電力株の「お株」を奪う?

さらに株主優待の創設があれば個人投資家から一層支持されるに違いない。例えば、宿泊施設割引や預金金利優遇などの「懐をいためない」優待も可能な業種だけに、個人投資家の間でも期待する声が広がっている。

かつて安定配当銘柄の代表といえば電力株だったが、3.11の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の災害と電力自由化の波で、電力各社は「絶対的信頼」を寄せられる投資先としての地位が揺らいでしまった。新たに株式市場に登場する郵政グループ3社は電力各社の「安定配当銘柄」という「お株」を奪いかねないが、上場する狙いに「震災復興財源の確保」があるのは何という皮肉だろうか。


株価維持材料「国からの追い風」に期待

本業における国内成長の余地が少ない3社だが、株価の維持材料はほかにもある。今年4-6月期GDPの二次速報値は前期比0.3%減と元気がないが、逆に株安と並び日本銀行に対する金融緩和圧力を高める材料になる。株価を政権維持のバロメーターとする安倍政権としては郵政3社上場を成功させるためにも、株式市況の低迷を放置することはない。9月24日安倍首相は「新3本の矢」を発表。名目GDP600兆円と「一億総活躍社会」を目標に掲げて社会保障改革・子育て支援・力強い経済の実現に取り組むことを約束した。

懸念材料は株式市況の影響と規制緩和の動きに対する反発だ。世界的な株安に反応した8月後半以降の東証平均株価の値下がりは、株式投資未経験の人から見れば「やはり株はリスクが恐い」と再認識する機会になってしまった。せっかくの投資熱が冷めてしまった人も少なからずいるだろう。また規制緩和は「民業圧迫」だと慎重な対応を求める声が大きい。自民党「郵政事業に関する特命委員会」が6月にまとめたゆうちょ銀行の預金預け入れ限度額引き上げやかんぽ生命保険の加入限度額引き上げの提言は、いまだに実現のめどが立っていない。

それでも民営化・株式公開の大海原へ漕ぎ出した船は止まらない。3社がどこに向かうのか。それは「元国営」の先輩企業たちが教えてくれる。JR各社に不動産事業、JTに食品事業、NTTに移動体通信事業があったように、郵政3社もまた次なる地平を見つけることだろう。その過程で国からの「追い風」は必ずある。やはり郵政3社も「政策に売りなし」といえるのではないだろうか。 (ZUU online 編集部)

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