この記事は2026年8月14日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「資産形成は進むものの、金融リテラシーの停滞が課題に」を一部編集し、転載したものです。


資産形成は進むものの、金融リテラシーの停滞が課題に
(画像=Samon/stock.adobe.com)

(金融経済教育推進機構「金融リテラシー調査」)

金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施する「金融リテラシー調査」の最新調査結果が2026年3月に公表された。金融広報中央委員会による初回調査から数えて、今回調査まで約10年間の調査結果が蓄積されている。本稿ではこの間における金融リテラシーと金融行動の動向を確認したい。

まず、金融リテラシーの代表指標である正誤問題の正答率は、調査開始時点の16年に55.6%だったが、25年に53.8%へ低下している(図表)。長年にわたり、産官学の各方面から金融リテラシーの向上が推進されてきたことを踏まえると、その成果が十分に表れているとは言い難い。

一方で、金融行動には改善がみられる。「投資信託の購入経験者」は25.8%から34.8%へ増加した。「お金について長期的な計画を立てている」人の割合も47.5%から51.1%へ増加した。さらに、「商品性を理解した購入」や「比較・検討」の割合も上昇しており、金融行動は量・質の両面で前進したことがうかがえる。

この背景には、確定拠出年金(DC)や新NISA(少額投資非課税制度)の導入のほか、ネット取引や比較サイトの普及、物価上昇を契機とした家計への関与の高まりなど、社会環境の変化があると考えられる。すなわち、この10年間は、制度や環境が金融行動を後押しした時代だったとみることができる。

では、金融リテラシーと金融行動の動向のねじれをどのように捉えるべきか。楽観的には、日本人の金融リテラシーはすでに必要十分な水準に達しており、社会環境の変化がそのリテラシーを実際の行動に結び付ける役割を果たしたという見方ができる。実際、日米共通問題の正答率では、日本(46%)と米国(49%)の間に大差はなく、OECD加盟国でも日本の正答率は37カ国中12位と決して低い水準ではない。

一方で、行動の進展にリテラシーの向上が追い付いていないと捉えるなら、やはり看過すべきではないだろう。金融行動が高度化するほど求められるリテラシーや判断力も高度化する。十分なリテラシーを伴わないまま生活設計や金融取引を行うことは、非合理的な商品選択や金融トラブルへの接近など、望まぬ結果を招く恐れがある。

従って、金融行動を支える知識や判断力を養うための実践的な金融教育が、これまで以上に必要となるだろう。もちろん、今後も政府や金融機関、勤務先企業(職域)等を通じた金融行動の後押しは欠かせない。

金融リテラシーと金融行動の動向は、年代別に分析するとさらに示唆的な結果が確認される。次回は議論をさらに深め、年代別に見る個人金融の成果と課題について考えたい。

資産形成は進むものの、金融リテラシーの停滞が課題に
(画像=きんざいOnline)

ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員/西久保 瑛浩
週刊金融財政事情 2026年8月18日号