今年3月、電力10社が5月の電気料金を発表し、1年ぶりの一斉値上げとなることがわかった。こうした電力の値上げ傾向は、2016年以降も続くものとみられる。背景には、温暖化対策と脱原子力発電依存をめざす、政府主導の再生可能エネルギー拡大政策がある。
経済産業省案によれば、2013年度には全電源に対し11パーセント程度にとどまっていた再生可能エネルギーの比率が、2030年に21~23パーセントまで拡大・普及する見通しであるという。
ただ、高いコストを補うには再生可能エネルギー発電促進賦課金(賦課金)を電気料金に上乗せすることになり、国民への負担は増すことになる。
経済産業省の試算によると、再生可能エネルギーの拡大による標準家庭の賦課金は、2014年度の2,700円から倍増し、今年度は年5,688円に膨らむ見通しだ。
5月以降には上乗せされた料金での請求が始まる。買い取り価格が特に高い太陽光発電が急速に拡大していることもあり、今後政府の2030年へ向けた計画に沿って再生可能エネルギーが活用されていくとなると、電気料金への上乗せ額(賦課金)は増加する一方だろう。将来的には年1万円を超える可能性も出てくる。
政府の再生可能エネルギー計画
経済産業省は4月、2030年時点の望ましい電源構成比率(エネルギーミックス)として、9割程度ある従来型の火力発電(石油、天然ガス(LNG)、石炭)の比率を5割台に落とし、代わりに太陽光などの再生可能エネルギーの割合を22~24パーセントへ引き上げる案を発表した。
変動電力の比率に上限を設ける必要があるため、震災後に全基を停止させた原子力発電も再開させ全体の20~22パーセントへと戻すが、2010年度の28.6パーセントよりは割合を下げる。今後は、再生可能エネルギーを積極的に推進していく方針だ。
導入促進のための支援策がもたらした結果
再生可能エネルギー事業を普及させるため、政府は2012年、電力会社に再生可能エネルギーによる電力を固定価格で買い取るよう義務づけた。加えて、事業者利益を配慮し3年間限定の優遇措置も設けたが、これは今年6月末で期限が切れる。この固定価格買い取り制度の導入は成功し、設備的なコストも下がり始める見通しとなったため、買い取り価格は今後徐々に引き下げられていくだろう。
たとえば、出力10キロワット以上の太陽光発電設備の場合、2014年度の買い取り価格は1キロワット時当たり32円だが2015年4~6月に29円、7月からは27円と2段階で引き下げられる見込みだ。それでも、買い取り価格が高かった時期に認定を受けた太陽光が今後動き出せば、国民への負担増は止まらない。