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(この記事は2014年10月27日に掲載されたものです。提供: Biglife21

いよいよ税制改正により、来年1月1日以降の相続については、基礎控除額が現在より4割もカットされます。

「東京23区の申告割合は現行の20%程度から30%~40%程度にまで上昇する」との試算もあり、相続税対策に対する関心が急激に高まってきています。

しかし、私に寄せられる相談の多くは圧倒的に親族内のトラブルに関するものです。相続争いというと、ドラマでよく目にする、「資産家の家族が多額の遺産を巡り骨肉の争いを繰り広げる」イメージが強いと思います。しかし、裁判所の調停に持ち込まれた争いのうち、遺産額1億円超の事案は全体の11%にすぎません。

一方、5,000万以下の事案は全体の74%で、1,000万円以下の事案でも全体の31%を占めています。(平成22年司法統計より)文字通り、相続については「金持ち喧嘩せず」といった状況なのです。

ここで言えることは、「うちは財産が少ないから揉めるはずがない」というのはまったくの思い込みであって、相続人が不満に感じる分割であれば、「資産の多寡にかかわらず相続争いは発生する」ということです。そして、その原因のほとんどは財産をあげる側である被相続人の認識不足や準備不足によるものです。

相続財産は、愛する家族のために残すものですので、一家断絶などしないよう、しっかりと準備しておく必要があると思います。


最初に確認すべきこと

まず第一に、自分の全財産を洗い出して記録しておくことです。そして、基礎控除額を超えることが確実で、不動産や自社株もある場合は、費用は多少かかりますが、税理士に依頼して相続税の試算をしてもらうことをお勧めします。というのは、宅地等の不動産や自社株は、相続税評価額の計算が複雑で、評価額も高額になることも多く、ここで評価を誤ると相続対策にも致命的な狂いが生じてしまうからです。

なお、試算の結果、税額が発生した場合は、相続税の圧縮のために、次の点についても必ずアドバイスを求めるようにしてください。

「小規模宅地等の評価の特例」の適用があるか

適用がない場合は、適用を受けるためにはどのようにしたらよいか

生前贈与により相続税の課税財産額を減らす必要があるか

「評価が高い財産」から「評価が低い財産」へ組み替える必用があるか

一次相続と二次相続トータルで納税額を低くするためにはどのように財産を配分したらいいか

自社株の評価を下げるためにはどのような方法があるか

自社株の評価額が高額の場合、納税猶予を適用できるか

なお、全財産を記録したリストは、万が一の際にご家族の方がわかる場所に保管しておくことが大切です。「親が生前に預金が5,000万円あると言っていたけど、通帳もカードもないため、どの銀行に預けたかわからない」等という相談が後を絶ちません。個人情報保護法の関係もあり、正確な口座情報が分らない場合、口座を探し出すことは本当に大変です。

また、銀行借入等の債務がある場合は、元気なうちに家族と「万一の時の対応」について打ち合わせしておいたほうがいいでしょう。相続開始を知った日から3ヵ月を過ぎると、マイナスの財産はプラスの財産と一緒に相続人に無条件に引き継がれてしまいます。相続開始から3ヵ月以内であれば、家庭裁判所に対し、債務のうち相続財産を超える部分の返済義務を引き継がない「限定承認」や、プラスの財産も含めたすべての財産の受取を拒否する「相続放棄」の申述をすることができます。

また、被相続人が経営している会社の借金について連帯保証人になっている場合にも同様の対応が必要になりますので、会社の財政状態等についても確認しておいたほうがいいでしょう。