本記事は、小山 昇氏の著書『最強の仕組み「整頓の科学」』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
人が採用できないのは、採用基準が整頓されていないから
採用基準を整頓して、入社後のミスマッチを防ぐ
多くの社長は、採用を「能力の高い人を探す活動」だと考えています。
しかし、整頓の視点で見れば、採用は「わが社に合う人を探す活動」です。わが社の考え方や仕事の進め方に合う人を迎え入れることで、入社後の判断や行動が揃いやすくなります。
どれほど能力が高くても、社風や仕事の進め方に合わなければ、入社後にミスマッチが起こります。採用で大切なのは、優秀な人を選ぶことではなく、「わが社で長く働ける人」を見極めることです。
どのような人を迎え入れるのか。その基準が曖昧なままでは、採用するたびに判断がブレます。入社後の定着にも差が出ます。
◉ストライクゾーンの整頓
わが社は、経営計画書に採用に関する方針を明記し、「ストライクゾーン」を定めています。
採否の範囲を決めることで、誰が面接をしても判断が揃い、採用の質が安定します。
「こういう人は採用する」「こういう人は採用しない」という境界線を引くのは、事務所で「ここはハサミの場所」「ここはペンの場所」とラベルを貼るのと同じ考え方です。採用基準を明確にしておかないと、担当者ごとに評価が変わり、早期退職などの問題につながります。
【ストライクゾーンを決めるメリット】
- 選考過程が明確になれば「求める人物像」に合致するかどうかを判断しやすい。
- 採用担当者ごとの評価のばらつきを防ぎ、主観的な判断によるミスマッチを減らすことができる。
わが社の社員は2026年7月現在293人です。新卒入社は3年間で42名、退職者は3名。
10年以上勤務している社員は142人で、この10年間で退職した人はたった10人です。このように定着率が高いのはストライクゾーンが決まっているからです。 - 採用基準に合う人材を採用することで、組織の方向性を揃えることができる。
◉能力基準の整頓
武蔵野が「能力や学力が高すぎる人を、あえて採らない」と考えるのは、能力基準の整頓です。
能力が高すぎる人が入ると、既存社員との間にギャップが生まれ、組織のバランスが崩れます。組織は個人の能力だけで成り立つものではなく、全体の調和で動いています。
現在の武蔵野の組織レベルを100点満点で「75」とするなら、採用する人材のレベルは「60〜85」の範囲にとどめています。学歴や成績は、参考程度にしか評価しません。
「今の自分たちに適したレベル」を見極めるのが、組織を機能不全にさせないための能力基準の整頓です。社風や現在の組織レベルに合わない人を採用すると、本人にとっても既存社員にとっても働きにくい状態が生まれます。
車でたとえると、排気量の大きいスポーツカーと軽自動車では、そもそもの性能が違います。スポーツカーのほうが速く走れるのはたしかです。
しかし、どれほど性能の高い車でも、アクセルを踏み込まなければ速く走れません。軽自動車でも、スポーツカーが走り出す前にアクセルを踏んで走り出せば、先に目的地に着くことがあります。
仕事も同じです。能力の高さだけで結果が決まるわけではありません。大切なのは、決めたことをすぐに始められるかどうかです。
現在の組織のレベルや仕事の進め方に合う人を採る。それが能力基準の整頓です。
◉情報の整頓
人材採用では、応募者から得た情報を整理し、複数の視点から確認することも大切です。
私は、面接での受け答えと、適性検査の結果を照らし合わせ、その人の発言と特性(検査結果)に大きなズレがないかを確認しています。
面接では立派な発言をしても、適性検査の結果と大きく食い違っていれば、入社後に「思っていた人材と違った」というミスマッチが起こる可能性があります。採用の初期段階で情報を確認すれば、そうした行き違いを未然に防ぐことができます。
さらに武蔵野は、入社後に活躍する人材の傾向も分析しています。わが社で活躍している人材と辞めていった人材には、それぞれ共通点があります。分析ツールの結果などから、
「こういう特性の人は活躍の可能性が高く、反対に、こういう特性の人は離職しやすい」
といった傾向がわかるので、「現在、武蔵野で活躍している社員と似た特性を持つ人」を中心に採用します。
人材採用は、組織の入口の整頓です。あらかじめ「わが社の社風に合う基準」を定め、その基準に沿って人を選ぶ。採用基準が整頓されていれば、社員が定着しやすくなります。
1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒業後、1976年に日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰し、1989年より社長に就任。赤字続きだった武蔵野を売上70億円(社長就任時の10倍)を超える優良企業に育てる。
2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、700社超の会員企業をサポートし、400社が過去最高益となっているほか、全国の経営者向けに年間240回以上の講演・セミナーを開催している。
1999年度「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。2000年度、2010年度には中小企業部門では日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞。2023年「DX認定制度」認定。2025年・2026年、健康経営への取り組みが評価され、健康経営優良法人「ホワイト500」に認定。
『経営者のための生成AI組織的活用の教科書』『1%の社長しか知らない銀行とお金の話』『人が輝く経営のすごい仕組み』『生成AIでわかった経営者のための人財定着術』(いずれもあさ出版)、『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)、『「儲かる会社」の心理的安全性』(SBクリエイティブ)、『改訂4版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など著書多数。
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