本記事は、大神 千穂氏の著書『小さな会社の「人材育成」はなぜやりきれないのか』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
人材育成はリーダーのビジョンから始まる
あなたは、どんな会社にしたいと思っていますか?
「成長考課制度の内容は、すべて社長の頭の中にありますからね」
そう言うと、だいたいの社長は「本当?」という表情をします。しかし、うまく取り出して整理できていないだけで、社長の頭にはすべて詰まっています。本当にあるのか確認してみることにしましょう。
それでは、最初の質問です。
「あなたは、あなたの会社をどんな会社にしたいですか?」
人を育てるために、最初に言語化しなければならないのは、どんな会社にしたいのか、という社長が考える会社の未来です。
これが、一般的な評価制度の導入と、一から成長考課制度をつくることの、大きな違いです。
汎用性のある外部の評価制度を導入する場合は、評価することが目的で、どんなシステムを採用するかという手段から入ることになります。一方で成長考課制度の目的は、人と会社の成長です。
ですから成長のゴール= 理想のビジョンを先にはっきりさせて、その実現のために「どんな人が必要か」「どんな組織にしていく必要があるか」を言葉にしていきます。
理想と現実のギャップを明らかにして埋めていく、というプロセスは、事業計画では当たり前にやっていることだと思います。成長考課制度はあなたが心から実現したい経営計画と人材育成を結合させて一挙両得するハイブリッドなシステムです。
会社の未来は、会社という法人の目的地と言ってもいいでしょうか。
どこへ行くのかわからないバスには誰も乗り込んできませんし、目的地がわからないまま乗っている人は不安で仕方がありません。あまりに不安で、どこで途中下車するか考えている人もいると思います。
私の質問に、即答する社長もいれば、少し考えこんでしまう社長もいますが、「こんな会社にしたい」という思いは誰にでもあるものです。
理念やビジョンとして掲げていなくても、「困った人を助ける会社にしたい」「業界をあっと驚かせる会社にしたい」「そこで暮らす人が笑顔になる会社にしたい」など、会社を起ち上げたときの思いや目的があったはずです。
洒落た言葉やかっこいい言葉にすることはありません。素直にその思いを書き出してみましょう。
それが、社員や新しく入ってくる人たちに伝える最初の言葉になります。
社長が描く会社の未来を社員と共有することは、あなたが想像する以上にとても大事です。会社がどこに向かって行くのかもわからない状態で、あれをやってくれ、これをやってくれなどと言われても、社員は納得して仕事に取り組めません。
入社したばかりの社員ならともかく、数年一緒に働いてきた社員だとすると、「どうしてそんなことが必要なのですか」「やる意味がわかりません」などと、目指す場所がわからなければ不満が募ります。
入社間もないころは仕事を覚えたり目の前の作業に手いっぱいだったりで、未来まで考える余裕がないかもしれません。でも仕事にだんだん慣れてくるにつれて「このまま働き続けていいのか」「自分のやりたい仕事は何なのか」と内省する時間が増えていきます。
そのときに「なぜ自分はこの会社にいるのか」「この社長や上司のもとで働いているのか」が社員にとって重要な判断基準になると思ってください。待遇や働きやすさは、マイナスをゼロにするにすぎません。
真剣に仕事に向き合っている社員ほど、目指す未来や成長というプラスの要素を求めるのです。
特に小さな会社では、社長の考え方と会社の未来がダイレクトにつながります。社長の頭の中が言語化され、しかもそれが建前じゃないと信じられなければ、社員は「ここで働く意味」を見いだせません。
逆に、「この会社は将来こうなっていくのか」という会社の未来が見えると、社員は「この会社の未来に自分はどのように関わっていけるのか」と自分の成長した姿を重ねられるようになります。それが成長意欲につながります。
静岡県出身。東北福祉大学社会福祉学部福祉心理学科を卒業後、高校教員、一般企業勤務を経て独立。2010年よりこども教育事業、2015年より人材育成事業に携わる。
2018年1月より、HOPグループにて組織変革を担当。2020年には同グループにて成長企業診断®サービスをリリースし、組織開発コンサルティング部門を設立。同年、一般社団法人成長企業研究会の理事に就任。現在はHOPグループ取締役として、人が入れ替わる現実を受け止めつつも、一人ひとりの可能性を引き出し、組織全体のパフォーマンスを最大化する経営の仕組みづくりを支援。採用・人材育成・事業承継といった中小企業の経営課題に伴走している。
2023年、『小さな会社の「仕組み化」はなぜやりきれないのか』(小川実著、アスコム刊)の企画・監修。
趣味はピラティスとゴルフ。2匹の愛犬(ミニチュアダックス)とともに暮らす。
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