本記事は、大神 千穂氏の著書『小さな会社の「人材育成」はなぜやりきれないのか』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
言語化で社内のムダとリスクが減る
人件費の投資効率がアップする
「どうしてあの人、目立った成果も出していないのに管理職なの」
「なんでこんなに頑張っているのに、給与が上がらないの」
「あの人は担当顧客に恵まれているだけで、いつも賞与が高くてズルい」
評価制度があいまいな小さな会社では、社員が不公平感を持っていることが、ままあります。
小さな会社の場合、大企業に比べて社長と社員の距離が近くなりがちです。中には、休日に社長の家に集まってみんなで食事会をするなど、家族のような付き合いをしている会社もあります。
しかし、この距離感が人材育成には要注意。社長といつでも話せる関係性が、不公平感のタネになることがあるからです。
情に厚い社長は社員の声によく耳を傾け、できるだけ応えてあげようと考えています。それが、ちょっとした待遇の差につながることがあります。
社長としては社員のことを思っての配慮ですが、「同じ仕事をしているのに、どうしてあの人のほうが」という不信感が芽生えれば、額の大小にかかわらず、成長意欲が削がれるのは言うまでもありません。頑張ってもムダということです。
明確な評価制度をつくれば、不公平感はなくなります。昇給・昇格に社長の独断や情が入り込む余地はありません。
社長と社員の距離が近いのはプラスの面も多くありますが、人件費は効率よく使わなければ、組織全体の不幸を招きます。
私は、レバレッジ経営を目指す小さな会社の社長には、「人件費は投資と考えましょう」とよく話しています。逆に、エキスパート経営を選ばれる社長には「人件費はコストと考えてください」とお伝えしています。
ちょっと冷たく聞こえるかもしれませんが、レバレッジ経営を目指すなら欠かせない視点です。情や感覚による評価は心情的な満足度はあるものですが、会社のお金の使い方として本当に適正なのかという現実に向き合わなければなりません。
労働市場を金融市場に見立てるなら、社員は投資対象で、給与という投資をする企業は投資家です。
社員の成長がなければ投資は失敗。リターンを得ることはできません。人が育たなければ、使った人件費はただの消費か、もっと悪いと浪費になります。
ただし、この投資は投資商品そのものに自分が関与できるのが、金融市場とは異なるところです。社員をうまく育てることができれば、自ずと大きなリターンとなって返ってきます。
投資される側の社員は、成長すれば投資してもらえる額(給与)が増えるし、成長できなければ減ることもあります。
人件費を投資ととらえることは、結果的には会社も社員もお互いがハッピーになる考え方なのです。
静岡県出身。東北福祉大学社会福祉学部福祉心理学科を卒業後、高校教員、一般企業勤務を経て独立。2010年よりこども教育事業、2015年より人材育成事業に携わる。
2018年1月より、HOPグループにて組織変革を担当。2020年には同グループにて成長企業診断®サービスをリリースし、組織開発コンサルティング部門を設立。同年、一般社団法人成長企業研究会の理事に就任。現在はHOPグループ取締役として、人が入れ替わる現実を受け止めつつも、一人ひとりの可能性を引き出し、組織全体のパフォーマンスを最大化する経営の仕組みづくりを支援。採用・人材育成・事業承継といった中小企業の経営課題に伴走している。
2023年、『小さな会社の「仕組み化」はなぜやりきれないのか』(小川実著、アスコム刊)の企画・監修。
趣味はピラティスとゴルフ。2匹の愛犬(ミニチュアダックス)とともに暮らす。
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