現預金がない人は「生命保険」向き

では、どのようなケースの場合、相続税対策に「生命保険」を使うことが向いているのだろうか。

相続税の納税は原則、現金で行わなければいけない。持ち家しか不動産がない場合などは物納も可能だが、適用には要件があり現実的には難しい。また、遺産の分割協議において、持ち家相続の代償分割のため別の相続人に渡す資金が必要となる場合もあり、想定外に手元資金を減らすケースもあるようだ。

納税や代償分割資金の準備方法として、生前に現金を贈与しておく方法もあるが、現預金がなければ難しい。つまり、現預金をあまり持っていない人は「生命保険」を使った対策が向いているといえる。

<メリット>
被相続人を「契約者」に、相続人を「保険金受取人」にした生命保険は相続税の対象となる。ただし、この形態の生命保険加入のメリットとして、「500万円×法定相続人数」という非課税枠があることが挙げられる。現金で残すよりも遺産が圧縮されるのだ。

死亡保険金は “みなし相続財産”として扱われる。“みなし財産”は相続税の計算に含められるが、遺産分割時の財産に含める必要はないため、確実に保険金受取人である被相続人に現金がわたることになる。このことによるメリットも実は大きい。被相続人が現預金のまま残している場合は、遺産分割協議が整うまでは相続人であっても手をつけることができないが、保険金なら受け取ることができるのだ。

<デメリット>
相続人の健康状態によっては、そもそも生命保険に入れない可能性がある。また、保険証券を親が管理していて子がその場所を知らず、保険金請求ができないまま請求の時効をむかえてしまうことも考えられる。

●金融資産が多い人は「不動産」向き

次に、「不動産」が向いているのはどんな人だろうか。

持ち家以外に複数の不動産を所有する場合、所有不動産について対策を施すことが大切だ。たとえば▽相続しやすいように測量や分筆、売り難い土地の処分などを行う▽賃貸用住宅や貸し駐車場を作るなどして土地の用途を変え評価額を下げる――などを行うことで円滑な相続や節税ができる。

一方で、金融資産を億単位で所有する場合、不動産を新たに購入して相続税対策を施すことができる。たとえば、現預金のままではなく賃貸用の不動産を新たに購入することで相続財産の評価額を圧縮する、子と同居する家を建築して、評価額が最大80%減になる小規模宅地の特例を活用するなどがこれにあたる。

<メリット>
賃貸用住宅を建てると、土地の評価額を更地に比べて3割程度引き下げることができ、大きな節税につながる。また、賃貸用住宅と信託を組み合わせることで、財産管理能力が低い相続人(障がい者)などに財産を上手く引き継がせることも可能だ。

<デメリット>
不動産は売却し難いため、現金が必要なときに調達できないリスクがある。また、賃貸用住宅を一度建てると相続人が否応なくその管理を引き継ぐことになる。節税と引き替えに相続人の手間やストレスを増大させる可能性もある。建築にあたり慎重さが求められる。

ただしいずれも相続を一方的な判断だけで進めることは危険だ。資産内容や相続人同士の関係性などを考え、家族と話し合った上で対策を進めることが重要だ。 (ZUU online 編集部)

【関連記事】
・【祝】大村氏、ノーベル医学・生理学賞受賞!注目の関連銘柄6選
・11月4日上場へ!日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の上場を徹底解剖
・日本人大富豪ランキング トップ20の顔ぶれはこれだ!
・日経新聞/日経MJから、四季報まで全てネットで閲覧可?その意外な方法とは
・証券業界に革命?「独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)」に注目が集まる理由