この記事は2026年8月14日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「「新しい金利観」の醸成で注目が集まる銀行株」を一部編集し、転載したものです。
筆者はさまざまな場面で「新しい金利観」という言葉を使っている。新しい金利観とは、直近の金融政策や経済状況、相場環境に即した債券市場における相場観を指す。過日の日本銀行の大規模緩和により、債券市場の機能度は大きく低下した場面もあったものの、金融政策の正常化の過程で債券市場は復活を遂げつつある。
ただ、「動く金利」「高い金利」ということに対して、慣れている市場参加者は大規模緩和前の往時の債券市場と比べて減っている模様だ。足元では、新しい金利観の醸成局面にあると推察される。
こうしたなか、株式市場で注目を集めているのが、金利と相応に連動的な銀行株である。銀行株対TOPIXの前月比と長期金利の前月差をもとに相関をとり、2022年12月から26年7月までの月次データを算出すると、0.7と高めの結果が得られた(図表)。
高い相関の背景には、高い金利環境が銀行の収益に追い風になると市場参加者が踏んでいることがある。日銀も26年4月の金融システムレポートで、円金利上昇等の影響が銀行の基礎的な収益力を表すコア業務純益の改善につながっているという趣旨の記述をしている。
筆者は、日本の長期金利についてさらなる上昇を予想しており、銀行株にとっても前向きな環境が続くとみている。ただし、銀行株にはいくつか注意が必要な点もある。
第一に金利のボラティリティーである。高市早苗政権の成長戦略を巡る財政悪化への懸念や期待インフレの行方、円安など、金利の変動を高める要因は複数考えられる。先ほどの相関結果を踏まえれば、金利のボラティリティーの高まりは、銀行株に大きな影響を及ぼす可能性がある。
第二に越境貸出だ。大阪市に拠点を置くクレジットカード決済代行会社の全東信の破産は記憶に新しいが、同社に貸出をしていたと報じられた金融機関には大阪から地理的に離れている金融機関も見られた。
金融システムレポートでは「越境貸出は地元貸出対比、デットガバナンスが効きにくい可能性がある」と記されていた。日銀が懸念していたとおりの展開が訪れたわけだが、こうした金融機関の目の届きにくい貸出が不良債権につながり、銀行の資本や利益を毀損しかねない。
第三に預金獲得競争についても注視したい。従来、地方では人口減少だけではなく、預金者の高齢化に伴う相続が預金流出をもたらす可能性が懸念されている。預金獲得のため、高めの金利を設定せざるを得なかったり、地域経済が衰退する中で預貸率が低位にとどまったりする金融機関には注意が必要だ。
T&Dアセットマネジメント チーフ・ストラテジスト/浪岡 宏
週刊金融財政事情 2026年8月18日号