本記事は、大神 千穂氏の著書『小さな会社の「人材育成」はなぜやりきれないのか』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

小さな会社の「人材育成」はなぜやりきれないのか
(画像=78art/stock.adobe.com)

成長考課制度があればハラスメントは怖くない

ハラスメントにならないスキルや経験の伝え方

マネジメント職になりたくない人たちが増えているのは、ハラスメントの問題もあると思います。
実際、部下とどう接していいのか頭を悩ましているマネジメント職の人は多いことでしょう。それは、小さな会社の社長も同じです。
リスク管理としてハラスメント対策に取り組む会社は増えていますが、社長の頭の中を言語化することも、ハラスメント対策のひとつになります。
なぜなら、成長考課制度を介したコミュニケーションになるからです。

成長考課制度があると、そこで設定された目標に基づいて、「あなたにやってほしい役割はこれです」「あなたが今期身に付けなければいけないスキルはこれです」などといった会話になります。
仮に達成できなかったとしても、「この役割のこんなことができていなかったので、来期はそこを目標にしましょう」「このスキルがまだ身に付いていないようですね。来月○○の研修があるので参加してみませんか」などといった会話になります。
成長考課制度を基に話しているため、話がかみ合わないこともなければ、社員に理不尽と受け取られることもありません。社員の言い分もすんなり受け入れられます。

成長考課制度を介さずに話せば、話がかみ合わないこともあるでしょうし、社長の言動に社員が理不尽さを感じればハラスメントになることもあります。もしかすると、退職代行を使われることになるかもしれません。
成長考課制度がない場合、入社の段階からミスコミュニケーションが始まっていることもあります。
会社側の期待もぼんやり、入社する側の理解もぼんやり。そして入ってみたら違っていた。ミスマッチの最たるパターンです。

小さな会社の社長の中には、1対1で話をすれば解決できると考える人もいるようですが、往々にしてあるのが、「今度ボーナスで考えとくから」「来月まとまった休みをとっていいから」などといった個別の配慮です。
言われた社員は頑張るでしょうが、不公平感のタネをつくるだけです。

プライベート優先型の「静かな退職者」対策にもなる

「静かな退職」というキーワードがトレンドになっています。
小さな会社の社長も、マネジメント職に携わる人たちも、静かな退職をする人にどこまで干渉していいのか、頭を抱えている人は多いと思います。

言われたことはやっているので、ゴジピタ(定時にピタッと仕事を終える)で帰って何が悪いのですかという態度をとられると、何も言えないのが現状だと思います。モヤモヤしたものは残りますが、悪いことをしているわけではないので強く出るわけにもいきません。
といって、コミュニケーション力でなんとかしようと「どうして頑張らないんですか」「周囲に与える影響を考えてください」などと言ったとすると、ひとつ間違えばハラスメントになります。

ここでも、成長考課制度を基に話しましょう。
面談では、やってほしいことや身に付けてほしいことを伝えるだけです。
もし、それをきちんとできているのであれば、見た目は「静かな退職」なのかもしれませんが、本人は成長しているし、会社に貢献していることになります。
言われたことができていないのに、「静かな退職」を続ける人は、当然ながら評価は下がるし、給与も下がります。それを受け入れるかどうかは本人次第ということになります。

間違ってはいけないのは、「静かな退職」をしている人を無理になんとかしようと頑張らないことです。
成長考課制度という環境があれば、成長意欲の人材に変わるか、もしくは自ら辞めていくことになります。
HOPグループでは、無理に人を変えようとはしません。
過度な残業や昇進を避け、契約上求められる必要最低限の業務をし、プライベートを最優先にするスタイルの働き方を希望する方には、そのような働き方の雇用契約と業務内容を用意しています。
そのような方々には、成長するというよりも、これまでのスキルや経験で役割が果たせるような業務を依頼し、それを担ってもらうことで、正社員すなわち成長考課制度にのっているメンバーの成長を後押しするような仕組みをつくっています。
仕組みの中で役割を果たしてもらうことで、成長意欲を促すこともあり、結果として「正社員になりたいです」と希望を出してくる方もいます。

デジタル資産とWeb3
大神 千穂(おおがみ・ちほ)
株式会社ワンストップHOP取締役。一般社団法人成長企業研究会理事。一般社団法人相続診断協会相続診断士アンバサダー。相続診断士。
静岡県出身。東北福祉大学社会福祉学部福祉心理学科を卒業後、高校教員、一般企業勤務を経て独立。2010年よりこども教育事業、2015年より人材育成事業に携わる。
2018年1月より、HOPグループにて組織変革を担当。2020年には同グループにて成長企業診断®サービスをリリースし、組織開発コンサルティング部門を設立。同年、一般社団法人成長企業研究会の理事に就任。現在はHOPグループ取締役として、人が入れ替わる現実を受け止めつつも、一人ひとりの可能性を引き出し、組織全体のパフォーマンスを最大化する経営の仕組みづくりを支援。採用・人材育成・事業承継といった中小企業の経営課題に伴走している。
2023年、『小さな会社の「仕組み化」はなぜやりきれないのか』(小川実著、アスコム刊)の企画・監修。
趣味はピラティスとゴルフ。2匹の愛犬(ミニチュアダックス)とともに暮らす。

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