6月29日、欧米系メディアは一斉にカリブ海の米自治領プエルトリコの破綻を報じた。市場のほとんどがギリシャ債務問題に目を奪われていたタイミングだった。

プエルトリコ政府の新たな顧問に任命された元IMFの筆頭副専務理事であるアン・クーガー氏によって開示された。かねてから債務超過状態にあったプエルトリコは近く資金が枯渇することから、連邦破産法に基づき債務再編の実施を認めるよう米国政府に要請したことから明らかになった。


失業率15%?生活貧困層で構成されるプエルトリコ

プエルトリコはカリブ海に浮かぶ小さな島であり、人口は350万人。面積も日本の県と同規模程度だ。この国の1人あたりの所得は年間6000ドル(80万円相当)程度であり、島民の実に3分の2近くが貧困層で構成されており、7割の世帯は食料券を支給されている生活保護世帯だ。

大きな産業を持たないプエルトリコの失業率は15%を超える状況であり、生活保護に依存しないほとんどの家庭の多くは米国本土への出稼ぎに依存しており、こうした出稼ぎの収入でなんとか暮らしている。主たる産業を持たないプエルトリコでは米国から進出した企業への依存度も高く、安価な労働力を大企業に搾取される関係が今も継続している。


変わらない100年以上前の枠組み

1800年代には独立闘争が盛んだったプエルトリコだが、1900年から115年近く米国の直接統治下にあり現在に至る。米国本土に行くプエルトリコ人がタクシードライバーなどをしていることから、国としての名称は有名な存在だが、こうした従属関係が米国との間ででき上がっている。

実は、プエルトリコ人は合衆国市民であることが認められており、合衆国領内を自由に旅行することが認められている。ただし独自の憲法を有しており、国内問題については処理権限が与えられている。また米国の大統領選挙への投票権は一切与えられていない。

このように権利関係は複雑で、100年以上も前に作られた枠組みで放置され続けているのが実態だ。


デフォルトによる負債総額は730億ドル

今回のデフォルトによる負債総額は730億ドルであり、同国は米国政府に対して債務の軽減を求めている。ただ、プエルトリコは米国における地方自治体ではないため、米国の破産法にも度つく債務再編を実施する資格がないという難しい立場にある。したがってこの破産法に従って債務再編ができるかどうかが再生に向けての大きな鍵になると見られている。

プエルトリコ債は2年以上前から破綻の噂が絶えなかったことから、すでに格付け会社から投機的水準とされているが、高い利回りを求める米国の投資信託会社などが投資している状況にある。ただ、投資規模は決して大きなものではなく、今回のデフォルトが直接金融市場に与える影響は限定的との見方が強い。

米国ではミシガン州デトロイト市が2013年に財政破綻した例があるが、いずれにしても債務再編ができないとなると一定の混乱が生じる可能性がある。

毎月発表される米国の雇用統計では失業率も低水準で推移しているが、実は足下の直接統治国がこのような状態で長く放置されていることが、奇しくもギリシャのデフォルト危機と同じタイミングに露になり、米国の隠された一面が今回突然露呈することとなった。

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