3月の消費者物価指数は原油安の一服などが影響して若干伸びたものの、依然低迷。賃金が伸び、増税の影響が薄れて消費が本格的に戻るかが、2%程度のマイルドなインフレ達成のポイントとなる。


若干ながらも上げ幅拡大

総務省が発表した3月の消費者物価指数は、家計の実感に近い総合で103.3となり前年比2.3%、季節要因などの影響を受ける生鮮食品を除くコアでは103.0で2.2%と、ともに上げ幅が拡大し、22カ月連続上昇。

昨年後半から原油価格が下がり続けてきたが、2月は対前月で6.5%値上がりし反転。それが後ずれで効き、2月から3月にかけて、ガソリンが-15.4%から-11.9%、灯油が-21.6%から-19.0%と下げ幅が縮小し、エネルギー全体でも-2.1%から-1.0%へと下落幅が半減。そのため、総合やコアの上昇率がわずかに伸びた。

食品(酒類除く)とエネルギーを除いて物価の基調を判断できるいわゆるコアコアも、100.7で2.1%と18カ月伸びており、前月より上げ幅が拡張。たしかに昨年4月の消費増税前の駆け込み需要の反動で、年明け以降値下がりする品目が目立ってきた。それでも3月は若干だが下げ幅が小さい。

新製品への切り替えが進んだルームエアコンを含む家庭用耐久財は、2月の-4.6%から3月の-1.5%へと下げ幅が収縮。ガソリンを含む自動車等関係費も-2.8%から-1.7%へと改善し、ビデオカメラなどの教養娯楽用耐久財も-1.5%から-1.3%と底入れ。

さらに春休みで外国パック旅行が増え、訪日観光客増で宿泊料も伸び、教養娯楽サービスが3.6%から4.2%へと底上げ。これらにより、変動の激しい食品とエネルギーを除いても前月から反発している。


トレンドとしては依然停滞

単月では物価上昇の流れに戻ったかに見えるが、依然低迷していることに変わりはない。去年の増税以降家計の消費マインドは冷え込み、購買活動に悪影響を与えてきた。消費動向調査の消費者態度指数は、前年比で1月まで下げ止まらず、実質消費支出も3月までマイナスが続く。

このように消費の意欲と行動が低調だったため、物価も伸び悩んできた。コアコア上昇率は、去年4月の2.3%から3月の2.1%と微減。また日銀試算による増税影響分(1.7%)を除くと0.6%から0.4%となり、デフレに逆戻りする恐れもある。

この消費停滞に加え、昨年後半からは原油安も重なり、物価は一層下押しされてきた。この1年で、総合で3.4%から2.3%、コアで3.2%から2.2%と、ともに1ポイント程度も引き下げられている。


消費回復が本格化すれば物価上昇も

上述のように消費は依然後退しているが、足元では復調の兆しも見え隠れする。消費者態度指数は、前年比でも2月以降は反転し、前月比では去年12月からすでに上昇が続く。実質消費支出も、3月は10.6%減と2ケタの落ち込みとなったが、昨年5月の8.0%減から2月の2.9%減へと下げ幅が縮小して来ていた。

それに伴い物価も、コアコアの前月比で見ると去年4月以降横ばいかプラスの月の方が多い。消費動向調査による人々の意識も、1年後に物価が上昇すると見通す人は依然9割近くも存在する。

つまり、徐々に増税の影響が薄れ、冷えた消費マインドが和らぎ、財布の紐が緩み始め、再度インフレに向かう可能性があるということだ。

日銀は4月30日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の達成時期を従来の「15年度を中心とする期間」から「16年度前半ごろ」に後ずれさせた。現状の原油安と消費減退を鑑みれば、このようにマイルドなインフレ達成に時間がかかることは否定できない。

だからこそ賃上げの流れが確実になり、家計が消費しやすい環境が早く出来上がることが必要となる。それが実現すれば、日銀の見るコアだけでなく、コアコアでも2%に近づいていくだろう。物価の基調に強い影響を及ぼす点で、金融政策と賃金の動向に注目し続けなければならない。(ZUU online 編集部)

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