米雇用統計
(写真=PIXTA)


結果の概要:雇用増加ペースは市場予想を大幅に下回る鈍化

10月2日、米国労働省(BLS)は9月の雇用統計を公表した。9月の非農業部門雇用者数は前月対比で+14.2万人の増加(*1)(前月改定値:+13.6万人)となり、前月が下方修正されたことから、前月は上回ったものの、市場予想の+20.1万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に下回った(後掲図表2参照)。

失業率は5.1%(前月:5.1%、市場予想:5.1%)と、こちらは前月、市場予想に一致した(後掲図表5参照)。一方、労働参加率(*2)は62.4%(前月:62.6%)と前月から更に低下し、77年9月以来の水準となった(後掲図表6参照)。


結果の評価:雇用者数、労働参加率、賃金全てで失望的な内容

9月の雇用増加は、市場予想を大幅に下回る鈍化を示した。8月の数値はこれまで上方修正される傾向が強かったが、今回は下方修正されており、これで雇用増加ペースは2ヵ月連続で10万人台前半に留まった。この結果、9月までの15年の平均増加ペースは19.8万人となり、昨年の26万人を大幅に下回ったほか、20万人の大台も下回った。

もっとも、雇用統計以外をみると、新規失業保険申請件数が9月に低下したことやADP社の雇用者推計が2ヵ月連続で改善するなど、雇用統計と不整合な動きとなっている。このため、今月の雇用統計だけで判断することは早計であるものの、雇用者の増加ペースが大幅に鈍化したとすれば、今後の米経済を考える上で憂慮される。

一方、失業率は依然低下基調が持続しており、FRBは労働市場が完全雇用に近づいているとの判断を示している。しかしながら、労働参加率は前月から一段と低下しており、改善どころかさらに悪化している。とくに、25-54歳の労働参加率は80.6%(前月:80.7%)と15年5月以降は低下基調が持続しており、労働参加率の低下には高齢化以外の循環的な要因も影響しているとみられる。このため、失業率は労働市場の実体を過小評価している可能性が高い。

さらに、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は前年同月比では+2.2%(前月:+2.2%)と前月と同水準になったほか、前月比で横這いとなるなど、賃金上昇に加速がみられないことも労働市場に依然としてゆるみが存在することを示している(図表1)。

9 月米雇用統計 図1

このようにみてくると、9月の雇用統計は労働市場の回復ペースが全般的に鈍化していることを示している可能性もあり、FRBによる完全雇用に近づいているとの判断は揺らいでいるとみられる。もっとも、前述の通り、他の労働関連指標とやや不整合な動きもみられることから、今後の金融政策を判断する上では、12月のFOMCまでに発表される来月と再来月の雇用統計が非常に重要であり、注目される。