(この記事は2015年6月3日に掲載されたものです。提供: Leeways Online )
2015年5月15日時点でJ-REITの時価総額は10.7兆円となり、2014年5月時点の8.2兆円と比較して30%も増加し、急成長を続けている。2015年2月時点では10.8兆円を超えたが、ここ数カ月はその成長の勢いは止まり、一進一退を繰り返している。そこで今回は、好調時の今だからこそチェックしたいREITの3大リスク要因について、見てみよう。
金利-指標は国債10年もの最長期利回り
まず1つ目は、REITの価格に影響を与える金利の上昇だ。金利の変動指標として、国債10年物最長期利回りが挙げられる。REITの分配金利回りの目安としては、この国債10年物最長期利回りにイールドスプレッドを3%加算した程度が適正と言われている。なぜイールドスプレッドが必要かと言うと、借入金を併用して信用取引でREITを購入した場合、レバレッジ効果が働くからだ。
例えば、金利を0.5%とし、分配金利回りを3.5%とする。100万円の物件を、50万円を借入金で調達し、残りの50万円を自己資金で調達する。この時、返済利子は50万円×0.5%=2,500円が発生する。100万円の物件の配当は分配利益率が3.5%のため35,000円となる。そのため配当から返済利子を引いた手取りの金額は35,000円―2,500円=32,500円となる。つまり自己資金50万円で32,500円の運用が可能となり、自己資金に対する利回りとしては6.5%となるのだ。このため金利と分配金利回りの間には3%程度のギャップが必要となる。
一方で、REITの価格=分配金÷分配金利回りという関係が成り立つ。分配金は賃料が上昇しないと上がらない。そのため分配金が一定のまま分配金利回りが上昇するとREITの価格が下落する関係にある。金利が上昇すればイールドギャップに引きずられ分配金利回りも上昇する。そのためREITの価格も下がってしまうのだ。
国債10年物最長期利回りは2015年1月の0.275%を最低値として2015年3月には0.4%と上昇している。時価総額の動きは1ヶ月ほどタイムラグがあり、2015年2月の10.8兆円をピークに2015年3月には10.7兆円に下落している。
継続賃料の上昇や下落
2つ目は、賃料が上昇しない若しくは下落するリスクだ。J-REITの資産総額の内、約6割弱をオフィスが占め、最も大きなアセットタイプを構成している。
金利が上昇したとしても、賃料が上昇して収入が上がれば、収益価格は大きくなる。そのため今後のREITの成長を考えるとオフィス賃料の上昇が不可欠だ。賃料が上がると言っても、新たにテナントが入居する際の新規賃料が上がってもすぐに影響は出ない。REITは収益物件であり既にテナントが入居しているため、既存テナントに対して賃上げ交渉を行い、継続賃料を上昇させないと収入は上がらないのだ。一般的に空室率は4%台に入らないと賃上げ交渉は難しいとされている。
賃貸仲介大手の三鬼商事株式会社によれは、2015年4月の東京ビジネス地区の空室率は5.34%で、新築ビルの空室率は33.21%だ。そのため、仮にビルオーナーがテナントに家賃交渉をした場合、テナントは新築ビルへ移転してしまう可能性もあるのだ。賃料の上昇に未だ力強さが見られないのは、空室率がまだ高いためだ。
観光需要の将来性
3つ目のリスクとしては、外国人観光需要の将来性だ。昨年1年間の用途別不動産額の伸び率が最も大きかったものはホテルであり、30%超だった。これは主に好調な外国人観光客需要に支えらたこともあり、投資家の支持を集めた。今のところ順調な伸びを示しているが、観光需要は国際情勢や為替市場にもすぐ影響を受けるため、いつ急激な下落が始まるか分からない。ホテルREITの価額は全体の4%程度のため大きなインパクトは考えられないが、余暇需要に左右されやすいアセットタイプなだけに予断を許さない。
一番重要なのは金利
前述のように、3大リスク要因として金利と賃料、そして外国人観光需要を挙げてきた。この中でも一番影響を与えるのは金利であろう。今後の国債10年物最長期利回りの動きについては注意が必要と言えそうだ。
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