本記事は、小山 昇氏の著書『最強の仕組み「整頓の科学」』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
整理をしなければ、整頓はできない
「整える」は、整理と整頓がある
「環境整備」の「整える」は、大きく2つの意味があります。
ひとつは、整理です。もうひとつは、整頓です。
- 整理=捨てること
必要なものと不要なものを分け、不要なものを徹底して捨てる。やらないことを決める。 - 整頓=揃えること
ものの置き場所を決め、向きを揃え、いつでも、誰でも使える状態を保つ。
いらないものが残ったまま置き場所を決めても、ものはすぐにあふれます。必要なものと不要なものが混在していれば、何をどこに置くべきか曖昧になります。
整頓の前に、まず整理が必要です。「整理整頓」という言葉はありますが、「整頓整理」という言葉はありません。なぜなら、整理をしなければ、整頓ができないからです。
不要なものを捨てて、必要なものだけを残す。そのうえで、置き場所を決め、向きを揃え、誰でも使える状態にする。整理は整頓の前提です。
最初にしたのは、引き出しの中身を捨てること
武蔵野が環境整備に取り組み始めたのは1979年です。最初に行ったのは、社員のデスクの整理です。
当時は、社員一人ひとりに引き出し付きのデスクがありました。そして多くの社員が、引き出しに鍵をかけていました。
鍵をかけるのは、引き出しの中にあるものを自分のものと思っているからです。
しかし、会社の備品も、会社の書類も、本来は個人の所有物ではありません。会社から預かっているものです。
自分のものだと思うと、人はなかなか捨てられません。「いつか使うかもしれない」「念のため残しておこう」と考え、不要なものを引き出しにため込んでしまいます。
引き出しが個人の所有になると、不要なものまで増え続けます。これでは整頓はできません。そこで私は、引き出しの中身を整理することから、環境整備に取り組みました。
引き出しの中にある書類を捨てることに抵抗した社員には、自宅に持ち帰らせました。
数年後、持ち帰った書類は一人の例外なく、焼却炉の煙になりました。
「捨てざるを得ない環境」をつくる
整理を徹底するには、「捨てなさい」と言うだけでは不十分です。人は、置き場所があると、ものをため込みます。
私は、「ものをため込みにくい職場環境」を意図的につくっています。
① 戸棚に扉をつけない
戸棚に扉があると、散らかっているものを戸棚の中に押し込み、隠すことができます。
そこで私は、戸棚の扉を撤去しました。戸棚の中が丸見えになるので、不要なものがあるかないか、ひと目でわかります。
また、棚にものが多いほど、整頓の手間がかかります。逆に、ものを減らせば整頓がラクになる。こうして、社内からものが減っていきました。
2005年、個人情報保護法が施行され、棚の大部分を扉つきに戻した。
② ものの置き場を減らす
わが社は、すべてのデスクに引き出しがありません。外回りが多い営業の社員は自分のデスクも椅子も持たず、共用の机で事務処理します。
私物は、透明の書類ケース1箱分しか置けません。
そもそも棚があるから、何か置きたくなる。引き出しがあるから、何か入れたくなる。
整頓を徹底したいなら、棚と引き出しを減らせばいい。
③ 人事異動、席替え、引っ越しをする
引っ越しをすると、必ずいらないものを捨てるようになります。
いるものといらないものを選別し、いらないものは捨てて、いるものだけを持っていく。引っ越しは、今あるものの要否を再評価する絶好の機会です。わが社が頻繁に人事異動を行うのは、引っ越しがともなうからです。
人事異動は、「業務を体験させることで、複数の仕事をこなせるようにする」「業務マニュアルの精度を高める」「不正を防止する」といった目的のほかに、「強制的にものを捨てさせる」目的もあります。
ダスキン事業部から経営サポート事業部への人事異動は、事業内容が大きく変わるため、実質的には、転職です。ダスキン事業部の仕事の資料を経営サポート事業部に持ち込んでも、役に立ちません。だから捨てるようになります。
捨てる意識だけではものは減りません。捨てざるをえない環境をつくることで、整理は習慣になります。
1948年山梨県生まれ。東京経済大学卒業後、1976年に日本サービスマーチャンダイザー(現・武蔵野)に入社。一時期、独立して自身の会社を経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰し、1989年より社長に就任。赤字続きだった武蔵野を売上70億円(社長就任時の10倍)を超える優良企業に育てる。
2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、700社超の会員企業をサポートし、400社が過去最高益となっているほか、全国の経営者向けに年間240回以上の講演・セミナーを開催している。
1999年度「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。2000年度、2010年度には中小企業部門では日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞。2023年「DX認定制度」認定。2025年・2026年、健康経営への取り組みが評価され、健康経営優良法人「ホワイト500」に認定。
『経営者のための生成AI組織的活用の教科書』『1%の社長しか知らない銀行とお金の話』『人が輝く経営のすごい仕組み』『生成AIでわかった経営者のための人財定着術』(いずれもあさ出版)、『会社を絶対潰さない 組織の強化書』(KADOKAWA)、『「儲かる会社」の心理的安全性』(SBクリエイティブ)、『改訂4版 仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)など著書多数。
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