本記事は、小山 昇氏の著書『最強の仕組み「整頓の科学」』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
チェックしなければ、仕組みは動かない
チェックしないのは「やりっぱなし」を認めること
仕組みをつくって「実行しなさい」と指示しても、それだけでは社内の改善は進みません。人間は、言われたことを自ら進んで続けられるほど、意志が強くはないです。
会社を本当に変えたいなら、指示を出すこと以上に「チェックすること」が重要です。
私は高齢ですが、他の経営者よりも優れている点があるとすれば、それは「体力」と「これまでの失敗の数」、そして「愚直なまでのチェック」です。
多くの中小企業の社長は、社員に「やれ」と命令はするものの、「本当にやったかどうか」の確認が甘くなりがちです。
チェックを怠ると、現場で何が進み、何が止まっているかが見えなくなります。業務がどこで止まり、どこに問題があるのかわからなければ、軌道修正できません。
社長が「チェックをしない」のは、現場に対して「やりっぱなしでいい」と認めているのと同じです。
どれほど立派な経営方針やルールを掲げても、チェックがなければ、現場は楽なほうへと流されていきます。命令して確認しない社長を見て、社員は「どうせ口先だけだ」「やらなくても叱られない」と受け取ってしまいます。
ビジネスで成果を出すには、計画(P)を立てて実行(D)するだけでなく、その結果を点検(C)し、手直し(A)を繰り返す「PDCAサイクル」が欠かせません。
しかし、多くの中小企業は、この「C(チェック)」が抜けています。
チェックがなければ、仕組みはすぐ形骸化します。うまくいっているのか、改善が必要なのかを見極めるためにも、定期的な点検が必要です。
チェック日を事前に決めておけば守るしかない
そこで私は、「社長がチェックせざるを得ない仕組み」をつくっています。その一例が「環境整備点検」です。
わが社は、4週間に1回、社長と幹部が各部署の「環境整備」の状態をチェックしています。チェックの仕組みがないと、環境整備は日常的な掃除大会になってしまい、業務の改善につなげることができません。
環境整備点検を行う日は、年間スケジュールに組み込まれており、経営計画書に点検日が明記されています。
あらかじめ「○月×日にチェックをする」と決めておけば、それは社長にとっても、最優先の予定になります。
また、事前に告知しておけば、社員もその日に向けて準備を始めます。
社員の自主性に任せて「やらない」状態を放置するのと、仕組みとして「やる日」を決めるのでは、後者のほうが確実に社内の改善が進みます。
私は、抜き打ちチェックはしません。社員を監視するようなやり方は、現場を萎縮させるだけです。
環境整備点検は、現場の情報を吸い上げる仕組み
環境整備点検は、社長が現場の生の情報を知るための貴重な機会でもあります。
私の持論は、「真実は現場にしかない」です。常に現場の事実を見ています。
会社経営において、「良いこと」の報告は多少遅れても大きな問題にはならないが、「悪いこと(不都合な事実)」は、一刻も早く社長の耳に入らなければ、会社に大きな損害を与えます。
ところが、社員は現場で起きている「悪いこと」を報告をしないです。自分の評価が下がる不都合な情報を、上司に積極的に報告しないのは、ある意味で自然な人間の心理です。
したがって、報告を待つのではなく、社長自らが定期的に現場へ出向き、現場の声を直接ヒアリングする体制をつくる必要があります。
社長が定期的に現場へ行く仕組みが、環境整備点検です。
環境整備点検は、社長と従業員の信頼関係を深めるための「対話の場」です。小山の点検項目は、①立って挨拶したか? 5点、②床がキレイ。ゴミが落ちていないか? 5点、③全体の印象5点で、合計15点です。
点検が終了すると、スタッフのプライベートに踏み込んだ何気ない会話です。「冬休みはどこに行ったの? 去年は○○だよね?」「お子さん、今度の春で中学生だよね?」といった、仕事とは直接関係ない話を私から振ります。こうした何気ない声掛けが場の空気をやわらげ、上下関係のしがらみを溶かしていきます。きれいにするのは床やトイレだけではありません。組織の空気も整えるのも点検の目的です。
ゴミが落ちていたとき「ゴミが落ちているからダメだ」と言うのではなく「ゴミが落ちているのに気づけない、あなたの感性の鈍さが×(バツ)」と伝える。環境整備は、自分の気づきが足りないこと自覚し、行動を変えるための訓練です。それを気づかせるのが小山の役目です。
環境整備点検に同行した多くの社長は、どうしてどの部署も明るいのか驚いています。
1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒業後、1976年に日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰し、1989年より社長に就任。赤字続きだった武蔵野を売上70億円(社長就任時の10倍)を超える優良企業に育てる。
2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、700社超の会員企業をサポートし、400社が過去最高益となっているほか、全国の経営者向けに年間240回以上の講演・セミナーを開催している。
1999年度「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。2000年度、2010年度には中小企業部門では日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞。2023年「DX認定制度」認定。2025年・2026年、健康経営への取り組みが評価され、健康経営優良法人「ホワイト500」に認定。
『経営者のための生成AI組織的活用の教科書』『1%の社長しか知らない銀行とお金の話』『人が輝く経営のすごい仕組み』『生成AIでわかった経営者のための人財定着術』(いずれもあさ出版)、『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)、『「儲かる会社」の心理的安全性』(SBクリエイティブ)、『改訂4版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など著書多数。
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