年間1300万人以上の外国人観光客が訪れるようになったが、彼らの一番のお目当ては日本の「食」。その旨さを自国でも味わいたいと、海を渡る日本の農水産物が増えている。さらなる拡大のカギを握るのは大手物流会社のインフラ整備と技術にかかっている。文=本誌/古賀寛明
農水産物・食品輸出目指すは1兆円
農林水産省が今年2月に発表した資料によると、2014年の農林水産物・食品の輸出額は6117億円と、統計開始後、初めて6千億円を超えた。前年比で11.1%増加しており、2年連続で過去最高を記録している。国は、20年までに1兆円まで農水産物の輸出拡大を目指しており、それに向けて順調な伸びを見せている。背景にあるのは、日本の食に対する期待や憧れだ。従来からヘルシーで見た目も美しい日本食の人気は高かったが、13年に、和食が世界無形文化遺産に登録されたことも大きな後押しとなった。
さらに近年、ビザ緩和や円安の影響で外国人観光客が格段に増えたことで、訪日した外国人を中心に、日本食だけでなく、その原材料である農産物や水産物はもちろん、産地や調味料にまで興味を持つようになってきている。また、SNSでの発信やeコマースの拡充で日本の農水産物・食品を目にする機会増加が輸出に拍車を掛けている。
しかし、そうは言っても「日本で食べたあの刺身が、あのもぎたてのトウモロコシが、あのブランド牛がどうしても食べたい」といった生鮮食料品の輸出だけは、物理的な距離とインフラの問題で難しかった。唯一、香港だけが13年10月から始まったヤマト運輸のクール宅急便の利用で日本の生鮮食材を手に入れることができた。