不動産や金融資産に投資している人、相続対策を考えている人にとって、「資産管理会社」という存在を一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。資産管理会社とは、主に不動産投資や金融資産などの管理を目的とする法人をいう。「資産管理会社は所得税・相続税についての節税効果が大きい」といわれているが、どのような点で効果的なのだろうか?

法人税は所得税・相続税に比べて節税効果が高い

平成27年1月の税制改正により、相続税増税や毎年の所得税増税など、個人への課税はますます強化されていく傾向にある。今後もこの傾向は変わらないだろう。

一方で法人税は、経済界からの要望等により、交際費の損金算入枠の拡充や基本税率の引き下げなど、緩和傾向にある。こういった背景から、法人においては一定の所得額や資産額を超えると、資産管理会社の設立が節税に有効となる。

必要経費にできるものが増える

原則として、不動産オーナーや株式のデイトレーダーは、個人的な出費と事業に直接関係する出費を厳密に分けなくてはならない。仕事のためレストランを使っても、家族と一緒の場合は、家族分については経費として落とすことはできない。また、家族への給料は、専従者給与の届出等をした場合以外は認められない。

その一方、法人化した場合には、自分や家族を役員にすることで、それぞれに「役員報酬」という形で給料を出すことができる。また、会議費用や生命保険料、旅費交通費なども、一定の条件をクリアすれば、法人の経費として計上できるのだ。つまり、個人ならば家計支出でしかないものでも法人の経費にできるので、会社のオーナー個人の節約にも法人の節税にもつながるのである。

売却損を他の収入と通算できる

個人の場合、固定資産としての不動産などを売却した場合、原則として家賃収入などの不動産所得などと損益通算することはできない。不動産運用による収入は「不動産所得」、金融資産の配当による収入は「配当所得」、不動産や金融資産の売買による損益は「譲渡所得」に該当する。売却損が出たからといって、他のカテゴリの収入から差し引くことは、所得税法上できないのだ。

しかし、法人の場合は、収入の種類がいくつかに分かれたとしても、税法上の収入と経費の計算は損益計算書というひとつのカテゴリで行われる。そのため売却損が出た場合には、資産運用の収入から差し引き、結果、節税することができるのである。