。

現預金と対を成すのが、投資性資産の構成比だ。2010年代は方向感に乏しい推移が続いたが、20年以降は明確な上昇基調となっている。24年に20%を超えて以降も上昇が続き、直近の25.2%は現預金比率とは対照的に過去最高である。

資産残高は時価ベースで計算されるため、株式等を中心に相場上昇による時価評価益拡大が構成比上昇に大きく寄与しているだろう。それとともに、NISA(少額投資非課税制度)の拡充や国内での金利上昇などを受け、リスク性資産や個人向け国債の保有需要が高まっていることも背景にあるとみられる。

金融資産構成の変化は、家計の資産選択行動が従来から転換しつつあることを示唆する。日本経済のマクロ的環境は、物価上昇が常態化し、金利のある世界へ本格的に移行している。

こうした中で、家計の現預金に対する選好が弱まり、高い収益性が期待できる資産の保有ニーズが高まっている。制度面の整備が進んだことも、こうした変化を後押ししているだろう。今後も「貯蓄から投資へ」の流れは続きそうだ。

家計の資産選択の変化を受け、現預金比率は過去最低に
(画像=きんざいOnline)

SBI新生銀行 グループ経営企画部 金融調査室 シニアエコノミスト/森 翔太郎
週刊金融財政事情 2026年7月21日号