日経とFT紙の買収で争ったアクセル・シュプリンガー社

ベルリンに本社を置くアクセル・シュプリンガー社は大衆紙「ビルト」や高級紙「ヴェルト」を発行する、複合メディア大手。ドイツの新聞市場では同社が出す新聞が23%を占め、国内の新聞メディアとしては最大手だ。

同社は2002年就任のマティアス・デプフナーCEO(写真)の下、デジタル化を進めているが、その収益の3分の1は紙媒体の新聞事業から得ている。ビルトおよびヴェルトの電子版購読者が思うように伸びていないのが悩みの1つで、今回の買収でデジタル化路線を一層強化できる。

デプフナー氏は大手の英語メディアの取得にも熱心で、今年7月末、英経済紙フィナンシャル・タイムズの買収交渉で日本経済新聞社に敗退したばかり。米政治情報サイト「ポリティコ」の株も保有しているが、メジャーで影響力の強い英語媒体の取得を狙ってきた。従業員二百三十余人のビジネスインサイダーは会社の規模としては小さいが、若者に多くアピールしていること、英語メディアであることが大きな魅力となったようだ。


NYタイムズとともにブレンドルに出資、ミレニアル世代にアピール

昨秋、アクセル・シュプリンガー社と米ニューヨーク・タイムズ紙は、マイクロペイメントで記事を買うオランダのサービス「ブレンドル」に300万ユーロ(約4億円)の投資をすると発表した。

ブレンドルは既存のニュースメディアが配信するニュース記事を1本ごとに廉価で買える仕組みだ。オランダ語のサービスだが、普段は新聞を手に取らない若者を中心に利用者が増えている。ニューヨーク・タイムズもアクセル・シュプリンガーもリーチするのが難しい、ミレニアル世代の若者にアピールするサービスである。9月にはドイツ語のサービスも開始した。

大手メディアのデジタル戦略には、自社のサービスをデジタル化する流れとともに、新興ネットメディアを買収して傘下に入れたり、あるいは投資をして成長を促すというもう1つの流れが出ている。(小林恭子、在英ジャーナリスト、メディア・アナリスト)

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